アナタの知らない依存症治療の世界~依存症治療のハマったさんにきいてみた!|#004|依存症が見過ごされると……

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私は一般の精神科病院で働く作業療法士です。依存症の方々とのかかわりは、初めは入院の方向けのプログラムからでした。

「うつ」などの状態で入院してきた患者さんのなかには、つらいことをお酒でまぎらわし、酔いが冷めたときはさらにつらくなり、またお酒を飲んで……、という人がいることがあります。

そのようなお酒の問題が見過ごされてしまい、「うつ」の治療だけで退院すると、日常生活でストレスがたまるなどのつらい状況が起きたときには、「うつ」の再燃や、再びお酒に手を出すといったことが起きてしまいます。退院したと思ったら、またすぐ入院してくるのです。

1.入院のプログラムでのかかわり

そのような人は、精神疾患と依存症両方の治療が必要だということで、多職種が参加してプログラムを行っています。

プログラム開設当時は、医師、看護師、精神保健福祉士が中心となり、ほかに臨床心理士、薬剤師、そして作業療法士も入って運営していました。有志のメンバーからはじまりましたが、今では業務として、医師、看護師が当番制で司会や書記などを行っています。参加する患者さんも増えてきていることから、当番になることで、依存症についての関心が高まっていると感じています。

患者さんはグループでの参加が可能なくらい状態が落ち着いてきた人で、主治医の指示で参加します。精神疾患はうつ病、統合失調症や不安障害、発達障害などさまざまです。依存対象は、アルコール、薬物(覚せい剤などの禁止の薬物以外にも処方薬や市販薬などもあります)などの物質依存や、ギャンブルやゲーム、買い物などの物質以外のものもあり、いくつも依存対象がある人もいます。

プログラムでは、テキストで、精神疾患と依存症を併せ持つ人の治療についてや、どんなときに依存対象を使いたくなるか、そのときの感情、対処法などを学習していきます。ところどころにあるクエスチョンの欄に自分を振り返りながら書き込み、みなで発表していきます。もちろん話せる範囲でよいのですが、自分のことを話しながら自身を振り返り、ほかの人の話を聞いて、自分と同じことや、新たなことを見つけることにつながっていきます。

2.依存症を認めたくない人が正直になるとき

なかには「自分は依存症なんかじゃない」としぶしぶ参加する人や、逆に優等生のような発言をする人もいます。それも今のその人の考え方ととらえ、プログラムのなかではとくに指摘することはしません。

そのような人も、病棟内で看護師さんから「今日のプログラムはどうだった?」と聞かれたときには、「自分は依存症ではないけど、ほかの人の話は参考になるからまた行く」「もうきっぱりやめます、とは言ったけど、退院して人に誘われたら断る自信はないな」などと、本音を話したりします。

「否認はしても、少しは当てはまっているかも……」「やめたい、でも少しならいいかな……」など、患者さんの本心は揺れ動いています。「本音は話せない、非難されるから、退院が延びてしまうから」と思っている人も多いのです。実際、身近な人たちからは、「あれほどやめると言ったのに」など、つねに非難されてきたのでしょう。しかし本音を話し、自分に正直になることが自分の依存症と向き合うことにつながるのです。

病棟の看護師さんに本音を話せるのは、話しても非難されることなく聞いてもらえることがわかったからです。そうなるとプログラムに参加し続けているうちに、「ここでも話していいんだ」と思えるようになってくるものです。

3.外来のプログラムを通して学ぶこと

現在は退院してからも外来通院している依存症の方向けのプログラムを、医師、臨床心理士、精神保健福祉士と作業療法士の多職種で行っています。外来通院している人からは、日常生活を送りながら依存症とどう向き合っていくか、という点で本音が多く聞かれ、みなの話から教わることも多々あります。

やめ続けている人は、きっぱり何事もなかったようにやめられているのではなく、「やりたいなー」という気持ちが今もわいてくること。誰かに正直に話すことで少しおさまること。明日はわからないけど今日1日はやめておく、という気持ちで生きていくことなど、みなの体験から知ったことです。

もしやめられなかったとしても、「お酒を飲んでしまった」「実はこの前ギャンブルをやってしまいました」と正直に話せる場があることは大事です。そこからまた今日1日をはじめればいいのです。プログラムで話すだけでなく、地域では当事者の集まりである「自助グループ」でも体験を分かち合っています。

いろいろな場所に通いながら、気がついたら1か月、半年、1年とやめ続け、依存対象中心の生活のときにはできなかった仕事を見つけて就職したり、中断していた趣味を始めたり、という話を聞くと、うれしい気持ちになります。

プロフィール:藤澤尚子
昭和大学附属烏山病院リハビリテーション室 作業療法士。入院や外来のアディクションプログラムや統合失調症の心理教育プログラムをおもに担当し、多職種で運営している。

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