
第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
竹田和行
株式会社施設基準総合研究所 代表取締役
伊藤智美
社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 前 理事 兼 病院長補佐 兼 看護師確保・定着促進室長
<どんなセミナー?>
「指導監査する視点」と「看護部の視点」から解説します!
元厚生局で審査課長の経歴をもつ竹田和行先生と、適時調査に副院長兼看護部長として積極的にかかわってこられた伊藤智美先生に「指導監査する視点」と「看護部の視点」からそれぞれご講義いただきます。特に、2024年診療報酬改定による変更点や、看護部で関心が高まっている「身体的拘束最小化の基準」にどのような対応が必要なのか、また、看護部として適時調査の当日対応にどんな準備が必要なのか、経験談を交えて解説いただいています。
配信|「身体的拘束最小化の基準」への対応

感染対策向上加算の施設基準の中では、職員研修を2回行うことが義務付けられています。つまり、加算の届出を出すなら、その届出に基づくルールで、感染対策の職員研修を実施しなければならないということになります。
もちろん、加算と入院基本料では根拠が異なりますので、入院基本料の方で義務化されている研修は、実施しなければ入院基本料が算定できなくなるため、参加した分は引かれない場合もあります。
しかし、加算についてはまた別の話なので、基本料の方では考慮されません。これが根幹の考え方で、ここがわかれば「なぜこっちが引かれるのか・引かれないのか」の違いも理解いただけると思います。
次に、入院基本料の算定ルールについてです。
身体的拘束の基準を満たさない場合、1日につき1人あたり40点、400円が減算されます。「40点=400円だから大したことない」と考えがちですが、全員が引かれるのでけっこう大変なことになります。たとえば1年間で500人、1,000人が入院していて、1人400円引かれるとなると、かなり大きな金額になるので、ここは甘く見ないでいただきたいかなと思います。
入院基本料における身体的拘束最小化の基準では、「緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束を行ってはならない」とあります。つまり、緊急やむを得ない場合で、ちゃんとした理由があれば実施しても差し支えないということです。
そして実施するのであれば、その態様や時間、患者さんの心身状況、緊急やむを得ない理由を、きちんと診療録やそれに類する帳簿に記録してくださいということですね。
身体的拘束とは何かというと、抑制帯等の使用や、患者さんの体や衣類に触れる用具(ミトン等)で一時的に自由を拘束することをいいます。「行動を制限する」ことを指すので、患者さん自身が自分で外したり、自由に動かしたりできるものは該当しないと考えてよいと思います。
それから、医療機関では、「身体的拘束最小化チーム」を設置する必要があります。チームは専任の医師と看護職員(准看護師でも可)で構成します。薬剤師や他の職種の方も入れるのが望ましいですが、これは病院の規模や状況によりますね。
このチームでやらないといけないことはいろいろありますが、まずは指針を作成し、その中には「薬物の適正使用」について、きっちり書いておくことが望ましいです。「望ましい」なので必須ではないのですが、注意が必要なところなので、後ほどまた説明します。
それから、職員研修も定期的に実施してください。これは入院基本料の方で定期的にやるので、「様式9」からは引かなくてもいいということですね。
ちなみに身体的拘束について、「精神科病院にはまた別のルールがある」とも書いてあります。
次に、急性期看護補助体制加算についてです。診療報酬には施設基準のルールだけでなく、「その点数を取っていいかどうか」のルールがあります。
「急性期看護補助体制加算の点数を取っていいかどうか」のルールを見てみると、「身体的拘束最小化の取組を実施した上で算定する」とあります。このルールは、実は去年できたわけではなく、ずっと昔からあったんですね。
ということは、この加算を取る病棟は、2024年の改定の前に、身体的拘束のルールができていないといけない。これが一般的なルールになっています。
ここに書いてあるのは、「身体的拘束を実施した日は、看護補助体制充実加算1は取れない」ということです。
加算1と2の差は、「身体的拘束を実施しているかどうか」なので、身体的拘束を行った場合、加算1で出していても2に下げられてしまうのです。
このルールは2025年の6月1日から適用されます。5月までは猶予期間でしたが、6月以降はしっかり見られるので、注意が必要です。
また、療養病棟入院基本料(20)には、「身体的拘束を実施するかどうかは、職員個人ではなく複数の人で判断しましょう」とあります。
また、当然のことですが、「身体的拘束は可及的速やかに解除するよう努める」とあります。
実施にあたっては、患者家族への説明や同意、具体的な行為や実施時間の記録、解除に向けた検討といった対応を行います。
この「解除に向けた検討」は、毎日行わなければなりません。また、看護現場で手がかかるために、身体的拘束を行いたくても実施できない場合に、ご家族を無理に付き添わせることも禁止されています。ここに違反すると、急性期看護補助体制加算が取れず、診療報酬を返してくださいということになってしまいます。
実際、この部分をつっこまれた病院さんはけっこう多いです。なぜかというと、このルールは施設基準の方には書いていないんです。だから現場の方は知らなくて、適時調査では見られなかったので安心していたら、特定共同指導や個別指導ではいきなり指摘されてしまったと。
「そんなのどこに書いてあるんですか?」 とよく聞かれますが、「あ、そのルールはこっちに書いてます」と。「だから見てなかったんですね。でも知らない病院さんが悪いんですよ。ここに書いてあるんだから」――と、こう言われて、病院側の責任になってしまいます。
看護職の方は、施設基準のルールについてはよく勉強されていますが、診療報酬の請求ルールは医事課の管轄なので、看護部は関わっておらず、知らなかったというケースが多いです。しかし、最終的には「知らなかった看護部長の責任」と言われてしまったりするので、「施設基準のルールだけ知っていればいい」わけではないということですね。
これが、急性期看護体制加算の個別指導や特定共同指導の際に、行政の方が実際に持ってくるチェックリストです。こちらは厚労省のホームページで公開されています。このチェックリストの通りに、すべての項目を確認していきます。
よく指摘されるのが、「身体的拘束の解除に向けた検討を1日に1度行っていない」という項目です。「1日1回やった」という記録が毎日残ってないといけないんです。これがほとんどないんですよ。
これも現場ではよく「こんなのどこに書いてあったんですか?」と聞かれますが、そんなことを言っても後の祭りですから、ここも気をつけていただきたいポイントかなと思います。
ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。

