第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
武蔵脩平
JA北海道厚生連 旭川厚生病院 中央検査部門 内視鏡センター看護師/消化器内視鏡技師
<セミナーはこんな内容>
■今、何をやっているかよくわからない…、術者の指示に焦ってしまう… そうなるには理由があります。
■次に「患者に起こること」「医師に求められること」が先読みできれば、余裕が生まれ、状況が把握できます!
■経験豊富な看護師がぜったい使える知識と、患者安全・安楽の視点から注意点・介助のコツを解説します。
■術中の動画の時々で重要なポイントを解説するので、実践対応力もアップします。
■患者さんのために、医師に自信をもって進言できるようになります!
配信|CHAPTER 3:内視鏡検査の介助のポイント
では続いて「内視鏡検査の介助のポイント」です。まず【色素散布】から入りたいと思います。
通常の業務についていると、色素散布をする機会が多いと思いますが、どういう目的でやっているのかということが抜けがちなので復習していきましょう。
まずコントラスト法と呼ばれる方法ですが、よく「インジコカルミン散布するからちょうだい」と言われると思いますが、それがコントラスト法です。
なぜインジコカルミンを散布するかというと、スライドにも記載しましたが粘膜表面の凸凹(デコボコ)している部分の凹んでいる部分に色素が溜まることで凸凹がより強調されて病変が見やすくなるので色素散布をしている、という目的を一つ覚えておいてください。
また、凹凸(オウトツ)の凹の部分に色が入ることで強調されるということは、粘膜表面に粘液が残っていると強調がされにくいということになりますので、粘液を十分に洗い流すことが必要です。
そしてインジコカルミンは病院によっていろんな希釈で使われていると思います。スライドに書いてあるのは一般的とされている濃度で、胃と大腸では4倍希釈と2倍希釈で違いがありますが、なぜ希釈が違うでしょうか?
大腸は胃に比べて、腸管洗浄液剤や腸液によって検査中に水が多かったり、水を吸っても奥からどんどん腸管洗浄液剤や腸液が降りてきて、またすぐ水浸しになる場合があり、薄い濃度だとさらに希釈されてしまいます。そのため大腸では胃よりも濃い濃度で散布をしています。
ただ、ここで要注意なのですが、濃いインジコカルミンは時間が経つと粘り気が出てきます。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などをする最中に通常と同じ濃度で散布すると、治療をしているあいだにどんどん粘調が出てきて、それ自体が邪魔をしてしまう可能性がありますので、治療時にはより薄く使用することが大切です。
次のスライドは、上段が通常光、通常の写真です。
左から1番目の写真の病変は❶の部分にあります。
左から2番目の写真の病変は❷の範囲にありますが、遠目で見るとわかりづらいですね。
左から3番目の写真は❸の部分が出っ張っているかなとわかると思うのですが、この出っ張っているものだけに注目しやすくなってしまいます。
左から4番目の写真は❹の辺りですが遠目から見るとちょっとわかりづらいですね。
これらに色素を散布することにより(下段の写真)、凹の部分に色素が入って陥凹が、凹凸がハッキリしますので病変の範囲が見やすくなります。
原理として凹凸の凹んでいるところに色素が入るからコントラストができるのだということを覚えておいてください。
次に【反応法】と呼ばれる色素散布の方法です。
ルゴール(ヨード)を散布する方法で、食道で用いられる散布方法ですが、なぜ食道はインジコカルミンではないのでしょうか?
