第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
隅 清彰(3.4講義目)社会福祉法人石井記念愛染園附属愛染橋病院小児科部長【プランナー】
加藤有一(5.6講義目)安城更生病院小児科・新生児科 新生児センター長
荒堀仁美(1.2講義目)大阪大学大学院医学系研究科小児科助教


<セミナーはこんな内容>
出生直後から退院まで・・・どこを見る?何に気をつける?
赤ちゃんとお母さんのために観察力・アセスメント力を身につけよう!
助産師・看護師の一言で、お母さんの不安を取り除くことができます。 そんな「一言」を学んでください。


配信|CHAPTER 1:出生時に必ず観察すべきポイント


 今回は、正期産児を対象として、母子同室でも大丈夫か判断するための診察ポイント、スタッフが医師に相談しようか迷う状況での観察ポイントなどを具体的な事例や動画を通じてお話ししたいと思います。

講師の3人は大阪府立母子保健総合医療センターの新生児科で働いていた同僚です。現在もそれぞれ総合周産期母子医療センターで働いていますので、実践的なお話ができればと思います。

では、CHAPTER1で出生時に必ず観察すべきポイントについて荒堀先生にお話しいただきます。

荒堀 まず1つ目の講義は「出生時に必ず観察すべきポイントは?」ですが、最初に新生児蘇生における基礎知識ということで、NCPRにそってお話しします。

続いて新生児蘇生法の実際です。アルゴリズムを中心に、NCPR2020でどこが変わったのか、あとラリンゲアルマスクのお話をします。

最後に、状態安定後の観察項目ということで、そのなかでも報告すべき代表的な症状について説明していきたいと思います。

正期産児の観察ポイント時系列編01


本日のテキストについての説明ですが、基本的にはスライドの内容をそのままテキストに収めていますが、空欄があるテキストはこれまでに講習会受講歴があって、ちょっと試してその空欄を埋めてみようかなと思う方向けです。

空欄なしのテキストは、初めて受講するまたはちょっと自信がないなと思う方向けに正解が書かれているテキストとなっています。

正期産児の観察ポイント時系列編02


では「新生児蘇生法における基礎知識」をお話ししていきます。

まずはじめに、生まれてくる瞬間というのは一生のなかで最も危険な瞬間、つまり、死ぬかもしれない瞬間といわれています。早産児を除いて、正期産児が100人いたとしたらそのうち85人は30秒以内に自発呼吸が出てきます。

ただ残りの15人は何かしてあげないと助からないといわれていて、そのうち10人は皮膚を乾燥して肩枕を入れて、気道を開通して、刺激して、やっと自発呼吸が出てきます。

残りの5人は人工呼吸が必要となり、1000人いたら1人くらいは胸骨圧迫やアドレナリンが必要です。20人に1人は人工呼吸が必要ですので、みなさんNCPRを受講しておく必要があるということになります。

正期産児の観察ポイント時系列編03


次に、正常分娩の多くは小児科医の立ち合いがない場合があります。また先ほどお伝えしたように新生児仮死の発生率は低くはありませんが、新生児ですごく特徴的なのが、単純な処置で蘇生可能なことです。気道確保して人工呼吸をするだけで90%の新生児を助けることができます。挿管まで含めれば95%、胸骨圧迫まで含めれば99%助けることができるといわれています。ですので、NCPRは自分のものとして身につけてもらえたらと思います。

正期産児の観察ポイント時系列編04


続いて、赤ちゃんがお母さんのお腹の中から外に出てきたときに何が起こるかを復習していきます。

まずは肺水の置換です。肺胞の中には肺水という液体が入っています。これが一部は口から排水されて、一部はリンパの流れで吸収されて、空気に置き換わって、ふわふわの肺になります。

また肺血管抵抗が非常に高くい肺高血圧ですが、それが徐々に低下していき、胎児循環から成人循環へ移っていくことになります。胎児循環では卵円孔が開いていて、動脈管を通してバイパスしているような循環動態となります。

