第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
※上部のサムネイルをクリックして視聴できます。
講師
野崎暢仁
医療法人新生会総合病院高の原中央病院 臨床工学科MEセンター 技士長
<どんなセミナー?>
重篤な不整脈が止まらない…血圧がでない…ショック…
急性冠症候群の患者をみる、具体的な私の行動がわかる!
ACS(急性冠症候群)について、救急室・血管造影室・集中治療室の3つのシーンでコメディカル視点で重要ポイントを解説します。
配信|session1-3 まずやること1・2・3・4
ここまでのsessionのようにモニタリングが装着できれば、続いては12誘導心電図です。これは同時に進めていかなければならない3つの行動の3つ目となります。
12誘導心電図を測定して、次のスライドに出ているような心電図、ST上昇を認めれば、すぐに緊急カテーテル決定です。この状態をSTEMI(ST上昇型心筋梗塞:ステミ)といいます。
これはSTが上がっている状況、血管が詰まった状態、心筋梗塞であるということを示していますので、この時点で緊急カテーテルの実施が決定するということになります。
そしてST上昇を認めれば、連絡をするという次の行動に移らなければなりません。これはすごく大切なところです。緊急カテーテルになった、ではすぐに患者さんを入れていいのかというと、カテーテル室は準備が必要です。
清潔な物品を開けたり、薬品を準備したり、ということで少なくとも5分、10分は時間が必要になりますのでカテスタッフに早めに緊急カテーテルの連絡をしなければなりません。
また夜間であれば呼び出しの時間が必要になります。カテというのは多くの部署によって成り立っている治療ですので、関係各部署に忘れずに連絡するというのが大切です。
そして、できればスライドのような項目を確認していただきたいと思います。
患者さんの身長・体重、どこから心カテをするのかというシース挿入箇所、そしてシースのサイズ、どこを消毒するのかということが事前にわかっていればカテスタッフは効率的に早めに準備することができますので、この関係各部署への連絡の際にいっしょに伝えられれば準備がスムーズになると思います。
次に救急室で進めなければならないのは、ルート確保と採血です。この時点でルートを取りますが、このルートというのはカテーテルの穿刺部位によって変わってきます。穿刺部位についてはこの後でお話しさせていただきますが、例えば右手から緊急カテーテルをする場合にはルートは左手で取らなければならないということになります。
施行医が決まっていれば、ルートは右か左か、どこに取るのかということを確認したほうがよいでしょう。またそれと同時に採血も進めて、結果が緊急カテーテルの途中でも出るようにしておいていただければと思います。
では続いて、救急室でしなければならない行動の最後の項目になるのですが、鑑別すべき疾患ということで、「胸痛」というキーワードがあったとしてももしかしたら違う疾患かもしれないということを鑑別するという作業が必要となる、場合もあります。
そして“必要になるかも”しれない機材は、心エコーとCTです。
まず心エコーですが、もちろん心エコーをすればACS(急性冠症候群)のどこがダメージを受けているのか、どれくらいダメージを受けているのかということが評価できるのですが、ガイドラインを見てみると、明らかなSTEMI症例(STが上がっている症例)で、心エコーをするために、緊急カテーテルを遅らせてはならないということが明記されています。
なので、先ほどお伝えしたように、STが上がっている状況で緊急カテーテルは決定となります。
ただ、ちょっと確認しておきたいことがある場合には、心エコーが行われることもあります。それがスライドに示した機械的合併症と鑑別診断です。
急性冠症候群には機械的合併症というものがあるんですね。これも詳しくは次のsessionでお話ししますが、例えば左室自由壁破裂(LVFWR)といって心臓がカパッと割れてしまうようなたいへん重篤な状況であったり、心室中隔穿孔(VSP)、乳頭筋断裂というような、心臓という構造物が壊れてしまうような機械的合併症は、血管造影室では判断しづらい場合がありますので、あらかじめ心エコーで診断しなければならないこともあります。
