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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:サブドラ

「102号室の入院はサブドラです」「サブドラのオペ後状態変わりありません」
看護師さんなら「サブドラ=硬膜下血腫」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
硬膜下血腫とは、硬膜とくも膜の間に血腫ができる疾患です。高齢者が転んで頭をぶつけたことがきっかけで起こるケースが多く、血腫が徐々に大きくなって脳を圧迫し、意識レベルや歩行の異常などの症状が出現して来院します。通常、血腫除去術を行えばすっかり症状がなくなり退院できます。
「サブドラ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「サブドラ」は、英語で「硬膜下血腫」を意味する「subdural hematoma」を日本語読みにした略語です。「subdural」は「硬膜下の」、「hematoma」は「血腫」という意味です。
英語の発音は、「サブドラ」ではなく「サブドゥラァル」、「hematoma」は「ヒマトーマ」が英語に近い発音です。
今日はすこし医療英語を覚えるコツを紹介します。
今回紹介した「subdural hematoma」は大きく4つの要素が組み合わさっています。
まず、「subdural」の「sub-」です。「sub-」は「~の下(below)」という意味があります。
例えば「sublingual(tablet)」は「舌下(錠)」、「subcutaneous injection」は「皮下注射」です。
日本語でも「サブ」と言えば、サブリーダーやサブタイトルなど「副-」や「補助」、「下の」という意味で使われていますよね。

「dura(mater)」は「硬膜」という意味があります。例えば、「epidural」は「硬膜外」です。
「hemat-(hemo-、hema-)」は「血」という意味があります。例えば、「hemorrhage」は「出血」、「hematology」は「血液内科」です。

「-oma」は、「腫瘍」という意味がありますが、今回のようにがんや肉腫ではなく「腫」とつく言葉にも使われます。例えば、「carcinoma」は「癌腫」、「sarcoma」は「肉腫」、「glioma」は「神経膠腫(グリオーマ)」などです。

医療英語の接頭語や接尾語を覚えておくと、はじめて見る難しい医療英語でも単語を分解してなんとなく意味を推測することができます。
英語圏の医療にかかわる学生も、まずはこうした医療英語の接頭語や接尾語から勉強しているのですが、難しすぎて早々に挫折してしまう学生も少なくありません。

私自身もまだまだ日々医療英語と格闘する修行の身です。





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


危険に直面し勇敢に立ち向かうだけが勇気ではない。勝算がなく無謀であるとみたら、いさぎよく退くのも勇気のある行動である、という意味のことわざです。

みなさんは、自分ではどうしようもできない困難な状況に直面したことはありますか? そんなとき、前向きな言葉に触れても心に響かず、立ち止まっている自分に負い目を感じてしまった、という経験はないでしょうか?

私は、アメリカで看護師になるという夢半ばで帰国をした経験があります。
アメリカ経済が傾きはじめ移民排除の政策が強化されたため、労働ビザが下りなくなり就職の道が断たれたのです。「諦めるな!」「とにかく前へ!」と言われても、いち個人が頑張ったところでアメリカ政府に太刀打ちはできません。
「日本に帰国=夢を諦める」と考えていた私は必死にもがきましたが、今日の言葉が当時の私に転機をくれました。このままアメリカに居続けても時間とお金の無駄遣いになる。ここはいったん引いて、好機を待ったほうがいいかもしれない。
今日の言葉のおかげで、「帰国=賢明な判断」という考えに変わり、帰国を決断することができました……とはいっても、不眠症を患うくらいつらく勇気のいる決断でした。
困難な状況において、選択肢は前に進むことだけではありません。「せっかくここまで来たのに……」と悔しい思いはありますが、1つ前に戻って状況を見て転機を待つことは長い目で見ると賢明な判断となることがあります。そして、その判断は前に進むよりも勇気のいるものかもしれません。

あなたが困難な状況に直面して八方塞がりで苦しいとき、ぜひ思い出してください。
目の前の道は、決して前に進むだけの一方通行ではないことを。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。