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事例

Aさん(60歳、女性)は、うつ病(depression)で、夫と2人暮らしです。自宅で自殺目的にて縊首したところを発見されました。発見が早く生命への影響はなかったため、うつ病の治療のために医療保護入院となりました。身長155cm、体重40kg(この2カ月で体重は8kg減少)、血圧102/60mmHg、脈拍数66回/分、SpO299%、採血データ上、脱水と低栄養状態の所見を認めました。

問題

Aさんは、抗うつ薬の内服を開始してから1カ月ほどたちました。発語は増えましたが、意欲低下や抑うつ感の改善は認めていません。また、不眠の訴えや、胃部不快感、便秘、動悸など身体症状の訴えが聞かれるようになりました。身体症状の検査は実施しましたが、異常所見は認められませんでした。Aさんへの看護として適切なものはどれですか。
<正解93%>

(1)身体症状の専門の医師を紹介する。

(2)Aさんの辛い症状の訴えを傾聴する。

(3)薬を変更してもらうことを勧める。



… 正解は …











(2)

解説

(1)⇒検査に異常所見はないことから、身体症状は精神症状によるものと考えられます。
(2)⇒抗うつ薬の効果が出現するには時間がかかります。患者の治療意欲を維持できるように、Aさんの訴えに耳を傾けサポートします。
(3)⇒すぐに効果が現れないという理由で薬を変更するのではなく、医師と相談し、治療の評価方法について、患者とともに情報共有をすることが大切です。

うつ状態が寛解するまでには、時間がかかるため、患者の辛い経験も長くなります。治療により良い状態に向かうこと、永遠に辛い状態が続くことはないことを患者に伝え、絶望感を与えないようサポートすることが大切です。また苦しんでいるのは1人ではないことを伝え孤立感を抱かせないことも大切です。治療の経過が目に見えにくいため、患者だけでなく、家族も治療が進まないことに悩んでいることもあるため、家族へのフォローも必要です。

※2021年6月9日掲載分の再掲載です。