看護力検定レジェンド認定者インタビュー|学ぶことが患者さんの個別性に合わせた看護につながる|安田明日香さん

超高齢化が進むこの時代において、求められる看護のジェネラルな力を確認し、身につけていくことを目的としたオンライン試験として2018年にはじまった『看護力検定』は、気軽に看護の力試しと知識の確認ができ、これまでに実施した3回で、のべ2万1091人の方々に受検いただきました。今回は、その受検者のなかでも3人しかいない「レジェンド」に認定されている矢木脳神経外科病院の安田明日香さんに、学生時代のことから日ごろの学習方法や実務で心掛けていることまで、どのようにして学びを続けているのかについてお話を伺いました。

母に感じた“看護師”に憧れて

―――では、まず最初に安田さんについて教えていただきたいのですが、看護師になられて何年目でしょうか。

5年目になります。1年目の半年くらい経ったころに今の病院へ転職してきました。最初に就職した病院でSCU(ストロークケアユニット)に配属され、転職してまたSCUの配属になりました。

―――普段の仕事内容を教えてください。

SCUなので脳梗塞、脳出血、くも膜下出血で超急性期の患者さんがいらっしゃいます。点滴治療や外科的治療を受けておられるなかで治療のサポート、そしておよそ3時間ごとに神経症状、バイタルサインを測定して密な観察を行います。また、リハビリや離床、ADL拡大に向けて患者さんのできることを増やしていくサポートも必要です。また超急性期とはいえ、入退院支援を念頭に置いておかなければならないので、患者さんが入院前はどのような生活をされていたのか、また退院時はどこに帰りたいのか、どこまでできるようになりたいのかという意思を確認して、すり合わせて、医師やリハビリスタッフ、MSWなど他職種と連携してサポートする日々を過ごしています。

―――仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか。

まったく意識がなかったり、話せなかった患者さんがSCUにいる2週間で劇的に回復するということは少ないのですが、リハビリをしている患者さんとたまたま廊下ですれ違ったり、退院される際に「元気になったよ」と声を掛けてくださったり、外来受診時で回復されている姿を見かけるとすごくうれしいですね。

―――看護師を目指そうと思われたきっかけは何かあるのですか。

母も看護師なんです。私が生まれて辞めたそうなので働いているところは見たことがありませんが、祖父の在宅看護や道で倒れていた人に応急処置をしている姿を見て、「あ、看護師なんだな」と感じて憧れを持ったのがきっかけです。また、中学生のときに職業体験で介護施設に行って、医療や福祉に関わる職業に興味を持ちました。

―――新卒からSCUとのことですが、脳神経外科にはもともと関心があったのでしょうか。

祖父が脳梗塞で倒れたこともあって身近でした。もともと集中治療に興味があって学びたいと思っていたら、最初に配属されたのがSCUだったんです。最初に就職した病院は半年で辞めましたが、その半年間で学んだことを生かしたかったことと、まだ脳神経外科のことを学び足りないと思って矢木脳神経外科病院に就職しました。

“わからないこと”を起点にタテヨコに学んでいく

―――日ごろの学習方法について伺いたいのですが、まずは看護学生時代にどのように勉強されていましたか。

看護専門学校のときは『レビューブック』をみんな使っていましたが、自分で資料などを追加してマイレビューブックを作りましょうと本の中にも書かれてあったので、インデックスを付けたり、新しいページを付けて勉強していました。もうパンパンになるくらいページを追加で入れていましたが、そのように調べることが楽しくて、それがいまに至るまでずっと続いているような感じです。いまでも雑誌やインターネットで調べたいことをピックアップして、それをまとめて自分で資料を作ったり、脳神経疾患だけで資料を作ってファイルしています。

―――看護学生時代からの蓄積がいまに続いているのですね。臨床で働くなかでは学習方法も違ってくると思うのですが、どういったことを意識されているでしょうか。

学生のときは広く浅く全科の知識が求められますが、臨床では、例えば患者さんの治療方法や薬のことでわからないことが多くなります。先輩から「これはわかる?」って投げかけられて、わからなければその場で調べたり、宿題にさせてもらって、学生時代と同じように自分でファイルを作っていました。また、就職してからは雑誌『ブレインナーシング』を2年間定期購読して、読みながらわからないことを調べたりマーカーを引いたりしていました。毎月届くので自動的に勉強するようにしていましたね。

