第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
鷲尾洋介
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児急性疾患学講座 教授

<どんなセミナー?>
CLoCMiP®レベルⅢ認証申請要件 必須研修:新生児のフィジカルアセスメントに該当!
・バイタルサイン、State、全身観察(皮膚・頭部・顔面・頸部・胸部・腹部・外陰部・四肢)、原始反射など、新生児のフィジカルアセスメントで押さえておくべきポイントをイラスト・図を用いて解説します。

・低血糖、母乳不足、脱水などについて、実際の事例を通して、正常・異常の見極めポイントや具体的な対応が分かります。


配信|①新生児のフィジカルアセスメントの基礎知識



新生児の症状・所見の見分け方


ここから、新生児のフィジカルアセスメントについてお話しします。
観察すべき項目や注意すべき徴候とその対応まで、フィジカルアセスメントの実際についてご紹介できればと思います。

新生児の症状・所見の見分け方01


まず、「出生時のフィジカルアセスメント」と「新生児期のフィジカルアセスメント」をなぜ分けるのか。
出生時のフィジカルアセスメントは、新生児を蘇生し、状態を安定させるための評価が目的です。
その後、いろいろな情報を集め、それを新生児期のフィジカルアセスメントへとつなげていきます。

新生児の症状・所見の見分け方02


具体的に言うと、出生時のフィジカルアセスメントは、スライド右上のNCPR(新生児蘇生法)のアルゴリズムに沿って行われます。皆さんも受講されていると思いますが、NCPRをスムーズにやっていけば、その中にフィジカルアセスメントのプロセスが自然に組み込まれているわけです。

新生児の症状・所見の見分け方03


中でも大切なのが、2020年から特に強調されている「ブリーフィング」――出生前情報の確認です。ここには週数や体重、お母さんに関する情報などが含まれます。

その後、呼吸や筋緊張を評価して、蘇生のプロセスに入っていきます。呼吸と心拍を評価しながら、安定化へとつなげていきます。

もちろん、赤ちゃんがすごく苦しそうなら人工呼吸や胸骨圧迫の処置も必要になってきますが、状態が落ち着いてきたら、喘ぎ呼吸や努力呼吸がないかを評価しつつ、赤ちゃんのサポートを続けます。

新生児の症状・所見の見分け方04


NCPRを実施する上でもこうしたアセスメントは欠かせませんが、特に重要なのは胎児期の情報やバイタルサインなど、できるだけ多くの情報を集めておくことです。

蘇生中に呼吸がしんどそうな兆候があれば、モニターやECG(心電図)の装着も検討します。診察所見やApgarスコアはこの時に記録しますが、ある程度安定してから振り返ることで、いろいろなことがわかります。

ちなみにスライド右下は筋緊張の写真です。手足が「W・M」のような形(手がW、足がM)になっていれば、しっかりと筋緊張があると判断できます。

新生児の症状・所見の見分け方05


では、胎児期の情報の中で特に大切なものは何でしょうか。

いろいろありますが、まず重要なのはお母さんの情報です。体格や年齢、妊娠・出産の回数、嗜好品、薬物投与、既往歴、妊娠合併症などですね。

子宮内の環境についても、前置胎盤や臍帯付着部異常があるか、胎盤形成、単一臍帯動脈、胎盤腫瘍、梗塞、羊水量など、さまざまな要素があります。

赤ちゃん側の情報も、今はすごくわかるようになってきていますね。推定体重や、週数に比べて大きいか小さいかということも胎児エコーである程度はわかります。あるいは先天奇形症候群が疑われる場合に、血液検査や羊水検査をすることも可能になってきました。

また、人種によってかかりやすい病気は違いますし、遺伝による体格や体質の違い、物理的な環境や社会的・経済的・文化的背景の差も赤ちゃんの将来に影響するため、こういった情報も大切になってきます。

先天奇形症候群については、のちほど触れます。

新生児の症状・所見の見分け方06


ここまでお父さんに関する説明は出てきませんでしたが、だからといって父親の情報が重要でないわけではありません(笑)。

お母さんに比べると影響は少ないですが、たとえばお父さんに遺伝的な疾患があれば、もちろん赤ちゃんに影響する可能性があります。

事前問題の中に「お父さんの職業が赤ちゃんに影響する」という設問がありましたが、職業そのものが直接影響することは少ないでしょう。ただし、遺伝的な疾患情報は必ず集めておく必要があるということですね。

新生児の症状・所見の見分け方07


そして、もうひとつ大事なのがバイタルサインですね。スライドには、生まれた直後の数値に近い例を挙げています。

僕が若い先生や看護師さんへの講義で必ず言うのは、「バイタルサインのトレンドを見ましょう」ということです。

ワンポイントでチェックするのではなく、たとえば心拍がだんだん速くなっているのか、遅くなっているのか。サチュレーションは上がっているのか、下がっているのか。呼吸数は増えているのか、減っているのか。そういった変化の流れ=トレンドを、経時的に見ていってください。

この「バイタルサインを見ましょう」という言葉は、この後も何度も出てきますが、結局はここをしっかりチェックすることが、赤ちゃんの異常を早期に発見することにつながります。

新生児の症状・所見の見分け方08


そして、検査データですね。新生児の数値は、大人とはまったく違った値が並びます。 すべてを説明するのは難しいので、ヘモグロビンを例に挙げます。先ほどお話ししたように、赤ちゃんは胎児期を低酸素環境で過ごし、生まれた瞬間から高濃度酸素環境へと切り替わります。

もし皆さんが「ヘモグロビンを上げたい」と思ったらどうしますか?――こんな質問をされても困るかもしれませんが(笑)、マラソン選手は高地トレーニングに行きますよね。高地という低酸素環境では、体は赤血球を増やして、低酸素に対応しようとします。赤ちゃんも同じで、普段から低酸素環境にいるため血の気が濃く、成人よりも高いヘモグロビン値で生まれてくるのです。

また、クレアチニンにも新生児特有の特徴があります。先ほど、生まれてくるときにはストレスホルモン(カテコラミン)が出て、肺水を吸収させる方向に働くという話をしました。カテコラミンが多く出ると体は「戦う態勢」になり、交感神経が優位になります。その状態では尿をどんどん作ることができません。戦闘中におしっこ行きたくなったら困るので(笑)。

ということで、腎機能は一時的に低下したように見え、新生児のクレアチニン値は通常の小児よりもやや高めに出るのです。

こういった赤ちゃん特有の特徴を理解したうえで、検査データを見ていくことも非常に大切ですね。

新生児の症状・所見の見分け方09




ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。







プログラム


①新生児のフィジカルアセスメントの基礎知識
・新生児のフィジカルアセスメントのポイント
→出生前情報・母体の飲酒や服薬などの影響因子・新生児仮死・出生体重と在胎期間

・観察すべき項目とフィジカルアセスメントの実際
→バイタルサイン、児の行動分類(State)、全身観察(皮膚・頭部・顔面・頸部・胸部・腹部・外陰部・四肢)、原始反射

・注意すべき新生児の徴候と対応
→リスク因子(早産・低出生体重児、低血糖、呼吸障害、黄疸、体温異常、体重減少、ビタミンK欠乏性出血症)とそのメカニズム

②具体的事例を通した逸脱状況の予測と対応
・事例紹介

・逸脱状況の予測と対応

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