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久しぶり! ごめん、待った?
遅くなっちゃった。今からST変化について説明するねっ!

さて、前回の記事では私が発明したとんでもないサイコロを紹介しました。

目の前の患者さんが胸痛を訴えたとしたら、あなたは12誘導心電図をとらなければいけません。
12誘導心電図をとって急性心筋梗塞の所見であるST上昇が見つかったらこのサイコロと併せて、どこの血管が詰まっているのか考えましょう。

ST変化とは、四肢誘導では基線からSTが1mm以上、胸部誘導では2mm以上変化がある状態のこと



まず、ST変化から説明していきます。

STというのはQRS波の終わりとT波の始まりの間を指します(下図)。



そして、四肢誘導では基線からSTが1mm以上、胸部誘導では2mm以上変化があったらST変化があるとされています(下図)。



基線はP波の始まり(頂点ではなく)から次のP波の始まりを線で結んだ線です(下図)。

Image Center Sample


ST変化がみられたら、ACSサイコロを使ってどの血管が原因で起こっているかを確認する



では早速、実際に症例をみてみましょう。

症例

入院中の70歳、男性(既往歴とか現病歴とかはご想像にお任せいたします)
30分前から胸痛によるナースコールあり、あなたが出ました
男性は苦しそうに胸をおさえ、冷や汗をかいていました
あなたは急いでバイタルサイン、12誘導心電図をとったところ、以下ののような波形でした
急性心筋梗塞かもしれないと急いでリーダーに報告し、無事に処置を終えました
バイタルサインはKT:36.0度、P:90回/分、BP:90/60mmHg、SpO2:95%


はい、ではこの波形でSTが上昇しているところはどこでしょう。

V1からV4を見てください。QRSの直後からT波の前が上昇しているのがわかると思います(下図)。



これがST上昇です。

今回は心筋梗塞だったのでどこの血管か見ていきましょう。 STが上昇しているのはV1からV4でしたね。
ここでサイコロの出番です。

はいドン!!





サイコロの面をみてみましょう。V1からV4は、赤・黄色・緑・茶色でしたね(胸部誘導の位置と色の覚え方は前回の記事をみてくだちゃい)。

さて、この面はどこの血管でしたっけ? その面にある血管をたどっていきましょう。

RCAですか?LADですか?LCXでしょうか?そう、LADですね。

つまり、この患者さんはLADの急性心筋梗塞かもしれないということがわかっちゃうんです。
このサイコロの使い方わかりました?

SBARでリーダーに報告する



ではリーダー(または医師)にどう報告しますか?
最近流行しているSBARで報告してみましょう。Sから順番に報告していくんです。

「Situation(状況)」
「Background(背景)」
「Assessment(評価)」
「Recommendation(提案)」

S:胸痛でナースコールがありました
B:汗をかいて胸に手をあてていました、12誘導心電図ではV1からV4でSTが上昇しています。血圧が90/60mmHgと低いです
A:急性心筋梗塞かもしれません
R:すぐに診察お願いします(医師に報告するなら、診察に来るまでに何かしておくことがあるか聞きましょう)


てな感じで。

いかがでしょうか。
報告までが大事なアクションです。
次回も、急性心筋梗塞の症例を一緒に考えて、報告していきましょう。

とりあえず今日はここまで。

本日のまとめ

・ST変化とは四肢誘導では基線からSTが1mm以上、胸部誘導では2mm以上変化がある波形のことである

・ST変化がみられたらACSサイコロを使って、どの血管が原因で起こっているか考える

・「Situation(状況)」「Background(背景)」「Assessment(評価)」「Recommendation(提案)」を意識して報告する



著者紹介 白石拓人 しらいし・たくと
血圧を測りに行ったのに血圧計を忘れるとんこつ...いやポンコツナース。『わからないことを馬鹿にするのは間違ってる精神』で密かに若手ナースを応援している。
「僕なんかできない…」より「僕でもやってみよう…」と考えたい超マブなお年頃。心電図を通してあなたが自信が持てたり、何かに挑戦するスピリッツを持ってもらえるように頑張るんば←黙っ
この心電図の勉強も挑戦でしょう。とにかくなんでもいいから挑戦するあなたの背中押します。ドンっ!!!