第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
小谷 英太郎
日本医科大学多摩永山病院 循環器内科 教授/部長

<どんなセミナー?>
心電図検定3級突破のカギ! 「虚血」の見かたをマスターしよう
循環器疾患の中で最も多い「虚血性心疾患」の見極めに欠かせないのが心電図です。
「どの部位で虚血が起きているのか?」を読み取るには、12誘導の仕組みや波形の意味をしっかり理解することがカギ!
本セミナーでは、その「虚血の見かた」を徹底解説! 判読力が一気にレベルアップするチャンスです。


配信|虚血時の心電図変化



12誘導心電図 正しい読みかたと虚血の見かた


今お話ししたような「虚血による心電図変化」は、最初から虚血だと分かっていれば、読影は比較的簡単にできます。

ですが、実際の臨床では「虚血とよく似た波形」が得られることがあります。これが、虚血による心電図変化と鑑別を要する疾患です。ここでは胸部誘導のみ提示していますが、いくつか例を挙げてみます。

まず、たこつぼ型心筋症です。心尖部のみ壁運動が低下する病気ですが、急性期には心筋梗塞と非常に似た波形になっています。

また、ST上昇は心外膜側の虚血でも起こるため、心外膜炎でもSTが上がります。ただし、虚血の場合とは上がり方がやや異なり、J波が出ることもあります。

次に、ブルガダ症候群です。V1からV2誘導で特徴的に見られ、特にV1でcoved型と呼ばれる形が出ている場合、右脚ブロック型でcoved型のST上昇が見られれば、ブルガダ症候群と診断されます。

さらに、肥大型心筋症では心筋壁が非常に厚くなり、前胸部誘導で大きな陰性T波、いわゆるジャイアントネガティブT波が見られます。たこつぼ型心筋症の慢性期でも同様の波形が現れることがあります。

最後に、肺動脈血栓塞栓症です。右心負荷の所見として、V1からV4付近でT波の陰転化などが見られることがあります。

12誘導心電図 正しい読みかたと虚血の見かた01


では、たこつぼ型心筋症と急性心筋梗塞をどのように見分けたらよいのでしょうか。
ここでは、心電図研究で著名な小菅雅美先生が提唱されている方法をご紹介します。

心電図を、通常の並びではなく「電極がついている順番」に並べ替えてみる。これをキャブレラ配列と言います。

キャブレラ配列にすると、心筋梗塞の場合はST上昇が連続的に見られるのに対し、たこつぼ型心筋症では冠動脈の走行とは関係なく、心尖部のみ動きが悪くなるため、非連続的なST上昇パターンになります。

迷った時は、この方法で鑑別がしやすくなります。

12誘導心電図 正しい読みかたと虚血の見かた02


ではここから実際の心電図を見てみましょう。
ハートナーシング24年9号『特集EX』にはすでに解説が掲載されていますが、皆さんで読み取ってみてください。

12誘導心電図 正しい読みかたと虚血の見かた03


まず、P波とQRS波が1対1でつながっているかを確認します。P波とQRSは1対1で連動していますが、PQ間隔がやや長く、1度房室ブロックがあるようです。洞調律であることは間違いありません。

次に、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導でST上昇が認められます。また、Ⅰ・aVL誘導、V2〜V5あたりで相反性のST低下(レシプロカルチェンジ)が見られます。したがって、これは典型的な急性心筋梗塞の「下壁梗塞」と言えます。

ここで注目してほしいのはV1、V2です。これらの誘導でSTがやや下降しているように見えます。

このことから、右冠動脈の閉塞部位は起始部ではなく、末梢寄りである可能性が高いと推測できます。

なぜなら、もし起始部で閉塞が起きている場合、コーヌスブランチ(円錐枝)も閉塞し、V1・V2誘導でブルガダ症候群と同じようなST上昇が現れるためです。

このような所見を積み重ねて慣れてくると、心電図だけで冠動脈の閉塞部位をある程度推測できるようになります。

12誘導心電図 正しい読みかたと虚血の見かた04


次の症例を見てみましょう。

まず、規則正しいP波が見られるので洞調律です。ただしP波の形が少しずつ異なるため、ペースメーカシフト、あるいは異所性P波の出現も考えられますが、今回はST部分に注目してみます。

著しいST上昇が見られるのはV2〜V4あたりです。こういう波形からは心筋梗塞の超急性期が疑われますが、同時に高カリウム血症の可能性も考慮すべきです。

鑑別のポイントとして、高カリウム血症によるST上昇ではレシプロカルチェンジが起こりません。

また、この症例ではⅠおよびaVLでも軽度のST上昇があり、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導ではST低下とT波の陰転化が見られます。

つまり相反性のST下降があるため、これは高カリウムではなく、虚血による前胸部の急性変化、すなわち心筋梗塞の超急性期であろうと判断できます。

12誘導心電図 正しい読みかたと虚血の見かた05



ご購入いただくとすべてのプログラムがご覧いただけますのでぜひご検討ください。







プログラム


1.基本的事項の復習
心電図の種類
12誘導心電図の肢誘導電極の貼り方と仕組み
胸部誘導電極の貼り方のコツ
胸部誘導の波形の成り立ち
正常の基準
モニター心電図の体位変換による変化

2.虚血の判読の初歩を学ぶ
虚血時の心電図変化
ST下降のパターン
労作時に胸痛がある患者さんのトレッドミル運動負荷時の心電図
心筋梗塞時の経時的な心電図変化
心電図による梗塞部位診断と責任冠動脈推定

3.実践チェック!
練習問題を解いてみよう!

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