みなさんこんにちは。

前回の#016「~ここをまずみる!要観察 POINT1to7~」、前々回の#015「~救急室で手をスリスリ。足をスリスリ。プロフェッショナルの仕事です~」は、ノリア・スティーブンソン分類(Nohria-Stevenson分類)についてお話ししてきました。

心臓は動いていますか? 血液の循環はスムーズですか? っていうのを、実臨床の場で、道具を使わず手と目、感覚でアセスメントしましょうということでしたね。

これは、血行動態を把握するために行っています。

では、今回はその血行動態についてお話ししていきたいと思います。

心臓の「仕事」ができる条件

今回は、とても、とても重要なお話です。

「救急」「急変」「緊急」
この3つのキーワードに携わる可能性のある方は必読です!

心臓は、血液を送り出し、全身に血液を届けることが仕事です。
そのために必要なもの、それは……筋力! だけではありません。

心臓は筋肉でできた臓器です。心筋っていうものですね。

この筋力を使って収縮拡張を繰り返して心臓から血液を拍出しているのですが、たとえその筋力が元気いっぱいMax !!でも、全身のすべての臓器へ十分に血液を届けることはできないのです。

単純に考えても、まず送り出すだけの血液の量が心臓に入っていないと十分な量を送り出すことはできません。また、心臓から拍出しようとしても、受け入れる側が受け入れを拒否し、抵抗すれば、心臓は十分に送り出すことはできません。

つまり、いくつかの条件が揃わなければ、血液は全身を巡ることができないのですね。

その条件というのが……

SV×HR=Co

の式に隠されているのです。

SV:一回拍出量(心臓が1回収縮するごとに送り出される血液の量)
=ストロークボリューム:stroke volume

HR:心拍数(1分間に心臓が収縮する回数)
=ハートレート:heart rate

Co:心拍出量(1分間に心臓から送り出される血液の量)
=カーディアックアウトプット:cardiac output

注目すべきところは「SV:一回拍出量」です。

心臓が1回収縮すると拍出される血液の量は、だいたい75mLといわれています。では、75mLの血液を拍出するためにはどのような条件が必要なのでしょうか?
それは次の3つです。

①75mL心臓に血液が返ってくること
②75mL押し出すだけのチカラが心臓にあること
③75mLの血液を全身が受け入れられること


では、順番に説明していきましょう。

①75mL心臓に血液が返ってくること

送り出す血液がなければ、心臓は十分に血液を送り出すことはできない、無い袖は振れないんですよね。

全身を巡った血液は心臓の右心房に返ってきます。もし、大量出血によって巡っている血液が少なくなっていれば、右心房に返ってくる血液の量は減ってしまいます。

そうなれば、75mLの血液を送り出すことはできないですよね。これを心臓の前の負荷「前負荷」って呼びます。

②75mL押し出すだけのチカラが心臓にあること

心臓は筋肉でできている(心筋)。心筋のチカラが弱々しくなっていれば75mLの血液を送り出すことはできなくなってしまうかもしれませんね。

これを「心収縮力」って呼びます。

③75mLの血液を全身が受け入れられること

全身の動脈血管は、手足頭の末端まで血液が届けられる管ですが、カラダの状態によって血管の締まりを変化させることができます。

例えば、末梢の血管がキュッと収縮してしまえば、心臓は血液を送り出すために相当なチカラが必要になってしまいます。いわゆるショック状態のときには末梢が締まってしまうということが起こります。

これを「後負荷」って呼びます。

75mLの血液を送り出すためのキーワード

まとめます。

1.前負荷
2.心収縮力
3.後負荷



この3つが、心臓が1回収縮することによって75mLの血液を送り出すためのキーワードになるのです()。



まだまだ詳しくお話を続けていきたいところですが、今回はここまでにしておきましょう。

最初にも言いましたが、この話は「救急」「急変」「緊急」の患者さんに対応するときに 、とても、とても大切になってきます。

次回以降、もっと具体的に私たちがどう行動するべきか? につなげていきたいと思いますのでお付き合いのほどお願いいたします。

ではまた!

プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。