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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:ルンゲ

「今日はルンゲのオペ3件入っています」
看護師さんなら「ルンゲ=肺・呼吸器」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「ルンゲ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ルンゲ」は、ドイツ語で「肺」を意味する「lunge」が由来です。
日本の医療現場では、「肺」というよりは「呼吸器」という意味で使われています。
病院によっては、呼吸器外科のチームを「ルンゲチーム」、肺結核を「ルンゲ」と呼ぶところもあるようです。

「ルンゲ」は、英語で「lung」です。ドイツ語と似ていますが発音が異なります。
「lung」は、最初が「ル」ではなく「ラ」と発音して「ラング(lʌ́ŋ)」が英語に近い発音です。
私が「ルンゲ」という医療用語を知ったのは、じつはつい最近です。
「ICUからルンゲのオペ患とってください」と言われ、「……ルンゲ。……ルンゲって何ですか?」と質問してはじめて知りました。
呼吸器病棟は何度も経験しているのですが、「ルンゲ」という表現が定着している病院ははじめてでした。

さまざまな病院を経験すると、その病院特有の略語に戸惑うことが少なからずあります。
一番印象深く残っているのは、「スルスル用意しておいてください」でしょうか。
みなさん、「スルスル」ってなんだと思いますか?

正解は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)後の生理食塩水による膀胱持続灌流です。
「えっ? スルスル知らないんですか? 膀胱洗浄ですけど」と当たり前のように言われた私は、「スルスルで通じるわけねーだろっ!」と心の中で叫んでいました。

•You are going to have a lung surgery tomorrow at 1 p.m.
(明日1時から肺の手術の予定です)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


言わずと知れたマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)の言葉です。
この逆転の発想、私は目からうろこでした。

真面目で勤勉・丁寧に仕事をこなす人は「仕事のできる人」、怠け者は「仕事のできない人」というレッテルを貼りがちではないでしょうか?
でもじつは、一刻も早く仕事を片付けてさっさと定時で上がることをモットーに仕事をする人ほど、無駄な作業や優先順位の低い仕事をどんどん省く術を持っており、効率の良い仕事の進め方を知っていると言います。
ただし、何をやらせても頑張れない怠け者はアウト、楽をするために頑張れる怠け者に限ります。

自分自身を振り返ると、怠け癖のある子を効率アップにつながると評価して仕事を振り分けたことはなかったし、私自身も真面目に与えられた仕事をコツコツこなすことが正しいと思っていました。
でも、ビル・ゲイツの今日の言葉に触れて以降は、頑張れる怠け者の評価が180°変わりました。
あえてみずから怠け者になろうとは思いませんが、いかに仕事を早く終わらせるか、いかに楽に仕事ができるか、つねにその方向にベクトルが向いている怠け者こそ、仕事の効率アップを図るうえで最強の人材というのは納得です。
ビル・ゲイツのお墨付きだと思って、職場にいる怠け者さんに手こずっている方がいましたら、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。