第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
四宮 聡
箕面市立病院 感染制御部 副部長 感染管理認定看護師
<こんなことが学べます>
・感染対策を基本から見つめ直し、普段のケアと感染対策が結びつけられる
・ベッドサイドで意識すべきことが具体的に分かり、明日から実践できる
・感染リスクを「見える化」するための手法が分かって啓発に活かせる
・覚えておきたい起因菌の性質が分かり、アセスメントにつながる
・抗菌薬を選ぶ医師の考え方を学べて、抗菌薬適正使用に貢献できる
配信|CHAPTER 2: ベッドサイドの感染対策と 感染リスクを見える化する
さて、CHAPTER1では基本的なところをみなさんといっしょに復習してきました。
CHAPTER2では、やっぱりベッドサイドの感染対策というのは見かたによっては非常に難しい、捉えどころがないところがあると思いますので、できる限りわかりやすくお伝えできればと思います。
CHAPTER1の復習としては、感染対策は普段からやる標準予防策があって、場合よって経路別予防策を足していくという2段構えでやる。そして感染対策は経路(うつる道)に対して行うものだよ、個人防護具は使い方が大切だよ、環境衛生は掃除じゃなくて感染対策にもなっているんだよ、消毒するときにはきれいにした後で温度と濃度、そして接触時間の3つを大事にしようというところをお伝えしました。
CHAPTER2では、主要なケアと手指衛生の関係、そしてPPEの関係、具体的には排泄ケアとか吐物処理、経管栄養、吸引、血液培養も含む採血のことといった、みなさんが汎用するようなケアに注目していきたいと思います。
では、まずはCHAPTER1でもお話ししましたが、すべてに共通するのは、一処置一手洗いでは足りないということでしたよね。
こういうところからスタートしていきたいと思いますが、一般的なポイントといわれると、やはり手指衛生のタイミングをケア・処置に落とし込む必要があります。ただここで難しいのが、病院や病棟によって同じ手順ではできないということなんですね。そのため、みんなで話し合ってそのタイミングを決めていくというプロセスがけっこう大事だったりします。
そして個人防護具のルールを決めて守ることですが、これも病院によっては制限がかかって潤沢に使えないという状況も想定されますので、「こうであったらいいんだ」という“べき論”はなかなか適応しにくいという問題があります。
そして、リスクを具体化するというのは非常に大事です。なんとなくルールで決まっているからというのは残念なことだとCHAPTER1でお話しした通りですが、やはり状況に応じてみなさんが対応できるようにならない限りはなかなか効果的な感染対策につなげるのは難しいと経験上は思います。
そこで一般的にというよりも、リアルに考えてみたのが次のスライドです。
もちろん、5つのタイミングに沿って何十回もの手指衛生が大事だというのはわかるのですが、そのなかからさらに、“わびさび”ですよね。
絶対に譲れないタイミングがあると思うんです。10回しないといけないなかでもし優先度を付けられるとしたら何か? というと、それはリスクが説明できるタイミングなんですね。例えば、汚染したオムツを処理して手袋を外した直後に手指衛生をやらなくていいという選択肢は恐らくないと思うんですね。なので、こういったところだけをとりあえず強化していくというはリアルなポイントかなと思います。
また個人防護具は自分だけじゃなくて相手のためにも存在しているという、こうした啓発は意外と足りていないと思います。こういう手順なので個人防護具を付けてくださいね、PPEを付けてくださいね、とリンクナースさんから啓発していただくことが多いと思うのですが、そもそもPPEは自分のためだけじゃないといったところを押さえておく必要があります。
そして“見える化”です。どうして“見える化”かと言うと、人間というのは“見えないもの”にはなかなか腑に落ちない、そういう生き物だと思ってください。ですのでいかに“見える化”していくか、データなのか、ビジュアルで何かわかるようにするのか、そいう工夫が必要です。
では「排泄ケア」に入っていきたいと思いますが、排泄ケアといっても非常に抽象的で、陰部洗浄、オムツ交換、パットだけ交換するパターンもあるかもしれませんし、ポータブルトイレを交換したり、尿の回収をしたり、いろんなパターンがあるわけですけれども、すべて共通するのは「病原体が常に存在する機会になっているんだ」ということです。
「パットだけやからいいやん」という軽いノリが危ないんですね。これもグラデーションであって真っ黒か白かみたいなものではなくて、こういうなかにリスクが潜んでいる、リスクとは具体的に菌やウイルスですが、そのように考える癖をつけてください。
先ほど菌やウイルスと言いましたが、それは何かというと次のスライドのようなものですね。みなさんの所属されている病院や病棟でどういうものが検出されるかわかりませんが、例えば大腸菌のESBLはもうそんなに珍しくなくなってしまいました。
