新人看護師だけど非常勤 !? まめこのほふく前進|#004|思いがけず病棟デビュー

前回までのおはなし…
緊急事態宣言が発令されてから家の中で閉じこもっているうちに精神的に不安定になり、何をするのも億劫になっていた。それは面接を受けた後も変わらず、母親と公園に出かける日々を過ごしていたところ、病院から採用決定の電話がかかってきた。よろこびながらも、ナース服のサイズ合わせが2日後に決まり戸惑いが。面接で師長と髪を染める約束をしていたものの、思っていたよりも早く病院を訪れる機会がやって来て、金髪のままだったのです……

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ナース服と金髪と名札

採用の電話連絡から2日後、緊張しながら病院まで来ました。
面接の日と同じように、総合受付の方に声をかけて、総務人事担当の方を呼んでいただきました。

総務担当者「あ!まめこさん久しぶり〜」

私「お久しぶりです」

総務担当者「ちょっと待っててね」

(総務担当者の方、いつもテンションが高いなあ。羨ましい)

どこかの部屋に行って、ナース服のサイズ合わせを行うようでした。着いたところで靴を脱いで入った部屋は和室。ラックにナース服がたくさんかかっています。

ザ・ナース服の白衣タイプではなく、襟がなく、首元がスッキリしているスクラブタイプの白衣だったことに私のテンションが上がります。

(こんなに色があるんだ~。選べるのかな)

ナース服は、白地にラインが入っていて、そのラインの色がネイビー、パープル、ピンク、ワインから選べました。パンツは白のみです。

「まめこさんは身長的に、SかMサイズだと思うけど、細いからSサイズでいいと思うな〜」

(え〜、私は細くないし、驚き! 体重も標準だし、なんなら肩幅はある方ほうだし。いつもMサイズだから、Sはたぶん入らないと思うなあ)

総務担当者「一応、S・M・L置いておくから着てみてね!」

私「ありがとうございます。試着してみますね!」

まずは勧められたSサイズを試着してみました。

(肩幅合わない! パンツはやっぱりきつい! いや、てか、太ももパツパツで動きにくい!! あんなこと言われたから、私は意外と細いのかもと期待しちゃってたじゃん!! 私やっぱ標準体型!)

次にMサイズのを試着。

(え、Mサイズでも肩幅合わない(泣)。私、肩幅広すぎか〜。パンツは……Mサイズでさえ、ピタッとしている。悲しい……)

そしてLサイズも試着。

(肩幅ちょうどいい! パンツは、太ももはいい感じだけど、ウエストがぶかぶかだ……)

総務担当者「どのサイズが合った〜?」

私「上がLサイズで、下はMサイズがちょうどいいと思います」

総務担当者「えー! そんなに大きいサイズでいいの? 上はほんとにLサイズ?」

私「肩幅に合わせるとLサイズがちょうどいい感じでした!」

どうやら私は着痩せして見えるようです。

小学生の頃からよく外で遊んだり、スポーツをしたりしていたので、ガタイは良いほうだと思います。ただ、肩幅がある割に、横からみると薄っぺらい体格なので、痩せて見えるのでしょう。体重的には、痩せ型というより標準型なんですけどね。

総務担当者「色はどうする〜? ネイビー、パステルパープル、ピンク、ワインの4色があるんだけど、まめこさんの勤務数だと2着選べますよ!」

(私的には、ネイビーが1番かっこいいけど、キツく見えちゃうからな〜。柔らかい色にしておこうかな)

私「パステルパープルとピンクでお願いします。」

私は見た目がキツいとよく言われるので、雰囲気が少しでも柔らかく見えるようにピンクとパープルを選びました。もともと真面目顔なのと、発達障害の特性の一つで、表情があまり出ないことでキツく見えがちなのです。不本意!

初対面の人からの第一印象は、圧倒的に「怖い、強そう」が多いです。そして、見た目がキツく見えてしまうがゆえの弊害を経験しすぎているので、自分の好みよりも優しく見えるほうを選びました。第一印象でネガティブから入ると、自分にとってマイナスしかないので(泣)。

ナース服のサイズと色を選び終わると、総務の方から
「職員のネームプレート用の写真撮りたいんですが、大丈夫?」
と言われ、少し動揺する私。

(写真撮るの!!!? 髪の毛めちゃ明るいのに!?)