―――メディカ出版の雑誌ですね。読み込んでいただいてありがとうございます! ファイルというのは、学生時代のようにいまでも自分のノートを作ったりされているということでしょうか。

ここに持ってきました。すべて自分で作った資料なのですが、インターネットで調べることもありますし、本や雑誌から持ってきたりして、科によって分けています。いまもよく使っているのは脳神経外科と人工呼吸器系、そして循環器系、あと摂食嚥下障害や栄養関連のことを調べてまとめたファイルがあって、4つくらいですね。調べていくうちにいっぱいになってきたので分けようかなということで、いまの形になりました。

自分で調べたことをテーマにわけてファイルしています。

―――どういうきっかけから調べるのですか。

臨床で使った薬剤がわからなければ、それはそれで調べますが、例えば似たような薬があったとしたら、なぜそちらではなくこちらが使われているのか、といったことを比べていくうちに薬について学ぶことができます。また脳梗塞といっても部位によって違うので、一つ調べはじめたのがきっかけで、続けてさまざまな部位を調べるようになったりもしました。

―――なるほど。はじめに関心をもったところから拡がっていくのですね。いま5年目ということですが、いまもその調べる学習法は継続されているのですか。

1年目のときは毎日やっていましたが、もうさすがに毎日ではありません。ただ、わからないことがあれば同じように調べています。
また、やはり忘れていくので、「なんか調べた気がするけどどこにあったかなあ」ってファイルを見直したりすることはあります。

―――新人のころからそうして学習をしてこられて、それが臨床での自信につながると思うのですが、実際に「かなり自信がついてきた」と感じられたのはいつごろでしょうか。

3年目や4年目になるとある程度の知識はついたと思いました。それでも自信のないところはあって「次はこれがわからない」「次はこれを学びたい」という思いは尽きることがないのかなと思います。

―――いまは新人さんや後輩に指導もされていると思いますが、どのように指導されていますか。

新人さんにとっては私だけが課題を出すわけではないんですよね。私もいろんな先輩から課題を出されてすごくたいへんでした。なので基本的なことであれば私が資料を用意して、「こんな感じだけどもっと深くこういうところを調べてきてね」と言って渡したりするようにしています。一緒に勉強会をしたりもしました。

―――その資料というのは安田さんが自分でまとめてこられたファイルを使うのですか。

はい、そうですね。新人は勉強ファイルを作ることになっていましたが、内容の充実度は人それぞれでした。私が担当したプリセプティも勉強するのが好きで自分でいろいろなファイルを作って使っていました。勉強のスタイルが私と似ていたのか指導しやすかったですね。

『看護力検定』で知った“新しいワード”からまた次の学びへ

―――そうした学びがあったから、『看護力検定』でとても良い成績をとっておられるのですね。『看護力検定』を受けたことは学習に役立ったでしょうか。

まず事例問題などは、国試の問題に似ていると思ったのですが、それでも「何だ、このワードは?」という聞いたことのない言葉もあって、すべての問題に自信を持って答えられたわけではありませんでした。リビングウィルとか、そうした最近言われているテーマの問題だったかなと思います。こうした新しい言葉はいまの看護学生さんたちのほうが知っているのかもしれませんね。

―――安田さんは最高ランクのダイヤモンドの成績でしたが、結果を見てどう思われましたか。
※『看護力検定』は受検成績によりダイヤモンド、ゴールド、シルバー、ブロンズ認定されます。さらに受け続けると積み重なる成績によって、レジェンド、スターのステージが認定されます。

そんなに点数が取れていると思っていなかったので、喜びと「私がダイヤモンドなんてもらっていいのかな」という気持ちでした。

―――ダイヤモンドは受検者の1%だけですからね。院内で表彰されたそうですね。

いま私の名札には花が付いているのですが、院内で成績優秀だった4人が、病院から、この花のピンバッジと表彰状、そしてクオカードをいただきました。

ピンバッジは同院看護部が使用しているマーガレットのロゴマークです。「信頼」「真実の愛」の花言葉の通り、看護師と患者の信頼、医療スタッフとの信頼、地域・家族との信頼を築き、愛情あふれる看護ができるようにとの願いが込められているそうです。

