第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
竹林 正樹
青森大学社会学部客員教授

<どんなセミナー?>
人に寄り添い、人を動かすナッジ!
ナッジ研究の第一人者・竹林正樹先生によるスペシャル講義
各種メディアで大活躍の竹林正樹先生が、津軽弁で楽しく解説!
「言うことを聞いてくれない」「何回言っても変わらない」
そんなモヤモヤも、ナッジ理論を学べばスッキリ解決!


配信|CHAPTER 3 医療現場でどんなナッジが使える?


それでは第3部を始めていきます。
医療現場ではどんなナッジが使えるのでしょうか。

まずは「消毒液利用促進のナッジ」を紹介します。

ナッジで人を動かす01


ある保健所では、ほとんどの利用者が消毒液を使わずに素通りしていきました。保健所の利用者ですので消毒液の必要性はわかっています。

うっかり通り過ぎる人に対して、目立つように、床に、消毒液に向けて矢印を書いてみました。

その結果、消費量が1.6倍に増えました

ナッジで人を動かす02


次の週は、「消毒液の消費量を計測しています」と貼り紙をしてみました。人間、見られていると思うと正しい行動をしたくなるものです。

最初の週に比べて1.7倍に増えました

ナッジで人を動かす03


さらに次の週は消費量をグラフにして貼り出しました。人間、ほかの人がきちんと使っているとわかると、自分も使ってもいいかなという気持ちが起きるものです。

最初の週に比べて使用量は1.9倍に増えました

ナッジで人を動かす04


次は「食行動促進のナッジ」です。バランスの良い食にするためのナッジを紹介します。

ナッジで人を動かす05


どうしてもお腹が空くと現在バイアスが強くなって、行動が直線的、衝動的になってきます

ナッジで人を動かす06


東京にある台東病院の中にあるコンビニで、無糖飲料(体に良いドリンク)を目の高さに、加糖飲料(砂糖たっぷりのドリンク)をちょっと遠くに配置しました。これだけです。

ナッジで人を動かす07


その結果、総売上が16%増えて、内訳を見ますと無糖飲料が増えて、加糖飲料が減りました。

これは患者にとってもうれしい、売店にとってもうれしい、医療者にとってもうれしいですし、保険料を払っている住民にとってもうれしい、みんなが得するシステムとなりました。

ナッジで人を動かす08


次は「減量促進のナッジ」です。

ナッジで人を動かす09


ホテルの客室清掃業務というのはとても重労働なものです。しかし、アンケートを取ってみたら従業員の67%が定期的な運動なしと回答しました。あまり自己効力感の高くない集団のようです。

ナッジで人を動かす10


そこで、従業員を2つのグループに分けて、Aグループには運動のメリットを教えたうえで「あなたの日常業務は〇kcalの運動に匹敵しますよ」と伝えました。

Bグループには教育のみです。

ナッジで人を動かす11


4週間後、Aグループは0.8kgの減量に成功し、Bグループは変化なしでした。4週間で0.8kgというのはかなり良い感じの減量ですよね。

なぜAグループだけ高い効果が出たのでしょうか。

ナッジで人を動かす12


これは、「あなたはもう少しで目標達成ですよ」と伝達したことがナッジになって、身体活動量を増やした可能性があります。

ナッジで人を動かす13


例えば、いままで1階から3階まで行くときにエレベーターを使っていた人たちが階段を使うようになったり、あるいはバスタブの掃除をするときに、いままでだったら洗剤をかけてサーっとシャワーで流していた人がゴシゴシ擦るようになったり、というように少しずつ活動を増やした可能性があります。

ナッジで人を動かす14


ここで見られる認知バイアスは「目標勾配仮説」です。目標に近づくほどやる気が出る心理です。

ナッジで人を動かす15


例えば、同じくスタンプを3つ集めるという場面では、Aのスタンプカードを渡されたグループよりも、Bのスタンプカードを渡されたグループのほうがものすごい勢いで集めたくなるものです。

自分はここまで到達していて、ゴールまであとわずか、ということが可視化されるとラストスパートをかけたくなります。

ナッジで人を動かす16


登山でもそうですよね。0合目から1合目まで踏み出すのはとてもしんどいです。しかし、9合目まで来たとわかると頂上までラストスパートしたくなります。

ナッジで人を動かす17


なので、自己効力感の低い相手には、小さなゴールを設定し、ゴールまであと少しと伝えると、象(直観)は高まる可能性が高まります

ナッジで人を動かす18

次は「禁煙促進のナッジ」を紹介します。

ナッジで人を動かす19



ログインすると動画で「禁煙促進のナッジ」の解説まで聴けます。また、ご購入いただくと「ナッジ」の理論について理解を深めるなどすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。







プログラム

(1)なぜ健康の大切さをわかっているのに実践しない?
ナッジ理論に基づく設計
ナッジとは、認知バイアスに沿った行動促進アプローチ
人は認知バイアス(直感の持つ特性)に影響される
直感は象、理性は調教師
話をするなら相手の疲れていない時間帯に
話をするなら相手の受入態勢を整えてから:プライミング(先行刺激)効果
話をするなら最後を美しく終える:ピークエンドの法則

(2)認知バイアスとどう付き合えばよい?
行動を阻害する認知バイアス:現状維持バイアス、現在バイアス
行動を促進する認知バイアス:認知容易性バイアス
阻害するバイアスを排除し、促進するバイアスを味方にすれば、望ましい行動につながる
直感的に動きたくなるシンプルな設計が重要

(3)医療現場でどんなナッジが使える?
消毒液利用促進のナッジ
食行動促進のナッジ
減量促進のナッジ
禁煙促進のナッジ
イベント参加促進のナッジ
残業抑制のナッジ
配薬ミス防止のナッジ

(4)個人ワークをやってみよう
個人ワーク:高齢者に介護予防開始を促すには?
相手に重大な決断を切り出す時のナッジ
判断の大半は直感が担当するので、直感に訴えることが必要
直感の特性に沿って動かす設計がナッジ

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