事例で学ぶ! 高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと|藤山 美由紀




第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーの一部をメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
藤山 美由紀
南医療生協かなめ病院 医療介護相談室 / 脳卒中リハビリテーション看護 認定看護師 / 社会福祉士

<セミナーを受講するとこんなことが学べます>
・高次脳機能障害のとらえ方
・脳の解剖と機能
・病棟でよくみる症例から学ぶ 看護計画と具体的なアプローチ
・脳を損傷するということ ~精神的な支援
・脳を損傷するということ ~家族への支援と関連職種との連携
詳細は下記プログラム欄をご覧ください。


配信|CHAPTER 4:病棟でよくみる症例から学ぶ看護計画の立て方とアプローチ


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと01

高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと02


病棟でよくみる症例から学ぶ看護計画の立て方とアプローチ、ということで、臨床でよく出遭う患者さんの例を挙げて、看護計画の立て方、症状の説明などもしていきますね。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと03


まず最初、脳損傷後の神経疲労の状態の患者さんです。どんな臨床像かというと、例えばこんな感じです。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと04


ボーっとして決められた訓練時間の途中で疲れてしまい、効果的な訓練が行えない。

食事や訓練が終わるとすぐにベッドに横になる。

訓練時間になってもベッドに横になっているため、時間を伝えるが「はい」と返事をしたまま行動しようとしない。

脳を損傷すると、こういう症状の患者さん多いんですけども、これを専門用語で「神経疲労」って言います。体が疲れているんじゃなくて、神経が疲れているということなんです。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと05


イラストで説明してみますと、左側、10人で働いているのが正常な脳なんですけど、3人「退職」してしまいました。30%損傷して、7人で 働いている脳になっちゃったんですね。少ない人数で慣れない仕事をしなくちゃいけないということなんです。

損傷した部位をカバーするように、残った周囲の脳細胞が総動員で働くことによって、脳が疲労しやすくなるということなんです。

通常の職場であれば、3人辞めちゃったら3人の補充が入るじゃないですか。でも、脳の細胞は再生されない、されにくいと言われているので、3人の補充がないんですね。補充がないままで、ずっとこのままいかなきゃいけないということなんです。当然、疲れちゃいます。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと06


よく見かけるのは、車いすに乗っているんだけど、突っ伏している人がいますね。これみんな「神経疲労」と思っていただいていいんですけれども、ほかにも患者さんを観察していると見えてくるものがあります。みなさん疲れるとどうなりますか? ときには眠たくて目を閉じちゃったり、人によってはイライラしてくる。これも実は、注意障害の一種になります。

注意が長続きしない、疲れやすいという症状の一つなので、これ実は高次脳機能障害です。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと07


じゃあ、どんな看護計画を立てるか?

まず、患者の神経疲労について把握する。
①患者さんが発する疲労時のサイン。どんなときに、どういう症状なのか、どのくらいの時間でこういいうふうになるか
②患者が疲労したときの活動の量と質
何していたときに、どんなふうに疲労するか
③疲労から回復するために必要な時間
ちょっと一回休んで、どのくらいベッドに横になったら復活できるか

こういったところは、最初は丁寧にみてあげないといけない。とくに脳損傷してすぐの急性期の状態は、ほとんど眠っている状態のときがあります。これは眠ってるんじゃなくて、疲れて目を閉じているというときもあるので、一種の疲労時のサインなんですけど、そういうときに無理やり起こして車いすに乗せていても、突っ伏して眠っちゃうことがあるので、適宜(休憩)臥床させて、また短時間起こすということを繰り返して、耐久性をつけていくところが大事になってきます。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと08


そして、患者の活動が円滑に行えるよう規則正しい生活リズムを整える。患者さんがまず疲労しないようなスケジュールを組んであげないといけないんですね。

たとえばリハビリをやって、「ちょっと疲れたから僕横になります」って自分でできる人だったらいいです。でも、高次脳機能障害の患者さんってどうですか? それができないので疲れちゃうので、どんなふうなスケジュールを組んだら、患者さんが1日リハビリをして過ごせるかを考えないといけないですね。

