外国人患者さんには通じない医療用語|ムンテラ|#010|佐藤まりこ

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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。


本日のカタカナ英語:ムンテラ

「202号室の患者さん13時からムンテラあります」「家族にムンテラの時間連絡して」
看護師さんなら「ムンテラ=医師が患者さんや家族に病状や治療方針を説明すること」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「ムンテラ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ムンテラ」は、ドイツ語のMund(ムント:口)とTherapie(テラピー:治療)を合わせて作った和製ドイツ語です。
臨床では、「ムンテラ」を「MT」と略して使ったりします。

英語で「ムンテラ」に相当するのは、「Informed Consent」です。
最近では、「ムンテラ」よりも「インフォームド・コンセント」を使う病院が多くなり、患者さんの「知る権利」や「決定する権利」を保障しつつ、情報提供をして患者さんから同意を得る一連のプロセスを「インフォームド・コンセント」と呼んでいます。
医療現場では、「Informed Consent」の頭文字をとって「I.C(アイ・シー)」と呼びます。

発音は「インフォームド・コンセント(ɪˈnfɔrmd kənsént)」でも通じますが、「インフォームド」の「ド」を「ドゥ」にして聞こえるか聞こえないかくらいで発音すると英語らしさが出ます。
「コンセント」は「セ」にアクセントを置いて「コンセントゥ」が英語に近い発音です。
最後の「T」は破裂音です。果物の種を飛ばすように「ットゥ」と意識して発音するといいでしょう。

外科病棟ではよく看護師が「I.C」に同席しますよね。
同席した看護師は、患者さんから同意書にサインをもらって書類を処理し、「I.C」の内容を記録に残すといった仕事があります。
「I.C」が長引くとほかの仕事が押してソワソワしがちなのですが、ここはグッと我慢して患者さんのサポート役に徹しましょう。
もし外国人患者さんの「I.C」に立ち会ったら、こんな言葉をかけてみてはいかがでしょうか?

If there is anything that you do not understand, please feel free to ask.

(もしわからないことがあれば何でも聞いてください)


Do not hesitate to ask if you have any questions or concerns. 

(質問や心配なことがありましたら遠慮なく聞いてください)

「聞いたって英語で答えられないから無理!」と思うかもしれません。
でも、今は便利な翻訳タブレットなどがあり、患者さんはそうした最新テクノロジーを駆使して質問してくるので大丈夫です。
大切なことは、患者さんに心遣いや思いやりをみせることです。
失敗を恐れず、機会があったらぜひ声をかけてみてくださいね。
やっぱり難しいと感じる方は、紙に書いて気持ちを伝えるのもいいでしょう。




30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


自動車会社フォード・モーターの創設者ヘンリー・フォードの言葉です。
何をやってもうまくいかず、思うように進まないときってありますよね。
私がアメリカで看護師を目指した時期は、ちょうどリーマンショックの影響を受けてアメリカ国内の失業率が上昇したときでした。
それに伴い移民排除の政策が強化され、外国人は米国の看護師の試験NCLEXを一度しか受けられないことになりました。
以前は年4回もチャンスがあったのに、突然人生一度きりのチャンスになったのです。
アメリカの政策ですから、自分の努力ではどうにもなりません。
なぜこんな苦難の壁に直面しなければならないのか、と悩んでいたときに出会ったのが今日の言葉です。
アメリカの移民政策は私にとってまさに向かい風でしたが、だったら気合を入れて飛んでやる!と奮起し試験に挑む力になりました。
自分ではどうにもならない困難な状況に直面したら、ぜひ思い出してください。
鳥や飛行機が空高く飛べるのは、追い風のときではなく向かい風のときだということを。

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佐藤まりこ 

生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。