プログラム
1.適時調査、個別指導、特定共同指導とは(45分) 講師:竹田 和行
・診療報酬返還の3つのリスク
・適時調査、指導、監査とは
・適時調査で看護部が今、知っておきたいこと
・「身体的拘束最小化の基準」への対応
・重点施設基準が変わっています
・返還金の指示を受けた具体例
2.看護部における適時調査の準備と対策(40分) 講師:伊藤 智美
・看護部門における適時調査当日準備の概要
・入院基本料等の病棟の勤務実績に関する事項
・重症度、医療・看護必要度に関する事項
・看護補助者関連の事項
・いざという時に慌てない仕組みづくりと運用
3.質疑応答(25分) 講師:竹田 和行、伊藤 智美
①身体拘束最小化チーム、記録は何を注意すればいいか?
②電子カルテでの個別指導等の傾向について
③他科受診、退院前訪問、施設見学、院外レクリエーションを勤務時間から引く理由は?
④急性期看護補助体制加算などにおいて、「夜勤連続2勤務まで」や「看護補助者の勤務間隔11時間以上確保など」の条件について
⑤外来と病棟の一元化を検討する際の様式9での夜勤時間の考え方について
⑥褥瘡管理計画書・入院管理計画書の作成について
※講義内容は2025年1月16日に開催された会場セミナーを録画・再構成したものです。
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関連書籍のご案内

ナーシングビジネス2024年秋季増刊
ルールを正しく理解して、よりよい病院運営につなげる!
日頃のマネジメントが鍵になる!
「適時調査」と「立入検査」を中心に、看護管理者が押さえておきたい行政指導の基礎的知識と対応策を学べる1冊。混同されやすい「指導」「監査」との違いや、適時調査にまつわる現場で陥りやすい考え方とルールの落とし穴、現場のあるあるエピソードも収載。
発行:2024年11月
サイズ:B5判 160頁
価格:3,080(税込)
ISBN:978-4-8404-8392-6
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