
第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
櫻谷正明
JA広島総合病院 救急・集中治療科 主任部長
<どんなセミナー?>
本誌(特集)×セミナーだから・・・ 深くわかる! ナースが知るべき人工呼吸ケアの必須ポイント&トラブル対応
ナースが押さえておきたい、人工呼吸ケアの必須ポイントとトラブル対応をギュッとまとめました。人工呼吸器から得られる情報のどこに問題があるのかを絞り込めるようになることで、まず看護師が確認すべきことなのか、それともすぐに医師へ報告すべきかを、自信を持って判断できるようになります。
配信|ゼッタイ見逃したくない人工呼吸管理中の異常 症例①

症例1です。肺炎の患者さんで、挿管下で人工呼吸管理を行っていました。筋弛緩薬も併用しており、最高気道内圧は28cmH2Oで安定していたのですが、体位変換を行ったところ気道内圧が上昇してしまいました。人工呼吸器はVCVで設定しており、一回換気量に関するアラームが鳴ったり、しばらくすると止んだりということを繰り返していました。
このような設定です。
ちょっとグラフィックをお見せしますね。このあと、おそらく波形が少し変化すると思います。
はい、こんな感じです。
さて、どうでしょうか? 選択肢をいくつかご用意しましたので、ここで皆さんにお答えいただければと思います。
もっとも多かったのは「気管吸引をする」という回答でした。「当直医を起こす」もありましたね。起こしやすい先生だったり、日頃から良い関係が築けていれば声もかけやすいと思います。もちろん、バイタルサインが不安定であればすぐに連絡すべきですが、このあたりは日頃の施設の状況にもよるかなと思います。
では、ここで「何が起こっていたのか」について解説していきます。
まず、ボリュームコントロールで換気していたという話をしましたね。スライドを戻して設定を確認してみましょう。PEEPは10cmH2O、一回換気量は360mL、吸気流量は40L/分に設定されていました。
なので、吸気流量の40という値は変わりません。変化する可能性があるのは、気道内圧のほうです。このあとの波形をよく見ると、こちらの部分ですね。気道内圧がポンと上がっているのがわかると思います。もちろん、この状態でも肺メカニクスの測定は可能ですが……。
ここで注目していただきたいのは、気道内圧が上昇したときの人工呼吸器の動きです。アラームの設定圧を超えると、それ以上の換気が送れなくなり、呼吸器が換気を停止してしまいます。そのため、ボリュームコントロールで一回換気量を360mLに設定していても、実際にはその量が入らず、「換気量低下アラーム」が鳴ることがあります。
ここでは、グラフィックからどう判断するかという点をお話しします。
この呼気の流量波形を見てください。勢いがかなり弱くなっていて、縦幅(ピークの高さ)が狭くなっているのがわかると思います。圧自体はこちらの方が高くなっているのに、肺が膨らんだ状態から息を吐いているにもかかわらず、呼気の流量が出ていない。これは肺ではなく、「空気の通り道」に問題があるということです。
このグラフィックを見ると、換気量はほぼ変わりませんが、気道内圧が上昇しています。
通常であれば、圧が高いほど呼気は速くなるはずですが、今回は呼気がゆっくりで、吐き出しに時間がかかっています。これは空気の通り道が狭くなり、気道抵抗が増加している状態を示しています。
また、波形がギザギザしており、流量が小さくゼロに近づいているのも注目すべき点です。波形の横幅も長くなっており、呼気に時間を要していることがわかります。
これらの変化からも、気道抵抗が上がっている可能性が高いと考えられます。
気道抵抗が上がった場合にどう対応するかですが、まずは回路、チューブの確認になります。もちろん患者さんの状態も踏まえますが、このようなギザギザの波形が見られるときは、痰がどこかに溜まっている可能性が高いので、吸引や回路のチェックですね。水が溜まっていないか、人工鼻を確認するのもよいと思います。
要するに、「気道抵抗が上がっている」という状況で、バイタルが安定しているのであれば、挿管チューブや回路の確認を行ったうえで、必要があれば当直医に連絡するという流れでよいかと思います。自分たちだけで解決できることがあるかもしれないということですね。
ボリュームコントロールでのアラーム対応についてです。リークについては後ほど説明しますが、まず一回換気量低下アラームが鳴った場合は、最初にリークがあるかないかを確認します。
もしリークがあれば、その箇所を探して対処します。リークがなければ、先ほどの事例のように、気道内圧がアラーム設定を超えるほど上がっていて、一回換気量が減少している可能性が考えられます。その場合は、気道抵抗が上がっているのか、肺のコンプライアンスが下がっているのかを確認し、それに応じた対応を行う、というフローになります。
コンプライアンスの低下であれば、ここに記載されている通り看護師さんが単独で対応するのは難しいので、ドクターへの相談が基本になるかと思います。
ログインすると、動画でリークの有無の見かた、症例1のまとめ解説までご覧いただけます。また、ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。

プログラム
はじめに
・内呼吸と外呼吸
・それぞれのデバイスと呼吸補助効果
・呼吸仕事量の軽減
VCVとPCVの違いについて
・A/CとSIMVとCPAP
・VCVとPCVの違い
・グラフィックは変わるところと変わらないところに分けて見る
VCVとPCVで呼吸メカニクスを評価する
・コンプライアンスと気道抵抗
・呼吸メカ二クスを評価すると異常の部位が絞り込める
症例で考えるアラーム・トラブルの原因と対応
・【症例1】VCVでの気道内圧上昇
・【症例2】PCVでの換気量低下
危険な自発呼吸に気づけるようになろう
・一回換気量や気道内圧の上昇に注意する
・非同調の考えかた
アラームが鳴ったら実施すること
・【症例3】VCVでの一回換気量低下
・DOPEはグラフィック波形で判断できる?
質疑応答
・DOPEのところで、VCVで気道内圧が高い場合、波形が変化しにくい理由について
・吸気努力が大きいときのボリューム波形の変化について
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