外国人患者さんには通じない医療用語|GF|#022|佐藤まりこ

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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。


本日のカタカナ英語:GF

「104号室の患者さん、10時からGF(or GIF)予定です」
看護師さんなら「GF/GIF=上部消化管内視鏡(胃カメラ)」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
医師もよく使いますし、施設によっては患者さんにお渡しする検査用紙などにも記載されています。
「GF/GIF」はアルファベットだし、英語由来でそのままでも通じるのではと、みなさんは思っていませんか?

「GF/GIF」は、「Gastrointestinal Fiberscope」の略語です。
「gastro-」は「胃」、「intestinal-」は「腸の」、「fiberscope」は「内視鏡」を意味します。
一見、なんら問題なく英語として通じそうですが、上部消化管内視鏡をこうした言い方で表現する国は日本だけです。

国際的に通用する上部消化管内視鏡の略語は、「EGD」です。
「EGD」は「Esophagogastroduodenoscopy」の略語で、読み方は「イージーディー」です。
「esophago-」は「食道」、「gastro-」は「胃」、「duodeno-」は「十二指腸」、「-scopy」は「鏡を使った検査」を意味します。

患者さんに上部消化管内視鏡について説明するときは、もうすこしわかりやすい表現で「Upper (GI) endoscopy」を使います。
「upper」は「上部」、「endoscopy」は「内視鏡」を意味します。
「ダァ」にアクセントを置いて「エンダァスコピィー(endɑ́ːskəpi)」が英語に近い発音です。
私自身も当たり前のように「胃カメラ」を「GIF」と言って使っていた1人です。
アメリカに渡り、上部消化管内視鏡の略語が「EGD」と知ったときは衝撃でした。
まさか「GIF」までが、日本でしか通じない和製英語だとは思いもしなかったからです。
最近は、多くの医療機関が世界に通用する略語を使用する傾向にあります。
日本の医療現場で使われている医療用語のガラパゴス化が、すこしずつとけていくことを期待したいです。

You are going to have upper GI endoscopy tomorrow at 10 A.M.

(明日10時に上部内視鏡検査があります)




30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


クラシック音楽史上最高の天才音楽家モーツァルトの言葉です。
神童と呼ばれたモーツァルトは、目隠しでピアノを奏でたり、頭のなかに思い描いた楽譜を完成した状態で譜面に起こすなど常人離れした才能が数多く語り継がれています。
しかし、けっして生まれ持った才能だけで数々の傑作を生み出したわけではなく、作曲家として膨大な時間と思考を注ぎ込み不断の努力が必要だった、と彼自身が語っています。
私がこの言葉に出会ったのは、アメリカで看護師の試験をめざし猛勉強していた11月ごろでした。
アメリカはホリデーシーズンに入り、街はイルミネーションやクリスマスツリーが飾られ賑わい始めていました。
周りからはイベントを楽しむ会話がちらほら聞こえるなか、まっすぐ家に帰る自分がとても不器用に感じ“私もアメリカにいるのだから観光と勉強を両立したい”“アメリカの文化を思いっきり楽しみたい”とジレンマを抱え、期間を設けた受験勉強に集中ができなくなっていました。
そんなときにモーツァルトでさえ「one thing at a time(一度に1つ)」だったことを知り、“あれもこれもやりたいと欲張りになってはいけない、今は勉強だけに集中”と初心に戻るきっかけになりました。
今でも「one thing at a time」は、仕事で焦っているときや欲を出し過ぎているかなと思ったときに、戒めの言葉として思い出しています。

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佐藤まりこ 

生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。