看護師の新しいキャリアが生まれる|アフターコロナ、看護の仕事はどう変わる?|松井貴彦|#005

コロナ禍が看護師の仕事に与える影響を「社会的立場」「労働力」「デジタル化」「生き方・働き方」「キャリア」の5つの視点から全5回シリーズで考察します。

▽バックナンバーを読む場合はこちら

人生の「マルチステージ化」がはじまる

今まで人生モデルは、専門学校や大学卒業までの「教育」ステージ、社会人になれば就職してフルタイムで働く「仕事」ステージ、定年を迎えたら「引退」ステージの3つのステージを歩むのが一般的でした。しかし、「人生百年時代」になるとこのような画一的な生き方が変化していくと言われています。今回のコロナ禍でリモートワーク、AI化、復職の推進などの時流が生まれることで生き方、働き方にさまざまな変化が生れることはこれまで記してきました。

リモートワークによって働く場所の制限がなくなることや、いったん就職しても働きながらリモートで別の学校に通うこともできる。企業では副業を認める動きも出ています。看護師にとっては復職の機会も増える。それが「フルタイムで週5日」ではないかもしれません。「週に2日で1日数時間、それを掛け持ち」のような働きかたができるほど柔軟性が生まれるのではないでしょうか。そして60歳定年制度は見直されていくでしょう。「教育・仕事・引退」のワンパターンではなく、その年齢にあった生きかた、働きかたを選べるようになります。これが人生のマルチステージ化です。

いったん就いた仕事を一生やり続けることもなくなるかもしれません。なぜなら世の中が変化していきますから、当初やっていた仕事がなくなるかもしれないし、新たな仕事が生まれるかもしれません。そうなると新しい仕事をするために学び続けることが必要になります。「教育・仕事・教育・仕事」……人生百年時代の引退は先延ばしになるかもしれません。

生きている限り「アップデート」が必要

これまでの常識であれば60歳まで働いて、余力を使って65歳まで定年延長、そしてリタイアだったのかもしれません。しかし今は60歳からでも新しい仕事に就けます。病院でがんばってきた経験を今度は地域で活かすこともできるでしょう。なぜなら看護職に求められる仕事は原点回帰していきますから、経験豊富なベテラン看護師のほうがコミュニケーション力、人間関係構築力、総じて人間力で有利かもしれません。

「人間を丸ごととらえてジェネラリストという基盤のうえに、身体の変化や害が生じたときにはその領域に速やかかつ継続して対応できる経験豊かな専門領域をもって行うことができること」(陣田泰子、2020年)がアフターコロナにおける、看護師の新しく、かつ普遍性をもつキャリアであると私は思います。

もちろん、新たな仕事を始めるためには新たな学びをしていく必要もあります。それが「自分自身のアップデート」です。アップデートとはご存じのとおりスマートフォンやパソコンでソフトウェアを最新の状態にしておくことを指しますが、人間も新しい情報や知識、考えかたを学んで世の中の流れに合わせておく必要があります。学びのキーワードはやはり「デジタル化」です。オンライン研修、ウェビナー、eラーニングなどデジタルを使ったものを活用することで学習効率が上がります。

そして若い人にわからないことは教えてもらう謙虚さも年を重ねるほど必要になると思います。メンタリング(メンターによる指導)においても年下の経験者が年上の人に教えることは職場にはポジティブな効果を生むという研究もあるようです。長年積み重ねた知識、経験、スキルをもった人が職場に加わることで、若者にも良い刺激が生まれるということでしょう。変わり続ける社会の中で「自分らしく」生きていくにはアップデートを続けていくことです。

「アフターコロナ、看護の仕事はどう変わる?」というテーマで、5回にわたってお届けしました。たいへんな時期ではありますがこの災いをプラスに転じられるようにできるのも自分のこころ次第です。どんなときも「好奇心を忘れず、あきらめず、楽観的に、こだわらず、冒険的に」生きていけば、必ず道は開けていきますと申し上げて締めの言葉とさせていただきます。
(参考文献:「コロナ後の世界」、文春新書、ジャレド・ダイヤモンド、リンダ・グラットン)

アフターコロナ、ここから始めてみよう ⑤

▶今の自分から「自分にしかできない看護」をしていくために、まず何からアップデートすればよいか、言語化してみましょう。
ヒント:「アフターコロナ、ここから始めてみよう」①~④で言語化したものを読み返して考えてみましょう。

プロフィール:松井貴彦
株式会社メディカ出版 販売企画部門責任者。キャリアコンサルタント(国家資格)。編集者として「透析ケア」「眼科ケア」、「ナースビーンズ(Smart Nurse)」の創刊を担当。編集部門、管理部門の責任者を経て、系列会社保育社の代表取締役、介護運動支援ゲーム「起立くん」、自動おしぼり供給機「おしぼりふく蔵」、施設向け学習eラーニング「CandY Link」、オンライン学習システム「FitNs.」「BeNs.」の販売責任者、看護の見える化支援セミナー「陣田塾」の企画運営、全国約5000病院の看護管理職に向けて「メディカファン Eyes of the Mind」を執筆。
コロナ禍の状況のなか「わくわくする働き方・生き方、個人を大切にする職場づくりの支援に役立てば」と、この春からYouTubeチャンネル『松井貴彦 まっチャンネル』を開始。