
第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。
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講師
常喜信彦
東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科 診療部長・教授
<どんなセミナー?>
透析患者の心電図を基本から押さえて、異常がわかる・気づけるようになる!
症例紹介や、透析室スタッフが押さえておきたいポイントを交えながら、透析患者に特有の心電図の読み方をわかりやすく解説します。
「心電図に興味がある」「患者さんの異常にもっと気づけるようになりたい」「心電図を読むのが苦手で克服したい」――そんな思いを持つすべての透析室スタッフ必聴のセミナーです。
配信|透析患者の心臓を覗きみる

ここまでの講義で基本知識を押さえてきたので、ここからは透析患者さんの心臓をちょっと覗いてみましょう。
実は透析患者さんの心臓を見ていくと、本当にキリがないくらい色々な病気が出てきます。なので、ここでは簡単に、基本的な部分だけをお話しすることにします。
まず、先ほども少し触れましたが、透析をしている方は腎臓から尿が十分に出ないので、前負荷が増えやすいんです。
つまり、食べたり飲んだりした分が尿としてしっかり排出されないので、その分が体に溜まってしまうということです。もちろん単純に血液量だけの問題ではないんですが、増加することで前負荷が大きくなります。
透析前の体重がドライウェイト(透析後の目標となる体重)より5%、7%、10%、場合によっては15%も増えてしまう方もおられるのではないでしょうか。そうなると前負荷が非常に大きくなって、心拍出量を規定する因子のひとつがかなりまずい状態になっていることがわかります。
前負荷というのは医学的に言うと、心室が「さあ収縮するぞ」という直前にかかっている負荷、つまり張力のことです。
拡張末期に、心臓が思いっきり広がったところへ流れ込んだ血液の量を反映していると言われています。「これからポンプをギュッと収縮させて、血液を送り出すぞ」という直前の状態ですね。
ここに圧力がたくさんかかっているということは、それだけ心臓が余分に仕事をしなければならない、ということを意味します。透析患者さんはまず、この前負荷が多くなる。
だからこそ、血液量の増加で心臓に過度な負担がかかっていないかを確認するために、透析前の体重をチェックしているのだということが、ここでおわかりいただけると思います。
一方で、透析患者さんは後負荷も増えやすいんです。
皆さんが普段見ている患者さんのうち、おそらく8割〜9割の方は高血圧の薬を飲んでいるはずです。透析患者は血管が硬くなりやすく、動脈硬化も進みやすいことがわかっています。そのため血圧が高い方が非常に多い。
血圧というのは「心拍出量」と「末梢血管抵抗」で決まります。動脈硬化が強いというのは、末梢血管抵抗が強いということです。そうなると当然、後負荷が大きくなる。
後負荷というのは、心臓が収縮するときに心室にかかる圧力です。さっきの前負荷は「心臓が広がったとき」にかかる圧力でしたが、後負荷は「心臓が収縮するとき」にかかる圧力ですね。
末梢血管抵抗に打ち勝って血液を送り出すために必要な圧力なので、血圧が高い人たちは、それだけ心臓が一生懸命頑張って血液を送り出しているということになります。
さあ、ここまでをまとめるとどういうことか。
よく聞きませんか? 「透析患者さんには心筋梗塞や狭心症の人が多い」。それから、さっき触れたように弁が石灰化して弁膜症の人も多い。不整脈も多い。
あるいは心肥大。高血圧で全身に血液を送り出すために、毎回ものすごい圧力に打ち勝つ=筋トレを繰り返しているようなものなので、心肥大になるわけです。さらに、収縮能や拡張能が低下してしまう病気も、高頻度で合併しているのが透析患者さんです。
そんな悪い心臓に、さらに仕事をたくさんさせている。「前負荷も多いし、後負荷も多い」。この両方の負担がずっとかかり続けているんです。
心臓に病気があるうえに、負荷が大きい。この「ダブルパンチ」によって、透析患者さんには心臓病が多く、心不全で苦しむ方が非常に多い、ということになるわけです。
であるならば、心電図という検査で「どこにどんな負荷がかかっているのか」「どんな病気が起こっているのか」を推察できるようになったら、それは嬉しいし、ちょっとワクワクするし、「いいことしてるな」という気持ちにもなりますよね。
心電図はいつでもすぐに取れる、本当に簡便な検査です。だからこそ大切にしたい検査ですし、その価値をさらに深く考えられるのではないでしょうか。
ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。

プログラム
1.心臓のはたらき
2.心臓の電気の流れ
3.透析患者の心臓を覗きみる
4.心電図検査とは
5.心電図の種類としくみ
6.心電図波形のよみかた
7.心電図から異常所見をよみとこう!
8.まとめ
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