狭心症と心筋梗塞 その②~壊死してるか?! してないか?!~ |心臓のはなしをしましょうか|#008|野崎暢仁

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狭心症と心筋梗塞の違い

心臓病でよく耳にする病気は「狭心症」とか「心筋梗塞」です。
では、その二つは何が違うのでしょうか?

狭心症は、心臓の筋肉に血が足りていない状況で、それによって胸が痛いっていう症状が現れる病態のことをいいます。一方、心筋梗塞は、心臓の筋肉に血が足りていない状況と胸が痛くなる症状は同じですが、それによって心筋が壊死している病態のことをいいます。心臓の筋肉に血が足りていない=心筋虚血が起こっていると表現します。

心筋虚血によって症状が出るものを狭心症、心筋虚血が続くことによって心筋が壊死してしまったものを心筋梗塞っていうのですね。心筋が壊死してしまうとその部分の心筋の動きが悪くなって、心臓の仕事が果たせなくなってしまいます(図1)。

動脈硬化で起こる労作性狭心症

心筋梗塞については次回以降にお話しするとして、今回は狭心症について、もう少し掘り下げていきましょう。

前回(#007)は、冠動脈が痙攣することによって起こる冠攣縮性狭心症のお話をしました。今回は、狭心症のなかでも冠動脈が細くなる原因が動脈硬化のものをお話しします。

動脈硬化については前々回(#006)にお話ししましたが、その動脈硬化が原因で冠動脈が細くなり(狭窄)、心臓の筋肉への血液の供給が少なくなることがあります。徐々に細くなりだした冠動脈は、安静時にはなんとか心筋にそれなりの血液を送り出せていたのが、運動をしたりすると、同じ狭窄で同じ血液の量でも、心臓が活発に動くことによって心筋の血液(酸素)需要が多くなり、血液の量が足りなくなって起こる「労作性狭心症」というものがあります(図2)。



この場合は、胸部の痛み(胸痛:chest pain:チェストペイン)が起こったために、運動を止めて安静にすると胸痛は治ってきます。心筋の虚血も、安静時には血液の量は足りているため、心筋組織そのもののダメージを受けることなく壊死までには至りません。

症状の感じかたは人によって異なるようです。息切れや肩こりなどを訴える方もおられます。休めば症状は治るため、今日はちょっと調子が悪いのかな?! と放置してしまい、受診が遅れてしまうケースもあるようです。

そうしている間にも狭窄はどんどん進行していきます。初めは走るなどの運動ができていたものが、ちょっとした階段の昇り降りや多少の歩行でも症状が出てきてしまいます。ちなみに、糖尿病の患者さんは糖尿病性神経障害っていうもののせいで胸痛などの症状を感じないっていうこともあります。

症状は、受診しましょう! 治療しましょう! っていうサインなので、動脈硬化のリスクファクターでもある糖尿病の患者さんは、症状の出現の有無にかかわらず、血液データなどのさまざまなサインに目を光らす必要がありますね。

冠動脈が細くなっている不安定狭心症

運動時でなくとも症状が出てくるものを不安定狭心症(u-AP:unstable angina pectoris:unstable=不安定、angina pectoris=狭心症)といいます。胸痛の持続時間は数分のことが多く、長くても15〜20分であると言われています。30分以上続くものは次回にお話しする急性冠症候群を疑います。

不安定狭心症の場合、冠動脈は極めて細くなっていることが多いです。動脈硬化が血管の中で破裂していて、そこに血栓などが詰まっていることもあります。いわゆるプラーク破綻という状態で、プラークが破綻により血管内に流れ出てしまい、冠動脈造影で見るとプラークがあった元の場所はポッコリ凹んだ抜け殻状態に見えることがあります。これをアルサー(ulcer:潰瘍)と呼んでいます(図3)。そのアルサーの部分に血栓などができてしまい冠動脈が細くなっている、というケースが不安定狭心症には多いかと思います。。



不安定狭心症が疑われる場合は、準緊急でカテーテル検査・冠動脈造影を行います。緊急カテーテルについては次回の急性冠症候群のときにまとめてお話しします。

さて、今回は労作性狭心症・不安定狭心症のお話をしてきました。狭心症とは、胸痛などの症状が出るもので、心筋の動きそのものは安静時は保たれている状態なんですね。

次回は心筋梗塞についてお話を進めてまいります。 お付き合いのほど宜しくお願い致します。

では、また!

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。