第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
六車龍介
兵庫県立がんセンター薬剤部/薬剤師

大東敏和
広島大学病院薬剤部/薬剤師

阿部真也
つなぐ薬局足立/薬剤師

<どんなセミナー?>
糖尿病をもつ患者が不安・負担に感じる投薬・服薬方法やその注意点を伝えるとき、あるいは質問されたとき、どんな知識を伝えて、どう行動すれば患者が理解し、実践できるでしょうか?
・患者があなたに求めているのは「正しい答え」と「納得感(安心感)」です
・患者が納得するためには根拠と真摯な姿勢、患者の気持ちを考えた言葉が必要です
・本セミナーでは答えと根拠と伝え方を学べるので、自信もつくし、患者の納得感も得られるはずです!


配信|Q.患者からの質問「食前の血糖値が低いけど いつもどおりの単位をインスリン注射しても大丈夫?」


今回は患者さんからの質問編として、血糖値とインスリン注射の考え方をテーマとしました。

患者さんからの「食前の血糖値が低いけどいつもどおりの単位をインスリン注射しても大丈夫?」という質問です。

一見、難しい知識が必要そうな質問ですが、患者さんの視点から基本的な考え方をわかりやすく解説したいと思います。

糖尿病のくすりQ&A①01


まず事例を提示します。

2型糖尿病のある患者さん。

ヒューマログ®注(超速効型)を朝食直前6単位、昼食直前6単位、夕食直前6単位で打っています。

ランタス®XR注(持効型)を就寝前に10単位打っています。

朝食前の血糖値が75mg/dLと低血糖の自覚症状はないですが少し低いという状態です。

患者さんから「血糖値が低いけどインスリンをいつもどおり打ってもいいですか?」と質問されました。

それを聞いた看護師が「先生、朝食前の血糖値が75mg/dLと低いですが、インスリンをいつもどおり打ってもいいですか?」と医師に確認しました。

医師は「食事は食べられそうですか?」と確認しました。

このような会話は現場でよくあると思います。

いま血糖値が低いからインスリンの話をしているのに、医師からの質問(回答)が何で食事なの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

糖尿病のくすりQ&A①02


このようなケースの場合、どのように考えればいいか解説していきます。

まずインスリン注射を行う患者さんの一連の行動は、血糖測定、インスリン注射、そして食事となります。

特に血糖測定とインスリン注射が行動としてはペアになるかと思います。そのなかで一つの数値が出てきます。

糖尿病のくすりQ&A①03


ただ、インスリン注射・食事・血糖値の関係を考えると、インスリン注射と食事がペアになります。

先に測定した血糖値は、その前に打ったインスリンと食事の結果として数値に表れます

行動としては、血糖値を測定したうえでインスリン注射を行うので、インスリン注射をするとき、本来重要となる食事よりも血糖値の数字が気になるというのは正しい心理だと思いますが、ここは食事量や内容に注意しておかなくてはなりません。

糖尿病のくすりQ&A①04


患者さんの1日の流れは次のスライドのようにつながっていきます。朝、昼、夕、寝る前、また朝、昼と続いていきます。

インスリン注射前の血糖値が気になるのはよくわかりますが、インスリン注射と食事の結果が、次の食事前の血糖に反映されていきます

血糖値が高いから打つ、低いから打たない、ではなく、インスリン注射はあくまでもこれから食べる食事のために打つことが原則です。

朝の血糖値は、寝る前に打った持効型の基礎インスリンを反映します

一方の入院中にしばしば行われるスライディングスケールは血糖値を是正することが目的ですので、血糖値に応じて少量のインスリンを打ちます。

糖尿病のくすりQ&A①05


そこで冒頭の「血糖値が低いけどいつもどおりインスリンを打っても大丈夫ですか?」の質問です。

ポイントは、インスリンをいつもどおり打つか打たないかは、このあといつもどおりの食事ができるかが重要となります

この考え方はインスリン治療においてとても大事で、「責任インスリンの考え方」といった表現をします。

糖尿病のくすりQ&A①06


ただ次のスライドに記載したような疑問も同時に出てきます。

●今、血糖値が低いときの対応はどうしたらよいの?
●インスリン量の調整はどうするの?
●朝食前にインスリンを打たなかったらどうなるのか?

ということです。

血糖値が低いときの対応は、まず低血糖時の対応をきちんとすることです。血糖値70mg/dL未満もしくは血糖値80mg/dL未満で低血糖症状があるときは、低血糖の対応を食事の前にしましょう。そうすることがいちばん安全かと思います。

インスリン量の調整はどうするの?については、朝食前の血糖値を下げすぎないためには、就寝前のランタス®XR注を減量することで対応できます。

朝食直前のインスリンを打たなかったらどうなるのか?は、昼食前の血糖値が必然的に高くはなってしまいます。

またインスリン注射を行う患者さんの不安を解消することも大事です。

血糖値が低いなかでいつもどおりインスリンを打つのは、患者さんとしては心配だと思います。薬剤師に相談してもらい、薬剤師から説明させていただくでもよいと思います。

ただ食べる量がわからないときは、超速効型インスリン製剤を食直後に打つということも一つの方法です。

糖尿病のくすりQ&A①07


ここでもう一度冒頭の患者さんの質問と、看護から医師への確認をスライドで見てみましょう。

この会話で、看護師から「先生、朝食前の血糖値が75mg/dLと低いですが、食事はいつもどおり食べることはできそうです。インスリンをいつもどおり打ってもいいですか?」と確認し、医師からは「お願いします。就寝前のランタス注を減量するようにしますね」と返ってきました。