そして、患者が疲労を自覚する前に休憩させる。「疲れたから休む」のではなく、疲労の回復に時間がかかるから、疲れる前に休ませる。「15分休憩しましょうか?」といったように時間で区切って休憩させます。これは急性期の状態のときはとくに、横にしてまた起こす。「ちょっとベッドに横になりませんか?」と、疲れる前に休ませることが大事になってきます。


高次脳機能障害患者の観察ポイントと支援者として大切なこと09


そして、徐々に患者の活動時間を増やす。ずっと寝てばっかりいたら、リハビリにならないので、「少し起きませんか?」と声掛けをして、 自分の患者さんがどれくらい休んだらまた活動できるかをアセスメントして、徐々にその時間を増やしていくんですね。



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プログラム


1 高次脳機能障害のとらえ方 前編
高次脳機能障害を負った、「Aさん43歳(低酸素脳症)」「Bさん34歳(頭部外傷)」。今後の経過は誰がどのようにフォローしてくのでしょうか? こういった患者さんが全国にたくさんいるのです。

・イントロダクション
・脳損傷で起こるさまざまな症状
・事例 Aさん 43歳 低酸素脳症
・事例 Bさん 34歳 頭部外傷

2 高次脳機能障害のとらえ方 後編
高校1年生のとき交通事故にあった「Cさん17歳(頭部外傷)」、症状が軽度だから、検査が正常範囲だから、社会生活に支障がないとは限りません。発症前・受傷前の状態と比べることが重要です。
そして、ここでは高次脳機能障害に関する社会制度や診断基準、定義をおさらいします。

・事例 Cさん 17歳 頭部外傷
・高次脳機能障害支援に関する制度
・高次脳機能障害の診断基準、定義
・認知症と似ているところ、非なるところ

3 脳の解剖と機能
脳は損傷する部位によって、どうして多種多様な症状を呈するのでしょうか? ここでは脳の解剖をおさらいし、「脳の側性化」という特徴について解説します。また、高次脳機能障害のアセスメントの難しさについても考えます。

・脳の側性化とは?
・「鍵の話」から“脳のスゴさ”を知る
・神経線維(つながり)が存在する
・交連線維とダイアスキーシス

4 病棟でよくみる症例から学ぶ 看護計画と具体的なアプローチ 前編
臨床現場でよく出会う症例を通して、「神経疲労」「見当識障害」「記憶障害」「遂行機能障害」「易怒性」「障害の否認」について、各症状と看護計画の考え方を解説します。

・① 脳損傷後の神経疲労の状態の患者
・② 見当識障害があり混乱する患者
・③ 記憶障害がありスケジュールが立てられない患者
・やってはいけないNG集

5 病棟でよくみる症例から学ぶ 看護計画と具体的なアプローチ 後編

・④ 遂行機能障害があり段取りや要領が悪い患者
・⑤ 易怒性があり暴言・暴力が目立つ患者
・⑥ 障害を否認して訓練を行わない患者

6 脳を損傷するということ ~精神的な支援 前編
高次脳機能障害では、発症前と同じようにできないことで、役割の変更を余儀なくされます。そのような状態にある患者さんへの「精神的な支援」について解説します。 また、藤山先生にとって忘れられない患者さん、「Dさん55歳(左被殻出血)」の症例を通じて、言葉と行動の些細な変化に込められた意味を紐解きます。

・人にとって悲しいのは役割を失うこと
・事例 Dさん 55歳 左被殻出血
・Dさんの言葉の変化、行動の変化

7 脳を損傷するということ ~精神的な支援 後編
「心の傷」「心の痛み」「病気になるということ」……といった精神的なダメージをどのようにとらえればよいか、先人の言葉から解説します。そして、「わたしたちの存在」についても考えてみます。

・自己認識の段階が上がるにつれて
・募る不安と傷つく自尊心への対応方法
・ケアの深遠さ
・Dさんのその後

8 脳を損傷するということ ~家族への支援と関連職種との連携
家族は「心のよりどころ」であり、そばにいるだけで、声を聴くだけで安心する存在です。家族を支援することが、患者の高次脳機能障害を回復させます。家族を一番の支援者にできるようなかかわりができるといいですね。

・家族の力
・「僕が彼女の安定剤になります」
・家族への支援と葛藤
・一人ひとりの人生に思いを馳せる
・講義のまとめ

講師のそのほかのセミナー