第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプター①をメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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辻江正徳
大阪労災病院 外科・肝胆膵外科部長

<こんな方にオススメです!>
〇こまかな病名や術式はあえて省きました―ざっくり「背景」を知ることが近道!
〇基本の解剖、肝炎、肝硬変、肝細胞がんの押さえておきたいポイントがわかる。
〇“なぜこの治療をするのか”を理解しよう。
〇人気の消化器セミナーから注目の肝臓をピックアップし、最新ガイドラインの情報(23年6月時点)を反映しました!


配信|CHAPTER 1:まずは解剖をおさらい


みなさんこんにちは。

いつも「メディカのセミナー」では、『ナースが知っておきたい 肝・胆・膵の解剖疾患治療の知識』ということで1日セミナーをしていますが、今回は少しショートバージョンということで、肝・胆・膵のなかでも「肝臓」に絞ってセミナーをしたいと思います。

肝臓に絞ったからといって内容がやさしくなるわけではありませんが、一つひとつかわりやすく、みなさんに肝臓を少しでも好きになってもらえるようにスライドを作ってきました。

それでは始めましょう。

まず、こちらの図は体を正面から見たところですが、横隔膜が黄色の矢印のところにあり、そのすぐ下の右寄りにあるのが肝臓です。

肝臓の解剖・疾患・治療の知識-01

この肝臓を取り出して見てみたのが次のスライドです。左側の写真は正面から見たところです。そしてクルッとひっくり返したのが右側の写真です。

見たいただいたらわかるように、非常に大きく、腹部では最大の臓器です。重量は体重の約2%、成人でだいたい800~1200gくらいの重さになっています。

肝臓の解剖・疾患・治療の知識-02

次に肝臓の細かいところを見ていきたいと思います。このスライドでは肝臓の中の脈管系を書いていますが、主役はもちろんこの食パンのような茶色のところにある肝細胞で、約2500億個というとてつもない数です。

これ以外にも図にあるいろいろな筋=脈管も非常に重要な役割を果たしています。

スライド内には「流入血管」「流出血管」という聞き慣れない用語がありますね。通常、臓器に入っていく血管のことを「動脈」、臓器から出ていく血管のことを「静脈」といいますが、肝臓は非常に特殊な臓器で、流入血管が2本あります。

この2本ある流入血管のうち、流れていく血液の量は門脈が70~80%、冠動脈が20~30%で、3対1から4対1の範囲で門脈の血流が多いとされています。

一方で、流出血管は肝静脈です。さらに少し細かいところも見ていくと、門脈と肝動脈の2つはずっと寄り添って入っていくのですが、そこに胆管を加えた三つ組が肝臓の末梢のほうまで流れていっています。

この三つ組は鞘に囲まれていて、その鞘のことをグリソン鞘と呼んでいます。

肝臓の解剖・疾患・治療の知識-03

ここで、それぞれの脈管の役割を簡単に説明しておきます。

流入血管の一つの「肝動脈」は、心臓からの酸素をたくさん含む血液を肝臓へ送る血管です。

次に、肝臓ならではの特殊な血管「門脈」は何をしているかというと、小腸・大腸の腸管で吸収した栄養を肝臓に送る役割を担っています。ここは非常に重要ですので、しっかり押さえておいてください。

そして「肝静脈」は肝臓に入っていた血液を心臓へ送る血管です。

最後に、少し毛色が変わって「胆管」は、肝細胞で作った胆汁を腸に送る通り道、これを胆道ともいいますが、そうした役割を担っています。

肝臓の解剖・疾患・治療の知識-04

ここからは少し肝臓の区域の話をします。

肝臓は先ほどからスライドで見てもらっているように、一つの大きな塊ですので、場所をはっきりとさせるためにある程度、区域、場所の名前、番号といったもので分類するほうがわかりやすい臓器です。

昔にHealeyとSchroyという人が分類したのがいちばん古典的なもので、スライドの図では肝臓がバラバラになっていますが、肝臓の後ろに下大静脈といういちばん太い静脈が流れています。その下大静脈と肝臓の右と左の間に胆嚢があり、それを結んだ線はレックス・カントリー線または略して「カントリー線」といいます。

こうして2つに分けた右側を「右葉」、左側を「左葉」と呼びます。

さらに右側は、肝臓の前部分の「前区域」、後ろ側の「後区域」に分けられています。

左葉については、内側の内側区域、外側の外側区域に分けられています。

そして、日本で比較的有名なのが、クイノーによる分類です。これは、スライドの図で示されている番号のとおり、S1~S8(SはsegmentのS)という分け方となっています。日本ではこれを「亜区域」と定義しています。

そして上の方に「尾状葉」と書いていますが、これがあまり知られていない場所なんですが、右葉にも左葉にも分類されない、クイノーの分類で1番と呼ばれるものが、体の奥深く、肝臓のいちばん深いところにあります。これも場所を覚えておいてください。

肝臓の解剖・疾患・治療の知識-05

では、ここからは肝臓の機能について移っていきたいと思いますが、続きはぜひログインして動画でご視聴ください。

肝臓の解剖・疾患・治療の知識-06



プログラム


<01>まずは解剖をおさらい
肝動脈、門脈など、それぞれの脈管の役割とは
肝臓のはたらき・役割
肝機能が悪くなるとどうなる?

<02>この疾患をおさえておこう① 肝炎
肝炎ウイルスの特徴を知っておこう
どの型が劇症化するの?
どんな検査をする?診断は?
どんな治療?
クスリの話もちょっぴりしてます

<03>この疾患をおさえておこう② 肝硬変・肝不全
肝臓はどんな状態なのか
ALBI grade と MELDスコア(リニューアル追加)
なぜ腹水がたまるの?
なぜ肝性脳症になるの?
どんな治療?

<04>この疾患をおさえておこう③ 肝細胞がん
肝細胞がんの特徴
肝炎ウイルスとの関係性は?
どんな検査をする?診断は?
手術?局所療法?どうやって決めるの?