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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:ガーゼ

「滅菌ガーゼとって」「ガーゼを交換しますね」
看護師さんなら「ガーゼ=荒い平織りにした医療用の布」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「ガーゼ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ガーゼ」はドイツ語の「gaze」が由来です。
「ガーゼ」は、英語で「gauze」です。
ドイツ語とスペルは似ていますが、発音が異なります。
英語の発音は、最初が「ガ」ではなく「ゴ」と発音して「ゴーズ(gˈɔːz)」が英語に近い発音です。
ちなみに、英語にも「gaze」という単語はありますが、「じっと見つめる」「凝視する」という意味で「ガーゼ」とはまったく関係がありません。
また、ガーゼを含む創傷被覆材は「dressing」と呼ばれています。日本の医療現場でも「ドレッシング材」はよく耳にしますよね。

みなさん、「ガーゼ」が英語ではないと知って軽いショックを受けていませんか?
じつは、私もアメリカで病院実習に参加して、はじめて「ガーゼ」が英語として通じないことを知りました。
アメリカの病院実習の様子も含めて、そのときのことをすこし紹介させてください。

私が参加した病院実習は、カリフォルニア州サンディエゴにあるER100床以上の大きな急性期病院でした。学生は2つのグループに分かれて日勤帯と夜勤帯どちらかの病院実習に約3カ月間参加します。ちなみに私は夜勤帯でした。日本には夜勤の病院実習はありませんから、夜からの実習がとても新鮮でした。
はじめはおもに病棟ナースのシャドウイングを行い、慣れてきたら実際に患者さんを数人受け持ち、記録まで行います。「シャドウイング」とは、ロールモデルの後ろを影のようについて同行する学習法です。
さて、シャドーイングでオペ後患者さんのガーゼ交換に同行したときのことです。病棟ナースから「pick a gauze pad for me」と言われたのですが、私は「えっ、ガーゼじゃなくてゴーズ……? ゴーズってなに?」とまわりをキョロキョロ。ふたたび病棟ナースから「Gauze!」とややイライラした様子で言われ、彼女の指さした先にガーゼがあり、はじめて「ガーゼ」は英語で「ゴーズ」なんだと知りました。

こんな調子で日本のカタカナ英語には病院実習中たいへん悩まされましたが、今こうしてみなさんに「伝わらないカタカナ英語」として紹介できることを思うと、苦労した甲斐があったなぁとしみじみ感じております。

• Please buy some gauze pads at any drugstore and change the dressing on the surgical site at least once a day.

(どこのドラッグストアでもいいのでガーゼを購入していただき、1日1回は創部のガーゼ交換をしてください)

※1枚ずつ包装されたガーゼを「gauze pad」といいます。





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


前回も紹介した「トム・ソーヤの冒険」などの著者で知られるアメリカの小説家マーク・トウェイン(Mark Twain)の言葉です。彼はベストセラー作家として成功しましたが、浪費で自己破産に陥りしばらく返済の日々を送ります。借金返済後はふたたび資産家となった彼の波乱万丈の人生を知ると、今日の言葉はより重みを感じます。
私が海外留学を経験してから10年が経とうとしています。いま振り返って思うことは、すこしの勇気と行動力さえあればなんだってできる!と信じて疑わなかった20~30代の時期に、世界中を飛び回って本当によかったということ。
10年前は、自分のことだけを考えて全力でやりたいことに集中できました。でも、今は違います。家族、とりわけ子どものことを思うと、時間もお金も体力も昔のようには使えません。自分の置かれた環境や役割が変化すると、自由は限りなく制約されます。
すこしの勇気と時間さえあれば何でもできる時期は、思っている以上にあっという間に過ぎていきます。だから、やりたいことがあるのなら、やってしまえばいいのです。
財布が空っぽになっても、お金なら後からどうにかなります。でも、時間は二度と取り戻せません。
今日の言葉には続きがあります。

あなたが何かに挑戦してみたいと悩んでいるのなら、20年後の自分の視点に立って考えてみませんか? 悔いのない自分の人生を歩むためにできることは、いま挑戦することかもしれませんよ。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。