第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
水野克己
昭和大学 医学部 小児科学講座主任教授

<セミナーはこんな内容>
少子化の今だからこそ求められている母乳育児支援のエビデンスを学び直しませんか?
長年、母乳育児支援に携わってきた水野先生だからわかる、今大切にしたいポイントを確認できます。
あなたの母乳育児支援の心(ハート)に火がつくこと間違いなし!


配信|CHAPTER 2: 妊娠初期に母乳育児に関する情報を健診のたびに提供


妊娠初期に母乳に関する情報を健診のたびに提供してください。グループであっても、個別であっても、いつでも可能なときに、いろいろな方法で、特に目で見るとか、耳で聴くほうが印刷物よりも効果があるんだろうと思います。

YouTubeなどもいいですね。ぜひ母乳に関する動画などもたくさん作って、お母さんたちがいつでも観られるようになっていくということも非常に大事なことだろうと思います。

そのときに含めておきたい内容としては、

a.母親と児に対する利点
b.一般的な誤解(都市伝説)
c.職場復帰の際に母乳育児を続けられる方法
d.母乳がどのように作られるか
e.基本的な管理テクニック
f.その妊婦から言われた特別な懸案事項
g.社会資源


その妊婦から言われた特別な懸案事項の例としては、前の育児のときに乳腺炎になってとてもつらかったので次はもう粉ミルクにしようと思っているという方もいらっしゃいます。そういった場合には、それを話してくださったことに感謝を伝え、それとともに次の妊娠・出産の後にそうならないように一緒にやっていこうという、こちらからの気持ちを伝えられるかが大切です。

もちろん信頼関係がベースになければいくら伝えても「いや、私はもういいです」となるかもしれませんので、押し付けるようなことはせずに、ゆっくり時間をかけて、一緒にやっていくという姿勢を示すことが大切かなと思います。

少子化の今こそ!母乳育児をともに歩もう01


従来のクリニックや助産院から外に出て教室を開いたり、情報を提供する、社会に訴えかけることが非常に重要になっています。

現在のように子どもが減っている状況下では、子育てをしているところを見たことがない、赤ちゃんを抱っこするのは自分の子どもが初めてという方もいらっしゃいます。そうした方にどうやってうまく子育てをしていくのか伝えていくわけですが、その前の段階として、祖父母など周囲にいる人たちみんなの意識も「みんなで子育てを助けるんだ」と変えていかなければなりませんし、それを伝えていかなければならないわけです。
ですので、スライドに挙げたような場所で、不特定多数の人に話を聞いてもらえる場を持つことが大事だと思います。

少子化の今こそ!母乳育児をともに歩もう02


続いては、母乳育児対する妊娠中の考えですが、ぜひ母乳で育てたいと考えている方、母乳がでれば母乳で育てたいと考えている方を合わせると96%の方が妊娠中に「母乳で育てたい」と考えています。ただこの調査は平成27年度のもので、最近、1カ月健診などをしていると、このような感じではないのではないかとちょっと心配しています。

1カ月健診で粉ミルクだけで育てていてもそれをネガティブにとらえていないという方が以前よりも増えているように思います。ですから、今こそ母乳で育てるということが普通になるように、情報提供だけでなく、出産後一緒に寄り添っていく体制づくりも大切になります。

そして母乳育児がうまくいくと、きっと子育ては楽しいと思ってもらえる。もう1人、もう2人産みたいと思ってもらえるかもしれません。なので、そこに力を注ぐことが大事になってくると思います。

少子化の今こそ!母乳育児をともに歩もう03


母乳育児というのは当然のことながら赤ちゃんにとっての利点だけではありません。お母さんにとっても良いことがたくさんあります。

お母さんにとっては、乳がん、卵巣がん、高血圧、2型糖尿病を防ぐことができ、精神的健康が維持できるともいわれています。

赤ちゃんにとっては、短期的なところで言えば下痢や下気道感染、中耳炎など多くの感染や、湿疹、乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防につながります。

また長期的に見ると、認知能力(IQ)が高まったり、社会的に問題となる行動が減ったり、2型糖尿病、白血病、自閉症スペクトラム障害、肥満が減る、子どもが健康に過ごしていける、成長していくという点でも、母乳育児は重要なわけです。

このあたりのことを、押し付けではなく、わかりやすく説明をしていって、母乳で育てたいと思ってもらえるようにすることが大事です。

少子化の今こそ!母乳育児をともに歩もう04


人生を決めるいちばん大事な1000日、THE FIRST 1000 DAYSというのが最近注目されています。この1000日とは、いつからいつまでのことでしょうか?

これは受精から生まれるまでの270日と、2歳までの365日×2年、これがちょうど1000日になります。つまり、受精して2歳の誕生日を迎えるまでのあいだが、その子の一生を決める非常に重要な時期です。

当然のことながら、お母さんがどのような生活をしているかということが大事になりますし、赤ちゃんが生まれてから母乳で育てるのか、粉ミルクで育てるのか、また家の中でタバコを吸う人がいるのか、ちゃんとした愛情が注がれているのか、いろんなことが関係していくわけですので、この最初の1000日をみなさんが支えてあげることは、その子どもたちが元気に育っていくために必要なことであり、子どもたちが元気に育っていけば当然にお父さんやお母さんも子育てって楽しいね、もう1人産みたいねって思ってもらえると思います。子どもがしょっちゅう病気をして大変な思いをしているとそれは逆の思いになってしまうかもしれません。

母乳で育てるということは、子どもが感染症にかかりにくい、喘息などのアレルギーが減る、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生が少ない、小児糖尿病、小児がん、中耳炎のリスクが減る、ワクチン接種をしたときに抗体を獲得しやすい、歯の矯正や顎の形、虫歯などの問題が少ない、精神的・情緒的な発達が進みやすい、高い知能と関連がある、といったことがわかっています。

少子化の今こそ!母乳育児をともに歩もう05



ログインすると動画でご覧いただくことができ、より学が深まります。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。







プログラム

・今の時代の子育て

・あらためて…母乳の利点
 母乳にあって人工乳にないもの  感染症の重症化を防ぐ/免疫・感染症に働く成分
 感染防止と認知機能  脳の発達/運動発達
 肥満防止/夜尿症/骨形成

・母乳育児支援
 原始反射/おっぱいを欲しがるサイン

・これ本当? 母乳の都市伝説をチェック
 甘いものを食べてはいけない?
 牛乳は控えたほうがいい?
 5分で左右を切り替える?
 1歳まで?
 食べ物が悪いから湿疹が出る?
 1歳までは母乳だけ?

・母乳の前に「育児」

・母乳の限界
 ビタミンD
 鉄

・お母さんの「不安」にこたえる

講師が執筆された書籍の紹介


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健診を楽しくすすめるエビデンス&テクニック
あなたの一言がお母さんを楽にする!/「健診ほど楽しい仕事はない!」 小児科医・助産師・保健師のためのまったく新しい乳児健診マニュアル


発行:2021年1月
B5判 192頁
3,960円(税込)
ISBN:978-4-8404-7508-2
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