また鑑別診断ですね。そのほかの疾患であるかもしれないということを心エコーで判断する場合があります。
胸痛を訴えて救急車で運ばれてきた患者さんのうち、非心臓疾患の場合が50%でが、STが上がっている心筋梗塞(STEMI症例)はどれくらいの割合かというと、けっこう少なくて5~10%といわれています。
そして40~45%はほかの心臓の疾患といわれていて、例えばSTが上がっていない急性冠症候群もありますし、もう胸痛が治まっている状態であったり、胸痛が起こったり起こっていなかったりする不安定狭心症(u-AP)の状態、心筋炎や心筋症、頻脈性不整脈、急性心不全などです。
では、残りの50%の非心臓疾患とは何かというと、私の印象で多いと感じるのは、例えば消化器疾患です。逆流性食道炎、食道痙攣、消化管の潰瘍とかそういったものにより胸が痛いと感じる方もおられます。
痛みの感じ方、痛みの場所というのは人によってさまざまですので、消化管の疾患というのも忘れてはいけない、鑑別すべき疾患になります。
そして、鑑別しなければならない疾患で、その鑑別された疾患、それも特に急がなければならない疾患が次のスライドです。
ここまで急性冠症候群も急がなければならないとお話ししましたが、それ以外に、急性大動脈解離、そして急性肺塞栓症も、症状としては胸痛を訴える方もおられます。
急性冠症候群なのか、急性大動脈解離なのか、急性肺塞栓症なのか、症状だけではなくそのほかのパラメータによって鑑別しなければならない、命にかかわる疾患なので急がなければならないということになります。
そのなかでも急性大動脈解離はStanford A型、つまりは上行大動脈の血管の乖離ということもありますが、このときに起こりえる合併率は5%なんですが、大動脈解離によって右冠動脈の入り口が塞がってしまうということもあります。
このときには、Ⅱ、Ⅲ、aVFという12誘導心電図でSTが上がった状態が認められるということになりますので、心電図だけではなくて、症状の訴えというのも大切なパラメータとなります。
このsession1の最初でお話しさせていただきましたが、胸が痛いだけではなくて「ほかにどこか痛くないですか?」であるとか、「痛みはここだけですか?それとも移動しますか?」と確認します。「移動する」というキーワードであったり、「背中が痛い」というキーワードが出てくれば大動脈解離を疑わなけばならないということになります。その場合には、先ほど血圧のときにもお話ししましたが、四肢の血圧測定に加えてCTの検査が必要になってきます。
さて、ここからはカテ室に移動となります。その際、患者さんだけでいいのか? 持ち物は?ということでお話をしていきます。
ログインすると「カテ室に移動する際の持ち物」の解説までご覧いただけます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。
プログラム
session1 救急室
慌てないための予測からの行動
○1-1 (10min)
イントロダクション
・何を準備する? 否! 何で準備する
・胸痛患者さんに起こりうる重症不整脈 ほか
○1-2 (14min)
患者さんの手足を触るだけで重症度判断ができる!
・ノーリア・スティーブンソン分類をしっかり解説
・フォレスター分類と治療 ほか
○1-3 (11min)
まずやること1・2・3・4
・12誘導心電図
・連絡~カテスタッフを招集 ほか
session2 血管造影室
緊急カテといつものカテの違い
○2-1 (20min)
準備するものと薬剤
・救命機材の準備~大切なのは使うトレーニング
・救命薬品の準備~血圧低下、抗不整脈 ほか
○2-2 (15min)
緊カテのここイチバンの緊張
・DTBTを14分短縮できた理由
・緊カテ中に欲しい情報~クレアチニンとBUN ほか
session3 集中治療室
PCIだけでない術後起こりうる合併症
○3-1 (34min)
予後のために知っておきたい情報
・STEMI症例の予後に影響する因子
・GRACE ACS リスクスコア ほか
おまけsession
○心電図のお勉強をしましょう!(10min)
・漫画で学ぶ① 心筋虚血と心電図変化
・漫画で学ぶ② 解剖と心電図変化
・語りで学ぶ③ 虚血性心疾患のST-T変化の特徴は
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