第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
隅 清彰
社会福祉法人石井記念愛染園附属愛染橋病院 小児科部長

加藤有一

安城更生病院 小児科・新生児科 総合周産期母子医療センター長

荒堀仁美

市立豊中病院 小児科部長

<どんなセミナー?>
どういう状態が「正常」で、どこからが「異常」なのか?
母児同室となった正期産児の中には、重大な疾患を抱えた赤ちゃんが紛れていることがあります。見逃さないためには、観察と判断のポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
この講義を見れば、「この状態・この数値を見たら新生児搬送!」「このタイミングで小児科医コール!」という具体的な判断基準がわかります。
NICUのない施設、産科のみの施設で勤務されている方も、いざというときの不安が解消できる内容です。


配信|4.神経症状・黄疸で観察すべきポイント その2



助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編


では、皆さんが気になる「けいれん」と「ジッタリネス(過敏性)」、あるいは「振戦」との違いについて見ていきましょう。縦軸にいくつかの項目を並べています。 けいれんの場合は、外からの刺激で誘発されることはあまりなく、四肢が同時に動くことも稀です。 「けいれん」と聞くと、熱性けいれんを思い浮かべる方も多いと思いますが、新生児の場合は熱性特有の「ガチガチッ」とした激しい動きではなく、「ピクン、ピクン」とゆっくりした動きになります。運動速度も毎秒1~3回程度です。 屈曲相と伸展相の「早い/遅い」というのは、けいれんの「ビクン」となってゆっくり戻る、また「ビクン」となって戻る、といったような動きを表現しています、 一方、ジッタリネス(過敏性)では屈曲相と伸展相が同じリズムで起こり、往復の動きが対称的なので、「ガチ、ガチ、ガチ」といったような動きになります、 また、けいれんでは自律神経症状を伴うことがあります。たとえば無呼吸発作の際、心拍数が上昇している場合は、けいれんである可能性が高くなります。 抗けいれん薬は名前の通り、けいれんの治療に使われますので、多くの場合有効ですが、なかには難治性けいれんもあり、治療に長い時間を要することもあります。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編01


今回は皆さんに実際の動画を通して経験を積んでいただくため、症例動画を多めにご用意しました。 【症例①】 在胎39週0日、体重3,200g、前期破水後16時間後に経腟分娩。日齢3日で発熱、哺乳力低下、なんとなく元気がない様子がみられました。 ここだけ見ると、まずは感染症や髄膜炎が疑われるかと思います。 しかし、動画の前に種明かしをすると、これは「脳出血」の症例です。発熱も実は、脳出血の症状のひとつなのです。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編02


それでは、動画を見てみましょう。 クベース内で赤ちゃんが管理されています。口元や右手が小刻みに揺れていますね。足にも動きがありますが、振動なのか判断がつきません。左手もわずかに動いているようですね。 表情なども特に変わった様子はありません。「ガチガチ」といった強い動きも見られません。動きはこれだけなんです。 新生児けいれんが、熱性けいれんとは大きく違うのがお分かりいただけたかと思います。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編03


【症例②】 在胎38週2日、体重3,230g。アプガースコアは良好でした。 5歳のお姉さんがてんかんで通院中とのこと。日齢1日から上下肢のピクピクした動きと、まばたきが気になるとお母さんが訴えていました。 実は、クリニックの院長は「特に問題なさそう」と診断していたのですが、お母さんの心配が強く、搬送依頼となった症例です。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編04


クベース横にお母さんが見えます。赤ちゃんは軽く伸びをした後、まばたきを繰り返しています。お母さんは「けいれんだ」と気づいて、「よしよし、なんとか落ち着いてくれないか」と動きを止めようとしますが、けいれんには残念ながら効かないことがほとんどです。 まばたきが続いていますね。四肢を見てみると、特に動きはないようです。 お母さんは一生懸命です。動きは止まったようですね。でも実は、この時まだけいれんは続いていました。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編05


この2つの動画を見て、皆さんはけいれんが理解できたでしょうか? むしろ、混乱したのではないでしょうか。 このように新生児けいれんというのは非常に多彩で、症状としては、体の動きはむしろ目立たないことが多いのです。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編06


【症例③】 在胎39週2日、体重2,940g。近くのクリニックで吸引分娩で出生。 日齢3日で初期嘔吐があり、搬送時に「なんか変な動きがあるみたいで…」との報告がありました。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編07


看護師が前を通り過ぎました。何もなさそうでしたが、他の看護師が近くに来ましたね。実はこのとき「けいれん」が起きていたんです。 体の動きはほとんどありませんね。口をもぐもぐ動かしているのが、もしかしたらけいれんの所見かもしれませんが、他に手足の動きは目立ちませんでした。 「えっ、これがけいれんなの?」という疑問が湧いて当然だと思います。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編08


でも、これはけいれんなんですね。 「新生児発作」と呼ばれるもので、頭部に装着されているコードで電位を測ると、発作波がしっかり確認できます。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編09


それでは脳波と一緒に、赤ちゃんの動きを見ていきたいと思います。いろいろな形がありますが、不規則な波ではなく、規則的に繰り返す波が発作波です。 複数の部位に異常放電(発作波)が出て、しかも周期が違うので、頭の中では大変なことが起きているのがわかります。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編10


ではこの時、赤ちゃんの動きはどうだったのか見てみましょう。 発作波が出ています。ここにも出ています。ここにも、ここにも出ています。しかし赤ちゃんの様子を見てみると、特に目立った動きはないようですね。 口がもぐもぐしているかな、足が時々動くかなというぐらいです。しかし、頭の中の脳波活動はものすごいことになっています。 これも周期が違いますので、別の波ですね。これでも赤ちゃんの動きは特に目立たないですね。足の動きもわからないです。しかし、頭の中ではまだ異常放電が起こっています。 もうすぐけいれんが止まります。はい、この時点でけいれんが止まりました。発作波が消えると、赤ちゃんはふっと気づいたかのように伸びをして、普通の状態に戻りました。 赤ちゃんの動きだけでは、けいれんかどうかは判断できないということがお分かりいただけたかと思います。脳波の検査、脳の異常放電をキャッチして初めて、けいれんというものを見つけることができるのです。

助産師・看護師が知っておきたい正期産児の観察ポイント_症状・疾患編10



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プログラム


1.呼吸症状で観察すべきポイント~見逃してはいけない呼吸器疾患とは~
〇呼吸症状の観察方法と正常な状態
〇ドクターコールのタイミング
〇主な新生児呼吸器疾患

2.循環器症状で観察すべきポイント~見逃してはいけない循環器疾患とは~
〇循環器症状の観察方法と正常な状態
〇ドクターコールのタイミング
〇主な先天性心疾患

3.神経症状・黄疸で観察すべきポイント その1
〇正常と異常を見極める観察ポイント
〇黄疸について

4.神経症状・黄疸で観察すべきポイント その2
〇脳出血とけいれん
〇ドクターコールのタイミング
〇脳低体温療法の実際
〇お母さんへの説明

5.消化器症状で必ず観察すべきポイントは?
〇嘔吐
〇腹部膨満
〇便の異常

6.感染症症状で必ず観察すべきポイントは?
〇病原体と特徴的な臨床像
〇新生児敗血症、水痘、インフルエンザ
〇ワクチンスケジュール

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発行:2023年4月
サイズ:A5判 300頁
価格:3,850円(税込)
ISBN:978-4-8404-8143-4
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