第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

※上部のサムネイルをクリックして視聴できます。
※視聴にはメディカIDが必要です。メディカIDをお持ちの方はログインしてそのままご視聴ください。




講師
藤山美由紀
社会医療法人宏潤会 大同病院 退院支援課 / 脳卒中リハビリテーション看護 認定看護師

<どんなセミナー?>
脳卒中患者さんの麻痺の評価は、なぜMMTではなくBRSを使うかわかりますか?
症状の実際や病態、画像の見かたがわかります。
できるナースの“アセスメント力”を身につけよう!


配信|CHAPTER 4: 脈拍の異常と意識障害


ではここからは脈拍と意識の関係についてです。

脈拍っていうのは、こう、トーントーントーンという一定のリズムになっていますよね。脈拍は全身に血液を行き渡らせているものですから、この回数が多かったり少なかったりすると体に異常を引き起こすわけですが、まず不整脈自体が脳梗塞を起こします

これはどういうことかと言うと、脳は一定のリズムでトーントーントーンといきますよね。でも不整脈はトーンといってから無かったり、またトントンといったります。

心臓というのは、心臓の中にある血液をギュッと押し出すポンプで、それで全身に血液を行き渡らせています。

血液というのは外に出るとすぐに固まるように、いつでも固まりやすいという性質があります。そのためギュッと1回押し出すときに全部の血液を出す、また次もギュッと全部の血液を出すというようにしないと、ちょっとでも時間があると心臓の中で固まります。

ところが不整脈の患者さんでは、トーン、トントンと弱い脈がきて、また時間をおいて弱い脈がきて、そのあいだに血液が淀みやすく、血栓ができてしまい、それがあるとき頭に飛んだら脳梗塞に、心臓に飛んだら心筋梗塞、足に飛んだら閉塞性動脈硬化症で足を切断ということも起こり得ます。

ですので、脈というのはきちんと確認しなければならないし、不整脈があるかないかというのはとても大事なのです。

では徐脈、ゆっくりの脈のとき何が起こるかというと、頭蓋内圧が上昇したり、アダム・ストークス症候群といってこれも頭蓋内圧が亢進している状態になります。

また、トントントントントンという頻脈のときはどういう状態かというと、ショックのときです。ショックにはいろいろありますが、心臓が止まってしまったというとき、止まってしまうと脈は打てないのですが、脈が弱くなったときは全身に血液を行き渡らせようとして回数を多く打ちます。

そして熱が上がっているときも脈が多くなりますが、これは体に栄養を行き渡らせようとして脈が上がってくるのです。

このような脈と病態の関係は知っておく必要がありますが、まずは、脳の病態が進むと脈は少なくなる、徐脈になるということを覚えておいてください

脳卒中患者の観察ポイントと画像のみかた01


続いて呼吸の話ですが、次のスライドは脳のある部分が損傷すると異常な呼吸が出るという表です。間脳、中脳、橋、延髄とあって、順番に頭の上から下のほうにいきますが、まずは間脳、視床が損傷するとチェーン・ストークス呼吸が現れます

チェーン・ストークス呼吸は、ハーっと呼吸すると息が止まり、無呼吸になります。これは割と深い呼吸、男性だとイビキが多いです。寝ているときに「ガガガガガッ」となったと思ったら止まって、また「ガガガガガッ」となって止まります。

その下、だんだん呼吸の中枢のほうになってきて、中脳が損傷すると中枢性神経原性過換気といって「ハーハーハーハーハー」と呼吸が多くなります。

次に橋ですが、橋が損傷すると吸気時休止性呼吸、群発性呼吸といって呼吸がちょっと不規則になってきます。「ハーッ、ハーッ」となって止まって、また呼吸が始まって、また止まります。

そして延髄ですが、延髄が損傷すると失調性呼吸といって、よく「肩で呼吸しています」という申し送りがありますが、「ハ~~、ハ~~、苦しい……」という感じですが、この状態になると最終的には呼吸が止まります。

脳卒中患者の観察ポイントと画像のみかた02


ではこれらの呼吸の異常が脳にどういう影響を与えるかですが、これはすごく重大です。呼吸というのは酸素の供給ですよね。脳というのは体重の2%くらいしかなくて、体重50Kgの人だとだいたい脳が1000~1500gなのですが、酸素の消費量は体全体の4分の1くらいです。

脳は小さいけど、体重の10倍くらいの酸素が必要な、すごく酸素を使う臓器なので、酸素が足りないとたちまち影響を受けてしまいます。

まずスライドの左にある低酸素状態になると血管が拡張します。血管が拡がって「たくさん酸素来てね」という状態になるわけです。そうすると当然、脳血流量は増加してきますよね。でもそうすると頭蓋内圧が亢進します。

そうなると、これはいけないということで脳の血流量が低下していき、必然的に脳の酸素が足りなくなって、脳代謝障害になって脳の働きが悪くなってしまいます。そして、脳浮腫の誘発が起こり、脳の働きが悪くなるので細胞が死んでいって、それがずっとそのままになっていると脳ヘルニアとなり、最終的は命を失うことになります。ですので呼吸の異常というのは放っておいてはいけません。

脳卒中患者の観察ポイントと画像のみかた03


それからもう一つ、血液脳関門(BBB:Blood Brain barrier)ということを考えておかなければなりません。

脳卒中患者の観察ポイントと画像のみかた04



ログインすると動画で「血液脳関門」の続きをはじめ「瞳孔の観察」「動眼神経麻痺」「上肢の麻痺の検査」の解説までご覧いただけます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。







プログラム

脳の構造とそれぞれの働き

【01】大脳の解剖 -17分-
 ◇脳血管が障害されると、どんな症状が出る?
 ◇脳の側性化とは?
【02】間脳・大脳基底核・小脳・脳幹部のはたらき -22分-
 ◇神経線維の連絡

異常・急変の観察ポイント

【03】アセスメントのためのフィジカルエグザミネーション -24分-
 ◇見逃すと危険な状態とは?
 ◇頭蓋内圧亢進について
【04】脈拍の異常と意識障害 -17分-
 ◇呼吸の異常が脳に及ぼす影響とは?
 ◇神経の麻痺と検査

急性期ナース必須のアセスメント力

【05】事例 Aさん 左被殻出血 62歳男性 -35分-
 ◇頭痛と右半身のしびれの増強でしぶしぶ入院したものの…?
 ◇「被殻出血」はどうして出血しやすい?
 ◇経過ごとの画像を見くらべよう
 ◇MMTとBRS(ブルンストロームステージ)の関係
 ◇言語中枢はどこにある?
【06】事例 Bさん 左中大脳動脈領域の脳梗塞 42歳女性 -39分-
 ◇夜中、様子がおかしいと救急搬送され、翌日には発語もあったが…?
 ◇右麻痺、構音障害、失語症
 ◇急変の原因をアセスメントしよう
 ◇仮性球麻痺と球麻痺のちがい

▼詳しくはこちらから

講師のそのほかのセミナー





プログラム

1 高次脳機能障害のとらえ方 前編
2 高次脳機能障害のとらえ方 後編
3 脳の解剖と機能
4 病棟でよくみる症例から学ぶ 看護計画と具体的なアプローチ 前編
5 病棟でよくみる症例から学ぶ 看護計画と具体的なアプローチ 後編
6 脳を損傷するということ ~精神的な支援 前編
7 脳を損傷するということ ~精神的な支援 後編
8 脳を損傷するということ ~家族への支援と関連職種との連携

▼詳しくはこちらから