第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムの一部をメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師・プランナー
立野 淳子
小倉記念病院看護部 クオリティマネジメント課 課長/急性・重症患者看護専門看護師

講師
鎌田 未来
東京ベイ・浦安市川医療センター ICU・CCU・SCU/急性・重症患者看護専門看護師

西村 祐枝
岡山市立市民病院 副看護部長/急性・重症患者看護専門看護師/クリティカルケア認定看護師

田戸 朝美
山口大学大学院医学系研究科 保健学専攻臨床看護学講座 准教授/急性・重症患者看護専門看護師

<セミナーを受講するとこんなことが学べます>
1 なぜ「家族ケア」が必要か
2 家族ケアに役立つ理論とスキル 危機理論・危機モデル
3 家族ケアに役立つ理論とスキル 意思決定モデル・ACP
4 家族ケアに役立つ理論とスキル コミュニケーションスキル
5 ディスカッション① 医療者と家族の認識のギャップをどのように埋めるか?
6 ディスカッション② 家族からの怒りの感情にどのように対応する?
7 ディスカッション③ 重症患者家族へのケア ~ニード論をもとに~


配信|CHAPTER 2:危機の考え方


「家族ケアに役立つ理論とスキル」ということで、今回は危機理論と危機モデルを取り上げたいと思います。 まず、危機の考え方について理解しておくことがとても重要です。

救急・ICUナースのための家族ケア01

スライドのイラストをご覧ください。 たとえば、大腸がんを告知されたという症例をもとに考えてみたいと思います。 大腸がんを告知されたということは、その患者さんにとってとてもストレスとなる要因です。

救急・ICUナースのための家族ケア02

たとえばですが、自宅に戻ったAさん、まさか自分ががんになるなんて信じられないというふうに思い、そして食べられない、眠れない、イライラする、もしくは落ち込む、大腸がんを告知されたストレスに対して、さまざまなストレス反応が現れることになります。

救急・ICUナースのための家族ケア03

まさに、この状態が危機の考え方で、右に行くのか、左にいくのか、この分岐点にいるというのが危機の考え方になります。

救急・ICUナースのための家族ケア04

例えばAさんが、大腸がんを告知されたことを考えないようにして閉じこもる、このような対処をした場合には、心の安定性というのは取り戻せずに、さらなる危機へと向かうかもしれません。

救急・ICUナースのための家族ケア05

一方で、このような精神的に不安定な状況におかれたAさんが、奥様に話を聞いてもらったり、自分が告知された病気について調べてみたり、そしてどのような治療があるのか医師に尋ねる、このようなさまざまなアプローチを用いて対処することによって、心の安定性を取り戻す、危機から回復するかもしれない。まさに右に行くのか、左に行くのか、この分岐点にいるのが危機という考え方になります。

すなわち、危機とはそこにとどまり続けるものではなく、適応への出発点、転換点としてとらえるのが正しい考え方です。わたしたち一般的には、危機というと、悪いことの終着点のように捉えますが、本来の考え方は悪い出来事の終着点ではなくって、さらに悪化する方向に行くのか、それとも上手く適応することによって心の安寧を取り戻すのか? その分かれ道にいるんだというのが、危機の正しい考え方になります。

そして人は心理的危機状態に陥ってしまったとき、本来備えている適応行動として「対処機制」を用いて心理的な安定を維持する。このような働きを人間は持っているということになります。

ここでいう「対処機制」については、後ほど詳しくお話をしますけども、先ほどのイラストですと「妻に話を聞いてもらう」ですとか「病気について調べる」このようなことを「対処機制」というふうに言います。

救急・ICUナースのための家族ケア06

結果として、心理的危機状態に陥る前よりも成長を促進させる可能性がある。これはなぜかというと、"危機"という自分にとっては大きなストレスにさらされて、心の状態がいったん不安定になるんですけれど、「対処機制」を用いて心のバランスを取り戻すことによって、その病気を告知された前、ストレスにさらされた前よりも、物事の考え方を変えてみたり、そういった成長したところに到達している。このような考え方が危機の正しい考え方になります。



ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。







▼プログラム


1 なぜ「家族ケア」が必要か (5分)
・イントロダクション
・なぜ家族ケアが必要か?
・重症患者家族が抱える多重ストレス
・ICUでの家族ケアが家族の未来にも影響する

2 家族ケアに役立つ理論とスキル 危機理論・危機モデル (25分)
・危機の考え方
・アギュララの危機モデル
・どうして臨床現場でアギュララのモデルが活用しやすいのか?
・活用事例で理解を深めよう
・step1 情報収集/step2 アセスメント
・step3 問題の明確化/step4 目標と計画立案

3 家族ケアに役立つ理論とスキル 意思決定モデル・ACP (28分)
・3つの意思決定方法のタイプ
・SDM(共同意思決定)のプロセス
・救急・ICUにおいて意思決定支援がなぜ難しいのか?
・患者の自己決定を支援するためのポイント
・家族と話し合いをするときのポイント
・SDMにおけるACP(アドバンス・ケア・プランニング)の位置付け
・ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の7つのエレメント

4 家族ケアに役立つ理論とスキル コミュニケーションスキル (18分)
・「告知をする」から「悪い知らせについて話し合う」へ
・治療のゴールを決めるための REMAP
・看護師でも活用できる REMAP
・感情に対応するための NURSE
・コミュニケーションスキルは後天的に身につくスキル

<ディスカッションパート>
*後半は立野先生と救急・ICUのエキスパート(実践者/看護管理者/教育者)それぞれのお立場から、症例ベースで、患者ご家族にとって重要なことをどうとらえていくか、私だったらこうかかわる、こういうかかわりもできたのでは……、などをディスカッションしていただき、受講者が今後のケアに役立てられる提案をいただきます。

5 ディスカッション① 医療者と家族の認識のギャップをどのように埋めるか? (15分)
【症例紹介:鎌田 未来 東京ベイ・浦安市川医療センター】
・医療者と家族の認識に乖離がある!
・誤認にもとづく家族の訴え…「なぜ?」にどう対応する?
・UFOの理論 ~Fill in gaps

6 ディスカッション② 家族からの怒りの感情にどのように対応する? (18分)
【症例紹介:西村 祐枝 岡山市立市民病院】
・ICUの退室拒否「長女は看護師長に強い口調で訴えた」
・看護師は家族の怒りの感情にどのように対応する?
・医療者の心の安寧はどうすればいい?
・みなさんならどのように対応しますか?

7 ディスカッション③ 重症患者家族へのケア ~ニード論をもとに~ (26分)
【ミニレクチャー:田戸 朝美 山口大学大学院】
・患者家族が持つさまざまな感情と状態
・重症患者家族のニード
・情動的コーピングと問題志向的コーピング
・CNS-FACE Ⅱを活用しよう ・ニードを捉えて家族ケアに活かす
・わたしが思う、これが家族のニード
・講義のまとめ


▼講師の書籍のご紹介



あらゆる場面で使える 救急・ICUナースのための家族ケア

あらゆる場面で使える 救急・ICUナースのための家族ケア
日常ケア、特殊状況でのケア、医療者のストレス・ジレンマへの対応までを網羅!


家族の心のケア、精神的支援が実践でわかる
救急・ICUという特殊な環境下での家族への対応は悩ましく、難しい。生命の危機を前に短時間で意思決定が求められるなど、ナースには、さまざまな状況や場面に応じた適切な対応や振る舞いが求められる。日々いのちの危機と向き合う中で、しっかり家族に寄り添い、医療者自身のこころも大切にできる、家族ケアの実践と理論が結びついた渾身の1冊。



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発行:2024年1月
サイズ:B5判 256頁
価格:3,740 円(税込)
ISBN:978-4-8404-8447-3