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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:ルンバール

「ルンバールするから準備して」
看護師さんなら「ルンバール=腰椎穿刺」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
「腰椎穿刺」とは、腰椎に穿刺して髄液圧の測定や採取、薬剤の注入や麻酔などを目的として行う医療行為です。脳神経外科や救急外来などに行くと髄膜炎疑いの診断によく使われています。
「ルンバール」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ルンバール」は、ドイツ語の「腰椎」「腰の」を意味する「lumbal」が由来です。ドイツ語で「腰椎穿刺」は「Lumbalpunktion(ルンバールプンクツィオーン)」です。
前回紹介した「プンク」の由来である「punktion」が入っていますね。

「ルンバール」は、英語で「lumber puncture」です。「腰の」を意味する「lumbar」はドイツ語と似ていますが発音が異なります。
「lumbar」は、最初が「ル」ではなく「ラ」と発音して「ランバァー(lʌ́mbər)」が英語に近い発音です。
「puncture」は、最初の「パ」にアクセントを置いて「パンクチャァ(pʌ́ŋktʃər)」が英語に近い発音です。

英語圏の医療現場では、前回紹介した「tap」を使って「spinal tap」とも呼ばれています。
「spinal」は「脊髄の」という意味です。
「tap」は、「コツコツと音を出す」やタップダンスの「タップ」などに使われる単語なのですが、医療現場では「穿刺」という意味です。

日本の医療現場で「tap」が使われるのは、「タップテスト(tap test)」です。髄液を30mL程度抜いて水頭症などの症状が改善するかを観察する髄液排除試験を「タップテスト」と呼んでいます。
英語圏の医療現場では「髄液排除試験」を「CSF tap test」や「lumbar tap test」と呼んでいます。「CSF」は「cerebral spinal fluid(脳髄液)」の頭文字をとった略語です。

かなり昔になりますが、私が脳神経外科病棟に勤務していたころ、先生方は躊躇なくルンバール針に三活とシリンジをつけてグイグイと髄液を抜いていました。当たり前の光景だったので疑問すら持たなかったのですが、後から禁忌の行為であることを知り驚きました。髄液はポタポタと落ちてくるものを採取するのが正解です。

•You will need to lie flat on your back for 1 to 2 hours after lumbar puncture(spinal tap).
(腰椎穿刺の後は、1~2時間あおむけで横になっていてください)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


言わずと知れたマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)の言葉です。
この逆転の発想、目からうろこですよね。

まじめで勤勉・丁寧に仕事をこなす人は「仕事のできる人」、怠け者は「仕事のできない人」というレッテルを貼りがちではないでしょうか?
でもじつは、一刻も早く仕事を片付けてさっさと定時で上がることをモットーに仕事をする人ほど、無駄な作業や優先順位の低い仕事をどんどん省く術を持っており、効率の良い仕事の進め方を知っていると言います。
ただし、何をやらせても頑張れない怠け者はアウト。楽をするために頑張れる怠け者に限ります。

自分の経験を振り返ると、怠け癖のある子を効率アップにつながると評価して仕事を振り分けたことはなかったし、私自身もまじめに与えられた仕事をコツコツこなすことが正しいと思っていました。
でも、ビル・ゲイツの今日の言葉に触れて以降は、頑張れる怠け者の評価が180°変わりました。 
あえてみずから怠け者になろうとは思いませんが、いかに仕事を早く終わらせるか、いかに楽に仕事ができるか、つねにその方向にベクトルが向いている怠け者こそ、仕事の効率アップを図るうえで最強の人材というのは納得です。
ビル・ゲイツのお墨付きだと思って、職場にいる怠け者さんに手こずっている方がいましたら、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。