私「写真はこの髪色で大丈夫ですか? 面接のときに、師長さんから髪の毛の色を暗くしてきてって言われたんですが間に合わなくて……」  

総務担当者「あ、髪の色のことを言われてたんだね〜。画像加工でどうにかするから大丈夫だよ!」

(総務の方、私の髪色のことは気にしてなかったの!? 明るすぎだろと思われてると思ってた……)

いきなりの病棟デビュー

総務担当者「まめこさん、この後は予定ある? ゴールデンウィーク明けにいきなり病棟に上がるのは緊張するかなと思って、もし時間があれば今日のうちに少し病棟に行ってみない?」

(急すぎん!? この髪色で病棟に上がるの!? えー、看護師さんたちに何か言われたらどうしよう。とりあえず、師長さんに言われるよね……)

とは思ったものの、病棟に上がれることがうれしくて、
「時間はあるので、この髪色で大丈夫であれば、病棟上がりたいです」
と答えました。

総務担当者「じゃあ、師長に電話するね〜」

ということで、さっそくナース服に着替えて病棟に上がると師長さんが声をかけてくれました。

師長「あ!まめこさん久しぶり! 病棟に行こっか!」

私「お久しぶりです。よろしくお願いします」

(私を見て、嫌な顔もしていないから大丈夫そう? 髪の毛の色に関しては何も言われないし……)

師長「今日は、助手さんに付いて業務を見ていってね!」

こんな髪色なのに、嫌な顔もない。
私にはいろいろと問題点があるはずなのに、一人の人間として接してもらえることが不思議で、ありがたくて、嬉しかったです。

学生時代は看護学生に人権はないんじゃないかと思っていました。
実習では、看護師さんに挨拶しても無視されるのが当たり前。声をかけようとしても逃げ回られる。それが当たり前。そのなかでも頑張って付いていかないと置いていかれるのが当たり前。それに慣れてしまっていたので、対等に接してもらえることが衝撃的でした。

師長「助手のリーダーに付いていってね〜!リーダーの◯◯さんです!」

リーダー「よろしくね!」

私「まめこです。よろしくお願いします」

目を合わせて、挨拶してくれた助手のリーダーさん。
リーダーさんの笑顔を見たとき、歓迎してくれているのが伝わってきました。そしてその笑顔に、安心している自分がいました。なぜなら、看護師免許を持っているにもかかわらず、助手業務から始めることを不思議に思われるんじゃないかと、どこかで心配していたからです。

リーダー「この時間は、入浴の準備と入浴から出てきた患者さんの着替えをしているから、見に行こっか!」

廊下に並ぶ沢山のベッド。

入浴室から出てきたストレッチャーに寝ている患者さんをベッドに移しています。その後、ベッドごと部屋に移動して、着替えをしていました。

入浴室は、ストレッチャーに寝ている患者さん、そして助手さんと看護師さんが入ればいっぱいになるとてもコンパクトな場所で、その中で洗髪・洗体をしていました。

(私も入浴介助をするのかな。こんなにスピーディーにできるだろうか)

これから私が働くことになるのは療養病棟で、入院されている患者さんは、ほぼ寝たきりの方でした。

学生時代に実習していた急性期病棟では見たことのない光景です。急性期の患者さんはある程度自立していて、術後ベッド上安静が必要なときは清拭だったので、ストレッチャーで次々と患者さんをお風呂に入れる光景は初めてでした。

師長「まめこさん、働くイメージついたかな?」

私「少しイメージできました」

師長「よかった! 総務が書類の確認をしたいって言ってたから、これから行けるかな?」

私「行けます」

師長「それじゃ、来月からよろしくね! 気をつけて帰ってねー!」

その日接したみなさんの優しさが、想像していた以上でした。
病院で働けるんだろうかと不安はありましたが、ゴールデンウィーク明けが楽しみになっていました。

書類の確認と1050円

総務担当者「病棟どうだった〜?働くイメージできた?」

私「みなさん優しかったです! 働くのはやっぱり緊張しますけど、今日見学できたおかげで少しイメージできました!」

総務担当者「よかった! これから働くにあたっての書類を確認してもらいますね!」

契約の書類に目を通す。

総務担当者「まめこさんは看護師免許を持っているけど、最初は助手さんとしての仕事から始めてもらうので、時給は1050円からのスタートになります」

(なるほど。今の私の価値は1050円なんだな〜)

いきなり時給1400円を提示されても、それだけ価値のある仕事ができる自信はなかったため、1050円からスタートできるのは心の余裕につながりました。

普通だったら、「今までがんばって勉強して看護師免許を取ったのに時給が低過ぎ!」と思うのかなと考えたりもしましたが、私にとってはありがたい時給です。これでプレッシャーの1つがなくなりました。

総務担当者「働き始めの5月7日は、仕事を始める前に健康診断を受けてもらいたいので、朝ごはんは食べずで来てくださいね!」

私「わかりました! それでは、ゴールデンウィーク明けからよろしくお願いします」

ナース服のサイズ選びに来たつもりが、たくさんの人に会い、優しさを感じながら、私は病院を後にしました。

仕事を始めることに不安感はありましたが、人と話すこともできたし、これからできることが増えていく感覚をまた得られることに、うれしさを感じていました。

順調に、看護師になる道が見えてきました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響がなかったら、この病院にメールをしていなかったはずですし、そもそも看護師として働こうと思えてたいたかどうかわかりません。

不思議です。これは運命だったのでしょうか。

プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。


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