原理としては、扁平上皮の顆粒細胞層内にあるグリコーゲンとルゴール(ヨード)の反応によって黒褐色に変色する部分が正常となります。よく理科の実験などで、ヨウ素でんぷん反応、ジャガイモにヨウ素をかけたら色が変わるといったことをやったと思いますが、それと同じです。
そのため、正常な扁平上皮だと色が濃くなります。ただそこが染まらず、黄白色の不染帯になるとがんや異形上皮ということになります。
ルゴール(ヨード)はインジコカルミンとは違って刺激が強いため、散布をすると患者さんが胸やけを感じる場合も多くあります。また、刺激が強いために組織自体に障害を及ぼすこともあり、ESD前は最終の散布から1カ月は空けたほうがよいとされています。
また、ここで注意してほしいことがあります。食道でだいたい20ccくらいのルゴール(ヨード)を散布するのですが、検査中に患者さんが余ったルゴールを吐き出してしまうことがあると思います。その場合はそのままにせず、素早くふき取ってください。ルゴール(ヨード)によって皮膚障害を起こす可能性があります。ちょうど頬の下のところに溜まっていると頬がルゴール(ヨード)で焼けてしまったりしますので注意をしてください。
続いては【染色法】です。
病変自体をクリスタルバイオレット(ピオクタニン)で染めてしまって、その腺管開口部を観察することで腫瘍なのか非腫瘍なのか、腺腫なのかがんなのか、がんであった場合にはどれくらいの深さなのかを診断する方法です。
散布チューブを用いて、病変から出血しないようにやさしく散布することが大切です。
また一度に濃い濃度で染めるのではなくて、ゆっくり浸すように何度も何度もかけては洗ってということを繰り返して濃くしていく処置です。
注意点については他の色素も同様なのですが、衣服や皮膚に付着するととても落ちにくいので取り扱いには気をつけなければなりません。
色素散布の際によく散布チューブを使用すると思いますが、その際の介助にはポイントがあります。
みなさんは色素を注射薬と混同しないようにカラーシリンジを使用されているでしょうか?カラーシリンジにはロックタイプがないと思います。そのため散布チューブに接続して過度な圧を加えるとシリンジがチューブから外れてしまい、患者さんや辺り一帯が色素まみれにもなりかねないので、シリンジが外れないようにしっかり気を配る必要があります。
また、抜去の際にはチューブの先端からの液はね、液だれには十分注意をしてください。目の前いるのは患者さんです。患者さんの顔や衣服に染色の液が付かないように十分注意をしてください。
散布チューブ前にシリンジで陰圧をかけてチューブ先端に液がない状態をつくると、抜去の際にはねにくいのでぜひやってみてください。
続いては「生検」についてお話しします。
ログインして動画でご覧いただくと続きの「生検」の解説まで視聴することができます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。
プログラム
1.内視鏡に必要な基礎知識(20分)
①解剖生理
胃/食道/小腸/大腸
②薬剤・前処置
局所麻酔薬/消泡剤、粘液除去剤/鎮痙剤/腸管洗浄剤
2.内視鏡に必要な基礎知識(21分)
③機器取り扱い
スコープ/ユニバーサルコードの接続/検査終了後
④洗浄・消毒
ベッドサイド洗浄/洗浄室での用手洗浄/洗浄機/高水準消毒
3.内視鏡検査の介助のポイント(16分)
①色素散布
コントラスト法/反応法/染色法/色素散布の際に散布チューブを使用する場合
②生検
4.内視鏡処置の介助のポイント(13分)
①止血処置
出血/クリップ/止血鉗子/APC/高張ナトリウム・エピネフリン局注
介助のポイント クリップ編
5.内視鏡処置の介助のポイント(38分)
②ポリペクトミー・EMR
まず押さえておきたいこと/術者とのコミュニケーション
出血時・穿孔時の対応を準備/シースの受け渡し、鉗子口への挿入
スネアリング・切除/コールドスネアポリペクトミー(CSP)
シースが寄れて切除できない/クリップの特徴と使い分け
病変サイズに応じた回収方法/速やかに検体を処理
6.内視鏡処置の介助のポイント(8分)
③その他のポリープ切除
ハイブリッドEMR/Under Water EMR
留置スネアを用いたポリペクトミー
7.内視鏡処置の介助のポイント(23分)
ESD…デバイスの種類と特徴
④胃ESD
適応の原則/用語を整理しよう/【動画供覧】/主な合併症
8.内視鏡処置の介助のポイント(8分)
⑤食道ESD
適応の原則/用語を整理しよう/【動画供覧】
9.内視鏡処置の介助のポイント(10分)
⑥大腸ESD
適応の原則/pitpattern分類/JNET分類/【動画供覧】
10.内視鏡処置の介助のポイント(15分)
⑦胃ESD LECS
⑧ESD合併症
穿孔/出血/狭窄/【動画供覧】
⑨異物除去
適応/アニサキス症/義歯、PTP包装の誤飲/食物残渣の嵌頓
11.内視鏡看護のポイント(18分)
①上部消化管内視鏡検査の看護
②下部消化管内視鏡検査の看護
講義のまとめ