第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
児玉和彦
医療法人明雅会 こだま小児科
笠井正志
兵庫県立こども病院 感染症内科
<どんなセミナー?>
「軽症」の中から「重症」を見分ける!
プラス「緊急度」を見極められる力が身につきます!
「先生、この子ヤバイよ!」と自信をもって言えるようになろう!
配信|CHAPTER 7: 腹部のみかたと疾患
それではここからは「お腹の病気」の話をしたいと思います。
本当はお腹の疾患は多岐に渡るため話したいことがたくさんあるのですが、時間に限りもありますので一点だけ、重症な病気を見逃さないということにおいて重要な点をお伝えしたいと思います。
嘔吐・食欲不振は、ほんとに「なんでもあり」でして、こどもはなんでも吐きますので総合力が試されるわけです。
例えば、私たちの外来でよくみる嘔吐は、咳き込んで吐くということが多いです。ですから、こどもの嘔吐は何でもかんでもお腹の病気ばかりではありません。
ですので、ここまで循環の話も、呼吸の話もしましたが、どんな訴えであってもPATとABCDというのは、呼吸から循環、意識へと詳しくみていくやりかたですけども、そうした詳細な病歴と身体診察がまずは重要だと理解していただきたいと思います。
そして診療所やクリニックでは、詳細な検査、例えばあやしいから全部CTを撮ろうとか、全員を血液検査しようというわけにはいかないと思いますので、忙しい外来のなかでも最低限の血液検査、例えば血糖をはかるとかすっとできるようなことを工夫していきます。
では、どんな子に、どんなふうに対応するべきなのかというところが腕の見せどころなわけですが、今回は一つのことだけに絞ってお伝えしたいと思います。
この症例は8歳の男の子です。腹痛・嘔吐ですが、この「嘔吐」というのがくせ者でして、私も診療所で診察をしていますが、嘔吐を主訴にして来られたときがいちばん気を遣います。
小児科医なら発熱が怖いという人はいないと思いますが、嘔吐は怖いのです。ここが非常にポイントになります。
症例に戻りますが、本日小学校からの下校途中に腹痛があり、家に帰ってから嘔吐が2回、腹痛が増強してきたため救急受診されています。待合室で何回か吐いていて、最後の吐物は緑色でした。既往歴は特になし、意識は清明です。脈拍数が160回/分と多いのが気になります。
さあこのような状況で、特に冬であれば何回も吐くということはノロウイルスですよね、という感じになることもあるかもしれませんが、ちょっと立ち止まって考えていただいて、病歴のなかにどうしても見逃せないものが1つだけあります。
それは「最後の吐物は緑色であった」ということです。これは非常に重要な情報です。
たしかにノロウイルスで吐きまくった子でもそういった緑色の吐物を出す場合もあるのですが、これを見たら何とかしないといけないと感じていただきたいと思います。
ヤバい嘔吐の性状というと胆汁性嘔吐で、これはどこの教科書にも書かれています。そして胆汁性嘔吐をみた場合は腸閉塞を考えるということも書いてあります。例えば、腸重積、腸回転異常、内ヘルニアなどいわゆる腸閉塞です。外科的疾患に胆汁性嘔吐が多いということはわかっているのですが、胆汁性嘔吐というのは何なのか具体的に説明できる人はあまり多くありません。
胆汁性嘔吐は危険なんだ、色が変わると胆汁性嘔吐だ、ということでスライドで示した図には1から8まで番号が付いていますが、どの色が胆汁性嘔吐でしょうか? けっこう難しいですよね。
胆汁の分泌について考えてみると、肝臓で作られて、胆のうに貯蔵されて、十二指腸のVater乳頭に分泌されます。
分泌される部分より頭側で詰まってしまった場合は非胆汁性、胆汁が口に戻っていきませんので非胆汁性嘔吐になります。例えば、赤ちゃんの病気ですけれども肥厚性幽門狭窄症という病気では、原則として胆汁は吐きません。胆汁ではなくミルクを吐くのです。
分泌される場所よりも頭側の場合は、非胆汁性嘔吐になるんだよということです。
そして、Vater乳頭より足側、遠い側で詰まった場合は胆汁が口から上がってきますから胆汁性嘔吐になります。これが先ほどお話したように、ほとんどの腸閉塞でこのような症状になります。
次のスライドのどの色が胆汁性嘔吐か知っておいていただきたいのですが、基本的な知識として胃液は透明です。胆汁は黄色です。胆汁が小腸に長く留まると緑色になると決まっています。
ですので、黄色が混じってくるとどの色であっても胆汁である可能性があります。もちろん食べ物により黄色くなっていることもあるので問診は必要ですが、このスライドでいうとどの色でも胆汁性嘔吐の可能性があります。
ただ基本的には3番、4番のいわゆる黄色、濃い黄色以降の色の吐物はちょっと心配かなと思いますし、5番以降の色は明らかに異常と考えてコンサルテーションする必要があると考えてください。
そしてこの場合に大事なことは、聞き取りだけじゃなくて、どんなものを吐いたのかを自分で見ておく必要があります、例えば病棟であったらゴミ箱の中、吐いたものをティッシュで拭いたりとかして捨ててあるものを見て気づけると非常に良いケアができるんじゃないかなと思います。
続いては、嘔吐を見たら必ず除外するべき疾患について説明していきます。
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プログラム
【その1】
1.はじめに
■このセミナーで学んでいただきたいこと
2.頭部・神経・頸部のみかた
■ぱっと見て判断するには
■けいれんのない意識障害を評価するときは?
■「ぜいぜい」を3つにわける
■使える!かんたんなトリアージの質問
【その2】
3.見逃すとやばい疾患
■いかに早く気づけるか
■qSOFAの覚え方は?
■乳児GCSのみかた
■髄膜炎を疑ったら?
■初期症状・所見は?
■髄液検査について
【その3】
4.呼吸・肺のみかたと疾患
■呼吸数のみかた
■重症度・緊急度をはかるのに大事なのは?
■ヤバい疾患を見逃さない問診は?
■家に帰す時の2つの観察ポイント
【その4】
5.呼吸器系の重症
■気道緊急の診療~まずおさえるところは?
■重症肺炎の特徴・診療
■SpO2のはかりかた・みかた
■NPPVの適応と注意
【その5】
6.心臓のみかたと疾患
■PAT診断が大事!
■頻拍は深刻な状態のサイン?
■徐脈の方が実は怖い?
■どんな訴えで来る?
【その6】
7.循環器系の重症
■ECMOは突然に
■NPPV装着時の注意
■どんな時に心筋炎を疑うか
■心筋炎でよくみる所見は?
【その7】
8.腹部のみかたと疾患
■嘔吐・食欲不振はなんでもあり
■ヤバい嘔吐の性状は?
■嘔吐をみたら除外するべき疾患
【その8】
9.重要な腹部疾患
■胃腸炎を疑ったら…
■急性腹症の原因疾患
■急性虫垂炎・腸重積症の特徴
10.おまけ
■パっとしてハッとする?!
~児玉先生・笠井先生の舞台裏トーク
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講師が執筆された書籍の紹介
エビデンスに基づいた治療とケア&バシッと対応するための看護の視点満載 すぐに役立つ家族への説明シート付き
発行:2018年10月
B5判 288頁
4,400円(税込)
ISBN:978-4-8404-6544-1
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ワクチンを語る前に読んでおきたい
発行:2021年6月
A5判 176頁
2,200円(税込)
ISBN:978-4-8404-7570-9
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