アナタの知らない依存症治療の世界~依存症治療のハマったさんにきいてみた!|#020|病を抱えて生きる人の伴走者として

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1 若き依存症患者さんたち

私は精神科の開放病棟に勤務しています。社会に近いこの病棟では、比較的年齢の若い依存症の患者さんとかかわることが多いです。
アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存、インターネット・ゲーム依存、自傷や摂食障害も依存症の観点からとらえることもあり、これらの患者さんも含めるとたくさんの患者さんと出会います。
きっと世の中で若い依存症患者さんも増えているのでしょう。

自分のことをなかなか語りたがらない若い依存症の患者さんとかかわっていると、生きづらさを抱えながら、なんとかこの社会のなかで生き抜こうとしている姿が見えてきます。
背景はさまざまです。
発達障害がある人、家庭不和、失敗、挫折、などなど。
最近耳にすることが多くなった発達障害では、二次障害の一つとして依存症が挙げられています1)。とくに当院に入院してくるインターネット・ゲーム依存症の患者さんはほぼ100%発達障害を有しています。
家庭不和では、家庭内での役割の曖昧さ、虐待や不適切な養育環境、貧困など。
いじめ、不登校、進学の失敗は大きな挫折体験となり得ます。
そのほかにはトラウマ体験などもあります。
これらに立ち向かい、なんとか自分を保つために限界以上にがんばって、何かに救いを求め、やっと見つけた救いの対象が依存症につながったのだと、そう感じます。

依存症のとらえ方の一つに、「人に癒やされず生きにくさを抱えた人の孤独な自己治療」2)という視点があります。依存症になる原因についてはさまざまな説があるようですが、私はこの説がいちばんしっくりきてます。
飲んだとか飲まないとか、使ったとか使わなかったとか、してないとかしちゃったとか、表面に現れているその症状は本人のなかのほんの一部で、その奥には抱えきれないくらいの生きづらさや、葛藤や、行き詰まりがあるようです。
これらが限界を超えたとき、普段より強力な発散方法が必要となり依存対象に頼ってしまうのではないかと考えています。

患者さんは「自分のことが嫌いです」と話します。
自己評価が低く、他人を信じられず、本音を言えず、寂しい。
こんな思いを抱いているから、自分を大切にできないような行動をとるのかな、と思います。

若い依存症の人を見ていると、自分の状況を誰のせいにもせず、誰にも助けを求めず、今日一日を生き抜くために孤独な戦いを続けているようにも見えます。

2 できることは何か?

ずっと抱いていた生きづらさや重なる失敗・挫折体験、そのうえ入院することにまでなり、自分に自信を失っている患者さんもいます。
「どうせムリだから」と言われることもあります。

生活に密着している私たち看護師は、回復を目指し、治療をすると決めたその決断を支え、自信を回復できるように生活のなかでかかわっていくことが必要であると考えています。
できたことは賞賛し、できなカッターことがあってもありのままの姿を受け止めて、原因と今後の対策をともに考え、回復へのステップをいっしょに踏んでいくことで、今の自分自身を認めること、自信を回復することにつなげたいです。

「やめる気ないから」とか「病気じゃないから」などと言って、一見、治療に協力的でないような態度を見せる人もいます。
しかし、何度か会話を重ねよくよく話を聞いていると、ふっと表情が曇ったり、「このままじゃいけないとは思うんだけど……」と言ったりします。
本人も心の奥では不安を感じているのです。それをなかなか周りの人に言えないようなのです。

自分の気持ちも十分に理解できず、言葉で伝えるのが苦手な若い依存症の患者さんの、この貴重な瞬間を逃さず、思いを聞いて治療につなげていくことも、私たちができることの一つかなと思っています。
発達障害の治療の目標は、その特性自体をなくすことではなく、本人のストレスの少ない環境をつくり、周囲に協力を求めることができるようになり、社会に適応して生きやくすることです1)。患者さん本人を理解し、生きづらさを減らすことは、二次障害である依存症の回復にもつながると思います。

自分を客観的に振り返りながら、疾患を理解し、受容し、自分自身で症状を管理する力を獲得していけるようにも介入していきます。
なかなか助けを求められない患者さんには、誰かに助けを求める方法を考えていきます。
「症状が出るときはどんなときか」「再発を避けるにはどうするか」「再発したらどうするか」などなど、その人に適した方法を具体的に考えます。
この過程は生活習慣病などの慢性疾患を持つ人へのケアと共通する部分があると思います。

私の周りにいる支援者たちは、ときに悪態をつかれても、約束を守れなくても、患者さんを見捨てず、諦めず、「いつでも側にいます」という姿勢を崩しません。
きっと、症状は症状としてとらえ、治療とともに「依存症」という切り口からその人を理解しようとして、生活や人生にかかわっているのだと思います。
本人が抱えている生きづらさや葛藤にも目を向け、いっしょに解決策を考えているのです。
辛さゆえの病気でもあり、その症状で本人が苦しんでいることを知っているから、姿勢を変えずに治療や支援を続けられるのかなと思います。
病を抱えて生きる人の伴走者として、支援を続けているのです。

順調にはいかないことが多いです。何度も再発し入退院を繰り返し、また治療・ケアを提供します。
うまく行っていないように感じて、落ち込むこともあります。
それでも、一進一退を繰り返しながら当初は治療が必要だという自覚もなかった患者さんが、長い経過を経て、わずかでも言動が変化してくるのを見ると、嬉しくなります。
待ってよかったと思います。

3 これから私は……

最近、読んだ依存症の方々を描いた小説のなかで、「人を依存症にするのは快楽じゃない。心身の痛みや、それぞれが感じる生きづらさが原因で依存症になるの。依存症の根源にあるのは寂しさなんじゃないかと思う」「本当に必要なのは孤独にならない居場所です。ここだけは安心できる場所だって思ってほしい」3)というセリフがありました。
私が漠然と考えていた依存症の概念の核心をついているようで、ドキンとしました。

依存症の回復に大切なことは「信頼できる仲間」と「安心できる居場所」2)だといわれています。

表面の症状に捕らわれず、ひとりの人間として、その背景にある生きにくさや安心感・安全感の欠如を理解したかかわりが必要です2)

私は孤独な戦いを続けてきた患者さんに向き合いながら、信頼できる仲間の一人、安心できる環境の一つでありたいです。
最近、「この人を依存症に向かわせたのは何か?」と考えながら患者さんとかかわっています。

生きづらさが新たな生きづらさを産まないように、これからも支援を続けたいと思っています。

参考文献
1)太田晴久監修.大人の発達障害:仕事・生活の困ったに寄り添う本.東京,西東社,2021,191p.
2)日本精神科看護協会監修.アディクション・パーソナリティ障害の看護ケア.愛知,中央法規,2017,239p,(精神科ナースのアセスメント&プランニングbooks)
3)前川ほまれ.セゾン・サンカンシオン.東京,ポプラ社,2021,362p.

プロフィール:関永聡子
昭和大学附属烏山病院 看護師

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