―――そうなんですね。それは私たちもうれしいです。一緒に受検されたみなさんは何かおっしゃっていましたか。

みんな「難しい、難しい」って言ってました。聞いたことのないワードも出てくるし、忘れているところもあると。でも、症例のところはやりやすかったみたいです。

―――結果発表後はどのように活用されましたか。

答え合わせをして間違えた問題を確認しました。解説については、もう少し詳しく知りたいというのもありましたね。

学ぶことで患者さんの全体像が見えてくる

―――新人のころは雑誌を定期購読されていたということでしたが、いまでも日ごろから読まれている本や雑誌はありますか。

いまは、定期購読はしていなくて、気になるタイトルがあればバックナンバーで買ったり、クリティカルケア看護の『ICNR』を買ったりします。また、興味のある領域や調べたいことがあれば書籍も読みます。メディカ出版さんの血ガスや急性期の輸液管理といった書籍も購入しました。

―――図書館で借りて読むとかではなく購入されるのですね。

自分で買います。マーカーを引いたりしたいので。例えば、これもメディカ出版さんの『ハートナーシング』ですが、雑誌に自分にとって必要なことを貼り付けたりしています。

雑誌『ハートナーシング』のページ内に自分で調べた薬の情報を貼り付けてまとめています。(右側)

―――雑誌そのものに切り貼りしてカスタマイズしているのですね。

そうですね。たとえば薬は薬でまとめておきたいので。

―――そんなに活用していただいていてうれしいです。ところで、いまは新型コロナウイルスの影響でリアルで開催されるセミナーにはなかなか行けないと思いますが、以前はそうしたセミナーにも参加されていましたか。

自分が興味のある循環器の薬のセミナーや人工呼吸器のセミナーに行っていました。また、日本看護協会の研修は病院から費用を出していただけて、仕事として受講できるので参加していました。

―――最近では看護師さん自身がYouTubeなどで学習をテーマに発信されているものも増えてきましたが、ご覧になったことはありますか。

あります。学習というよりも、こういうところのつらさを解消しましょうといったものやメンタルヘルスについて、看護師としての働きかたについての動画なども観たりします。あとは看護師あるあるを取り上げた動画とか、けっこうストレス発散になるんです。みんなも同じなんだなと。

―――なるほど、そうした動画がリラックスになるのですね。ところで、看護師としてすごく忙しくされているなかで学び続けることについて、どのように考えておられるでしょうか。

私は脳神経外科のなかでもSCUに勤めていて、単科ではありますが患者さんのほとんどの方がご高齢で、そのため既往歴はさまざまです。例えば、多数の既往歴のある患者さんがいらっしゃった場合、その既往歴のうち現病歴に関するものがあれば再発予防指導につなげたり、既往によってはまた別の看護が必要になるなど、脳だけを見ていては患者さんの全体像は見えてこないので、学ぶということは、一人ひとりの患者さんの個別性に合わせた看護につながるものだと思います。
また、わからないことがあっても、わからないまま仕事をすることはできるとは思うのですが、それでは自分自身が不安にもなりますし、そのままにしている自分が許せないというか。私の場合は、それが学び続ける原動力になっているのかなと思います。

―――これから先、ご自身が目指されていることはあるでしょうか。

特に「こうなりたい」というのはないのですが、新卒のころは看護学校の先生になりたかったです。実習の受け入れで実習生さんと臨床でかかわらせてもらい、一緒に学ぶうちに「わからなかったところがわかった!」と言ってもらえるのがすごくうれしかったので、教員や指導者など教えることにはすごく興味があります。また、特定行為研修や認定看護師など専門性の高い分野にも関心があります。

―――「学ぶことが患者さんの個別性に合わせた看護につながる」という言葉がとても印象に残りました。今回はすばらしいお話を聞かせていただきありがとうございました。