このような会話になれば理想的かなと思います。

抗がん剤治療で食事量が減少する患者さんもいますので、こういった場合にいつもどおりインスリン注射を行うと低血糖になる可能性があります。

食事摂取が難しいようであれば、食前の血糖値にとらわれず、インスリン投与量を減らすことを検討しましょう。

糖尿病のくすりQ&A①08


まとめです。

●インスリンと食事がペアであることを意識ましょう。
●血糖値が低いときは、低血糖時の対応を行うことが大事です。


患者さんには「先生の指示だから大丈夫」とだけ伝えるのではなく、インスリンと食事と血糖値のアルゴリズムを説明すると、患者案は安心、納得してインスリンを打つことができます。また、患者さん自身でも適切なインスリン量を理解することができるようになります。

食事量が不安定なときに行うスライディングスケール法については、「Q.食事を投与した後の血糖の予測がつきません」を参照してください。

糖尿病のくすりQ&A①09



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プログラム

Q たくさんのインスリンが売られていて違いがよくわかりません! インスリンの種類について教えてください!
Q クイズ「患者さんが持参した自己注射製剤の中でどれがインスリン製剤かわかりますか?」
Q スキルアップ編「経験豊富な薬剤師がインスリン初回手技指導する際のポイントは何ですか?」
Q インスリンの空打ち、本当に必要ですか?
Q 気温が高い場合も使用中のインスリンは室温保管ですか?
Q 薬を投与した後の血糖値の予測がつきません…→責任インスリンやターゲットとなる血糖値などを解説します
Q 患者からの質問「食前の血糖値が低いけど いつもどおりの単位をインスリン注射しても大丈夫?」
Q 患者からの質問「インスリン製剤って一度はじめるとやめられないんですか?」
Q 患者からの質問「退院後、お酒を飲んでもいいですか?」
Q 退院後、インスリンを自分で打つことが難しそう… 家族が打ってもいいの?
Q 素朴な疑問「ヒューマリンR注バイアル製剤を使用する際 インスリン専用注射器じゃないとダメですか?」
Q 素朴な疑問「血糖値が高い。医師から輸液内にヒューマリンR注の混注指示あり。点滴中の輸液に追加しようとしたら先輩看護師に怒られた。なぜ?」
Q インスリンのインシデントを起こしたくない!! どこに注意したらいい?

『糖尿病のくすりQ&A②』では、経口血糖降下薬・シックデイ・服薬管理にまつわるギモンを、『糖尿病のくすりQ&A③』では、検査前後の服薬・高齢患者・がん患者にまつわるギモンを取り上げています。詳しくは下記をご覧ください!

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糖尿病のくすりQ&A②

糖尿病のくすりQ&A② 経口血糖降下薬/シックデイ/服薬管理編

プログラム

Q 経口血糖降下薬の種類が多すぎます!ポイントを教えてください
Q 日本で最も使われている経口血糖降下薬って?
Q 糖尿病治療薬の中には血糖値を下げる以外に付加的効果があるって聞きます。どんな効果があるのですか?
Q これだけは知ってほしいSGLT2阻害薬とは?
Q これだけは押さえておきたい糖尿病治療薬の副作用とは?
Q 素朴な疑問「低血糖リスクの高い薬と低い薬について教えてください!」
Q なぜ低血糖は起こしちゃいけないの?
Q シックデイのときに特に気を付ける必要がある薬は?
Q 患者さんの食事量がいつもより少ない。いつも通り薬は飲んでもいい?
Q 食直前服用の薬を食事前に飲み忘れた!どうしたらいい?
Q 知っておきたい知識「糖尿病治療薬を安易に一包化するとダメなのはなぜですか?」
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糖尿病のくすりQ&A③ 糖尿病のくすりQ&A③ 検査前後の服薬/高齢患者/がん患者編

プログラム

Q 高齢者糖尿病の注意点とは?
Q 在宅医療に移行する患者さん、何に気をつけたらいいですか?
Q 知っておきたい知識「検査時の糖尿病治療薬の対応は?(絶食時,造影剤を使う検査,PET検査)」
Q 検査で朝の飲み薬はスキップ。検査は午前中に終了。スキップした薬はどうする?
Q 知っておきたい知識「絶食は手術当日からなのに糖尿病治療薬を手術2日前から中止しているのはなぜ?」
Q がん患者さんの血糖マネジメントどう考えたらいい?
Q 糖尿病のある人ががん治療中に注意することは?①主に血糖値が上がる状況について
Q 糖尿病のある人ががん治療中に注意することは?②主に血糖値が下がる状況について
Q 糖尿病のある人ががん治療中に注意することは?③がん治療を継続するために注意したいことは?
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