# 心カテ中、何に気をつければいいかわからない
# 心カテ前の患者さまを安心させたい
# 患者さまからの心カテについての質問に答えられない
# この患者さまはカテ室でどのようなことをされてきたのか?
# カテ終わり 術後合併症?!


こんにちは!
局所麻酔の後はシースを挿入していきますが、シースについては#023「心カテまるわかり~知れば怖くない 私がカテに参加する!カテスタッフも病棟スタッフも~」でお話ししました。今回は、シース挿入後に入れる抗凝固薬についてお話ししていきます。

血栓を作らないために

心カテはシースから始まり、さまざまなデバイス(物品)を血管内に挿入していきます。血液は異物と接触することによって固まってしまいます(血栓)。そのため抗凝固薬(ヘパリン)を使用します。投与量は施設によって、施行医によって異なりますが、当院は診断カテの場合は2,000~3,000単位、治療の場合は体重×100単位投与していることが多いですが、みなさんの施設はどうでしょう?

また、ACT(activated clotting time:活性化凝固時間)を200~250秒程度で管理することが多いと思います。抗凝固薬の追加投与の検討や、このあと起こるかもしれない出血性合併症に備えて、1時間ごとにACTを確認しておくことが大切です(図1)。

ごくまれに、ヘパリンを投与しているにもかかわらず、どこからともなく血栓が形成され、やがて沸くように血栓ができあがっていくことがあります。これはヘパリンによる副作用のHIT(heparin-induced thrombocytopenia:ヘパリン起因性血小板減少症)が強く疑われます。

HITはヘパリンを投与してから数日後に血小板減少が認められ、その半数くらいが異常な血栓の形成を認めるといわれています。過去に投与したヘパリンによってHIT抗体をもった方が、再び投与することによって24時間以内に急激に発症することもあり、心カテ中に血栓形成を認めることもあります。

私が経験したもっとも印象に残っている症例

PCI中に突然冠動脈内に血栓ができて完全閉塞になりました。吸引カテで血栓吸引しても、またすぐに血栓ができあがる。カテーテル内にも血栓ができたようで、観血血圧が表示されなくなり、カテ内の血栓を取り除いてカテーテルから逆血するとモコモコと血栓が溢れ出していく、というような症例を経験しました。

私たちのチェックポイント

異様に血栓が形成されたら➡HITを疑いましょう

□手技は一時中断
□バイタルサインの変化に注意【冠動脈内で血栓が形成される可能性があり】
・ST-T変化などの虚血性変化
□脳梗塞症状の確認【脳動脈に血栓が飛んでいる可能性もあり】
・発語に問題ないか? 手足動くか? などの確認
□ヘパリン入りの生理食塩水が使われているバットや造影ラインなどすべてを使用停止
□体内に入っているデバイスの確認
・カテーテル内などに血栓が残っている場合がある
・観血血圧などの観察を行いカテーテルが血栓詰まっていないかどうかも確認
□新たなカテーテルセットを準備して、洗浄・フラッシュ用の水はヘパリンの入っていないものを準備
□この後の代替えの抗凝固薬は「アルガトロバン」を使用することが多い

HITは頻繁に経験するものではないので、いざというときにどうしたらいいかわからないことも考えられますね。このようなときどうするのか、あらかじめスタッフ間で取り決めをしておいたほうがいいかもしれませんね。

今回は、抗凝固薬についてお話しをいたしました。

もし、カテ中に合併症が起こったら、患者さまの安全のため、その事態をチーム全体でリカバリーしなくてはなりません。心カテで起こる合併症は、とにかく急いで対処しなくてはならないことがほとんどです。そんなときにチームの一員として自分に何ができるのか? まずは、いまどういうことが起こりうるのか。それをわかっていることが重要です。

また、カテ後の患者さまを看るスタッフとして、「カテ室で何が起こったのか」をわかっていることが、みなさんの観察ポイント・処置に繋がります。


今回はここまで。
お付き合いありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。