第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
六車龍介
兵庫県立がんセンター薬剤部/薬剤師
大東敏和
広島大学病院薬剤部/薬剤師
阿部真也
つなぐ薬局足立/薬剤師
<どんなセミナー?>
糖尿病をもつ患者が不安・負担に感じる投薬・服薬方法やその注意点を伝えるとき、あるいは質問されたとき、どんな知識を伝えて、どう行動すれば患者が理解し、実践できるでしょうか?
・患者があなたに求めているのは「正しい答え」と「納得感(安心感)」です
・患者が納得するためには根拠と真摯な姿勢、患者の気持ちを考えた言葉が必要です
・本セミナーでは答えと根拠と伝え方を学べるので、自信もつくし、患者の納得感も得られるはずです!
配信|Q.知っておきたい知識「糖尿病治療薬を安易に一包化するとダメなのはなぜですか?」
今回は、知っておきたい知識編として、糖尿病治療薬の一包化をテーマにしました。一包化は通常メリットが大きいですが、糖尿病薬の場合は注意が必要となります。その理由を含めてわかりやすく解説したいと思います。
一包化とは、次のスライドのイラストのように薬剤を用法ごとに分包する調剤方法です。
そのメリットとして、
・用法、用量を間違わない
・指先を動かしづらい人の負担が減る
・PTP包装シートの誤飲を防ぐ
といったことが挙げられます。
高齢者では、処方薬剤師の増加や服薬管理能力の低下などの条件のなか、服薬アドヒアランスの低下が懸念されます。
一包化というのはとても便利だと思われる方も多いと思いますが、少し立ち止まって考えてみましょう。
糖尿病治療薬は食事摂取量に応じて医師の指示に従い減量・中止する必要があります。つまり絶食とか、シックデイといったときですね。
シックデイ時の経口糖尿病治療薬の減量・中止の目安ですけれども、詳細は阿部先生の「Q シックデイのときに特に気を付ける必要がある薬は?」を参照してください。
一般的な考え方として、シックデイ時にはα-GI、ビグアナイド薬(BG薬)、SGLT2阻害薬は中止します。
また食事量が3分の2未満であれば、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬も中止します。SU薬、グリニド薬は半量にします。
食事量が3分の1未満であれば、SU薬、グリニド薬も含め、すべての経口尿病薬は中止になります。
つまり、一包化した薬剤のなかから中止した薬剤を見つけなければなりません。では次のスライドでは「どの薬剤が糖尿病治療薬?」ということで、一包化した薬剤から糖尿病治療薬を把握する難しさを一緒に考えてみようと思います。
次のスライドの一包化の図には下記の薬剤が入っています。
・アムロジン®錠5mg
・ブロプレス®錠4
・アマリール®0.5mg錠
・メトグルコ®錠250mg
・リピトール®錠10mg
・バイアスピリン®錠100mg
・ネキシウム®カプセル20mg
ブロプレス®錠4、アムロジン®錠5mgは刻印がされているので、見ればよくわかるかと思います。
薬剤は印字されているとわかると思うのですが、カプセルのネキシウム®もなんとなくわかるかと思います。
そのほかの薬剤についてはよくわからないというのが現状かと思います。
実際には、アマリール®0.5mg錠、メトグルコ®錠250mgはそれぞれ赤丸で囲った薬剤なのですが、例えばシートの薬剤であればどちらの薬剤もパッと見てわかると思います。しかし一包化することで判別がかなり困難になります。そのため、とりあえずすべての薬剤が中止されたり、誤った薬剤を中止するという可能性が出てきます。
シックデイ時、患者は一包化した薬剤のなかから、糖尿病治療薬を適切に認識して対応しなければなりません。
服薬支援のポイントしては、「①患者本人が対応できるか確認する」ということ。まずはこれがいちばん大事です。これが難しい場合は、「②ご家族や訪問看護師に支援してもらえるように情報提供する」となります。さらにそれでも難しい場合、「③糖尿病治療薬だけは一包化せず、PTP包装シートで管理することを検討」することが有用になります。
同じ成分の薬でも識別性は異なります。私たちが以前に調査した結果ですが、2021年3月時点で承認・販売されている経口糖尿病薬406品目30成分を調べたところ、印字されているもの、刻印されているものというのが次のスライドのような割合でした。
やはり刻印の薬剤が圧倒的に多いのが現状です。印字されていればとてもわかりやすいのですが、そういった薬剤はまだまだ少ないです。
特にSU薬は低血糖のリスクがあるので注意が必要な薬剤ですが98%が刻印です。一部の薬剤は印字ですが、その一つが大原薬品工業さんが製造しているグリメピリドの錠剤で、これならわかりやすいかなと思います。
まとめです。
薬局薬剤師に相談しようということで、一包化はアドヒアランスを上げるのに有用な手段です。一つ知っておいていただきたい情報として、保険薬局では調剤時だけでなく、調剤後の薬剤についても一定の条件を満たせば一包化することができます。このことは看護師さんにあまり知られていないかもしれません。
一方で、糖尿病薬は識別性に含めて一包化するかしないか判断が必要になります。服薬状況に問題がある患者がいたら、薬局薬剤師に一度連絡していただければと思います。
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