# 心カテ中、何に気をつければいいかわからない
# 心カテ前の患者さまを安心させたい
# 患者さまからの心カテについての質問に答えられない
# この患者さまはカテ室でどのようなことをされてきたのか?
# カテ終わり 術後合併症?!


今回からは心カテについてです。
心カテスタッフ、看護師・放射線技師・臨床工学技士・検査技師のみなさんはもちろんのこと、心カテ前後に患者さまに関わる病棟・集中治療室スタッフの方にお付き合いいただきたい内容をお話ししていこうと思います。

心カテ患者管理で気をつけたいのは、「これだけをみていればいい!」ということがないということです。心カテは患者さまにさまざまな侵襲を与える検査・治療です。検査・治療が進んでいくにつれて、私たちが気をつけないといけないポイントが変わっていきます。

今のシチュエーションで何に注目するべきか。心カテの流れに沿ってお話ししていきます。

穿刺部位の選択

心カテの穿刺部位(図1)は、橈骨動脈(radial artery:ラディアル アーテリー)【手首】、上腕動脈(brachial artery:ブラキアル アーテリー)【肘】、大腿動脈(femoral artery:フェモラル アーテリー)【鼠径】、そして遠位橈骨動脈(distal radial artery:ディスタル ラディアル アーテリー)【親指付け根】です。

橈骨動脈

最近では、ほとんどの症例で橈骨動脈から行われているようです(図2)。では、どのようにして穿刺部位が選択されるのでしょうか?



冠動脈造影のみの場合、ほとんどは橈骨動脈から問題なく行うことができます。橈骨動脈で行った場合、手首の圧迫のみで済むので、患者さまの術後の負担が少ないのが最大のメリットです。しかし、血管が細く、挿入できるシースの大きさが限られます(図3)。また、穿刺の刺激によって、スパスムという血管が痙攣してしまう現象(攣縮)が比較的多く起こります。スパスムが起これば、シースを挿入することができません。挿入できたとしても強い疼痛を感じます。



橈骨動脈は血管がもともと細いために、シースの挿入などによって血管に傷をつけ、術後の血管閉塞を来す可能性があります。もしも閉塞してしまったときのために、橈骨動脈からの穿刺の前に「アレンテスト」を行います(図4)。

アレンテストとは、
①手首の両側(橈骨動脈と尺骨動脈の上)を圧迫します。②患者さまにグーパーグーパーを10回繰り返してもらいます。次第に手のひらは白くなっていきます。③尺骨動脈側(小指側)の圧迫を離します。手のひらの赤みが10秒以内に戻ってきたら「アレンテスト陽性(OK)」になります。

これは、橈骨動脈と尺骨動脈が手のひらでループしているため、通常、手のひらは両方の動脈によって栄養されています。もし、術後に橈骨動脈が閉塞しても尺骨動脈によって栄養されることを確認するものです。アレンテスト陰性の場合は、何らかの原因によって尺骨動脈では手のひらを栄養することができないということになるので、橈骨動脈の穿刺は控えたほうがいいということになるのです。

上腕動脈

各施設の穿刺部位を見てみると、上腕動脈から穿刺しているところは少ないようです。これは、上腕動脈の近くには大きな神経が走っており、穿刺によって神経を傷つけたり、術後の圧迫によって神経にダメージを与えてしまうことが考えられ、穿刺部位としてあまり選択されないことが多いようです。

アレンテスト陰性や橈骨動脈のスパスム発生時、狭窄・閉塞しているときなどに上腕動脈が使われるケースが多い印象です。

大腿動脈

冠動脈造影(coronary angiography:CAG)のみや通常の経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)の場合は、大腿動脈から穿刺されることは少ないようですが、緊急カテーテルの場合は大腿動脈から行われることが少し増えるようです。

大腿動脈は太く、挿入できるシースなどに制限がないというのがメリットです。そのため経皮的心肺補助(percutaneous cardio pulmonary support:PCPS)や大動脈内バルーンパンピング(intra aortic balloon pumping:IABP)は、大腿動脈からの挿入が第一選択肢になります。

万が一、PCI中に何かあったとき、すぐにPCPSやIABPを挿入するため、大腿動脈からPCIが行われ、必要になればそのシースをPCPS/IABPの管に変更することができるため、大腿動脈から行われるようです。

ちなみに、施設によっては緊急カテーテルだからこそ橈骨動脈から行うという考えもあるようです。大腿動脈はPCPS/IABPのときのためにあけておくという考えから橈骨動脈からPCIされるのですね。そのときは、鼠蹊部の消毒もあらかじめ済ませておいて、すぐに穿刺できるように対策しておくといいですね。

遠位橈骨動脈

最近は、親指の付け根の遠位橈骨動脈(ディスタルラディアルアプローチ)でされている施設もあるようです。患者様さまにとっては術後の制限される動きが少なく、圧迫もしっかりとできるためメリットはあるようです。

看護のポイント!

# 橈骨動脈穿刺のときには、特に穿刺部痛の観察をしっかりと!
# 上腕動脈穿刺のときには、神経損傷に気をつけよう!

➡指先ビリっとしてませんか?
# 穿刺がなかなか入らないと血腫ができてしまったりします
➡特に穿刺部変更したとき、もともとの穿刺部の観察は忘れないように!
➡特に特に、ヘパリンが入った後は要注意です!
# シースを入れる前に血管にガイドワイヤーを入れます
➡ガイドワイヤによって血管を損傷する可能性があります
➡穿刺部だけでなく、その先の部分の観察や痛みがないかの確認も忘れずに



今回はここまで!
次回以降も心カテの流れに沿って、注意すべきポイントや小ネタを挟んでお話を進めていきたいと思います。

お付き合いよろしくお願いいたします。

ありがとうございました。
ではまた!

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。