正期産児の観察ポイント時系列編05


次のスライドに示したのが2020年版のNCPRアルゴリズムです。字が小さくて細かいところが見えないかもしれませんがまずは全体像を見てください。

大きく変わったのは、救命の流れが2つに分かれるのではなくて一直線になったというところです。右側は安定化の流れです。

正期産児の観察ポイント時系列編06


ただそれだけでは文字も細かくてわかりづらいので、この2020年版NCPRアルゴリズムをどのようにとらえたらいいのかというところをお話ししていこうと思うのですが、まず2020年版の変更点を見ていきましょう。

まず生まれる前のところに事前打ち合わせ、ブリーフィングのボックスが増えています。

次に人工呼吸のときについ酸素を忘れがちなのですが「酸素」という項目が増えました。さらには「アドレナリン」がボックスとして独立しています。

正期産児の観察ポイント時系列編07


続いて、努力呼吸とチアノーゼをチェックした後は、どちらもないときだけ蘇生後のケアに進むことになりました。そのためどちらかがある場合は下のボックスに進んで、必要時のみCPAPまたは酸素投与することになっています。

その後、共になしという場合は蘇生後のケアに進むのですが、残っていて改善があるときは元のボックスに戻り、改善がないときは原因検索のボックスに進むことになります。

正期産児の観察ポイント時系列編08


さらに全体をどのようにとらえて覚えていけばよいかということですが、NCPRをする際に、なかなか頭に入らないとか、いざその場に立ち会って、つい壁に貼ってあるこのアルゴリズムを見てしまうということもあるかと思います。しかし、早く手を動かすためには頭の中に入れておくことが必要ですので、どうやってとらえれば身に付きやすいかということを説明していきます。

まず蘇生の目的、全体像をつかむ、そして流れをつかみ、重要ポイントを確認して、各ステップを意識するということになりますが、詳細の解説はぜひ動画にログインしてご覧ください

正期産児の観察ポイント時系列編09



プログラム


1.出生時に必ず観察すべきポイント その1
〇新生児蘇生における基礎知識
〇新生児蘇生法の実際
 ・アルゴリズムを中心に
 ・NCPR2020でどこがかわったの?

2.出生時に必ず観察すべきポイント その2
〇新生児蘇生の実際
 ・薬物投与、気管挿管
〇状態安定後の観察項目
 ・報告すべき代表的な症状

3.生後2時間以内の正期産児の診察ポイント~母子同室でも大丈夫 その1
〇生後2時間以内の分娩室における診察
〇生後2時間以内に超緊急を要する症状と疾患

4.生後2時間以内の正期産児の診察ポイント~母子同室でも大丈夫 その2
〇妊娠・分娩経過から予測される新生児疾患
〇早期母子接触
〇母子同室
〇正常新生児のクリニカルパス

5.退院時診察のポイント~退院後から1か月健診までの注意点 その1
〇退院時の診察方法
〇退院時から1か月の新生児の特徴
〇母乳について

6.退院時診察のポイント~退院後から1か月健診までの注意点 その2
〇トピックス(late preterm、RSV)
〇母子との関わり方
〇お母さんへの説明、アドバイス

こちらもオススメ

「助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント 症状・疾患編」もあわせて受講すると、より理解が深まります。

正期産児の観察ポイント症状・疾患編 助産師・看護師が知っておきたい
正期産児の観察ポイント 症状・疾患編


1.呼吸症状で観察すべきポイント~見逃してはいけない呼吸器疾患とは~
2.循環器症状で観察すべきポイント~見逃してはいけない循環器疾患とは~
3.神経症状・黄疸で観察すべきポイント その1
4.神経症状・黄疸で観察すべきポイント その2
5.消化器症状で必ず観察すべきポイントは?
6.感染症症状で必ず観察すべきポイントは?
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講師が執筆された書籍の紹介


Dr.隅&加藤&荒堀のビシッとやさしく!看てまもる正期産児の観察ポイント

メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ
Dr.隅&加藤&荒堀の
ビシッとやさしく!看てまもる 正期産児の観察ポイント

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赤ちゃんの「何かおかしい」を見逃さない!
新生児に見られる異常サイン、また見極めが難しいケースについて新生児科医が解説する人気セミナーを書籍化。出生直後だけでなく、生後2週間、退院前と時系列での観察ポイントと、呼吸・神経・消化器など部位ごとに「医師に伝えてほしい」症状がこの1冊でわかる。

発行:2023年4月
B5判300頁
本体3,850円+税
ISBN:978-4-8404-8143-4
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