腸球菌(VRE)はちょっとたいへんな耐性菌ですよね。
ロタウイルスは小児では困りますよね。
こういったカタチで、排泄物と病原体を結びつけるときには具体的にみなさんの病院や病棟で遭遇しそうな菌やウイルスを挙げていってください。
そうしたときに、では菌やウイルスはどこにいるのかです。汚物流し、病室、オムツカート、畜尿器、陰洗ボトル、尿器、はかり、これらすべてに接触しているわけです。
ではこれらに触れたりとか、これらを処理するタイミングにリスクがあるよね、といったカタチで分解していくといいんじゃないかなと思います。
例えばということで、次のスライドにオムツ交換の手順を示しましたが、汚染担当と清潔担当がきっちり分けられますよといったときには、手指衛生のタイミングは異なっているわけですよね。
こういったみなさんのできるうるいちばん高いレベルで感染対策を考えていただいて、例えば、夜勤では無理だけれども日勤ではきっちりやるとか、緊急事態的に1人でやらなければならないときもあるというのはわかるのですが、こうした一つずつのプロセスを分解してどこが危なさそうか、ではここの手指衛生だけはやろう、汚染担当であればPPE脱衣直後の手指衛生だけは自分1人でやったとしても死守していただきたいわけです。それをしなかった場合は、環境に菌をどんどん広げてしまう行為につながっている、それは耐性菌が広がっているときにこんなことをするといつまでたっても集団感染、アウトブレイクが落ち着かないということになるわけですね。
こういったところの積み重ねが感染対策ということになります。
地味ですね。ほんとに地味なんです。
次のスライドは箕面市立病院のオムツ交換イラストマニュアルですが、これが正しいかという話ではなくて、こういうふうに、みなさんがそれぞれの病院や病棟で「こうしようね」と、みんなが同じ方法と取れることが実は大切なんですね。
それはどうしてかと言うと、それぞれ好き勝手やっていると、本当に困ったときに一つの方法が取れません。決まったことを集団で守れないと一つの目標を達成することは非常に難しいのです。だってそれぞれで好きなようにやっていいといっていたのだから当然ですよね。
ですので標準化して、それを徹底する、その積み重ねの先に患者さんを守る、自分たちを守るということになります。
続いては「確認ポイント」について見ていきたいと思います。
ログインすると動画で「排泄ケア」の続きと「吐物処理」「経管栄養」の解説までご覧いただけます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。
プログラム
1. 感染対策の基礎知識を復習しよう
感染対策は「うつる道」から考える! ベッドサイドでの基本をおさらいしよう!
そもそも感染対策はなぜ必要なのか?
病棟で目指すべき感染対策のゴールは?
標準予防策と感染経路別予防策を振り返ろう
PPEと環境衛生のエビデンスとエッセンス
【質問コーナー】
・手袋の着用前と外した後の手指衛生は必要ですか?
・サージカルマスクを2重にしたら効果は上がりますか?
2. ベッドサイドの感染対策と 感染リスクを見える化する
普段汎用する手技の中で譲れないタイミングを考え、効果的な感染対策を効率よくできるようになろう!
主要なケアと手指衛生・PPEの関連
排泄ケア
吐物処理
経管栄養
吸引
採血(血培含む)
【質問コーナー】
・嘔吐などの消化器症状のある患者との隔離と、嘔吐物に同室であった患者の健康観察はいつまで継続が必要ですか?
3. 感染リスクの高いカテーテル対策と手術部位感染対策ガイドラインをマルっと理解しよう
カテーテルを入れなければカテーテル関連の感染は起きない! 必要性をアセスメントして抜去の提案につなげられるようになろう!
末梢静脈カテーテル
中心静脈カテーテル
尿道留置カテーテル
手術部位感染対策
【質問コーナー】
・ポート留置患者さんで血液培養(+)になったら抜去しないといけませんか?
・尿道留置カテ―テルの適応を病棟全体で守るためのコツはありませんか?
4. 感染症の診断・治療の理解を深めるためのポイント
どのように抗菌薬が選ばれているか理解し、細菌検査の重要なポイントを押さえよう!
抗菌薬適正使用とは
細菌検査のここだけは!
主要な病原体の特徴を押さえる
主治医の思考が理解できる! 抗菌薬のエッセンスを習得
【質問コーナー】
・培養なしに抗菌薬を決めている医師、血液培養を面倒に思うスタッフへの認識を深めるために何ができるでしょうか?
5. 遭遇頻度の高い感染症
よく出会う感染症を具体的に解説! ポイントを押さえてアセスメントに活かそう!
肺炎
尿路感染
インフルエンザ
COVID-19
皮膚軟部感染症
【質問コーナー】
・抗菌薬の種類が多くて覚えられません。よい方法はありますでしょうか
・抗菌薬のことを医師へ言うのは失礼だと思い、疑問をもっても伝えにくいです。