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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:ドレーン/ドレナージ

「今から先生来てドレーン抜くって」「オペ後の患者さん胸腔ドレナージ中です」
看護師さんなら「ドレナージ=体内にたまった余分な水分や血液などを抜く処置」「ドレーン=ドレナージのための管」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
術後管理上、予防的に手術部位にドレーンを挿入することが多いので、外科病棟に勤務するとドレーンやドレナージの管理が多くなりますよね。
「ドレーン」「ドレナージ」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「ドレーン」は「排水管」や「流し出す」という意味の「drain」、「ドレナージ」は「排水」を意味する「drainage」が由来です。
英語由来なのですが、どちらもドイツ語読みなので通じません。

「drain」は、「レー」と伸ばさずに「ドゥレイン(dréin)」が英語に近い発音です。
「drainage」は、「ナー」と伸ばさず「ネ」に置き換えて「ドレィネジ(dréinidʒ)」が英語に近い発音です。

海外、とくにアメリカの入院期間は非常に短い、というのはみなさん聞いたことがあると思います。
乳がんの術後を例にとって比較してみましょう。

日本では術後、前胸部や腋窩部に1~2本のドレーンを挿入しドレナージ管理を行います。
排液量や性状をみながら術後5日目あたりに抜去して、退院するケースが多いのではないでしょうか。
アメリカの場合、乳がんの手術は術翌日に退院します。
「えっ?ドレーンどうするの?」と思われた方も多いのではないでしょうか?
患者さんは、ドレーンをつけたまま退院し、自宅で自己管理をしていただきます。
患者さんには決められた時間ごとに排液していただき、排液量や性状を記録していただきます。
手技は自己管理用のパンフレットやYouTubeの動画などでも確認することができます。
自己管理が難しい場合には、訪問看護などを利用します。
ほかの手術でも同様に、ドレーンのお持ち帰りは珍しいことではありません。
ドレーンを挿入したままシャワーに入ってもらい、本人が希望すれば仕事復帰も可能です。

日本の医療機関も入院期間の短縮に取り組んでいますが、海外の平均入院日数と比べると2~3倍長いという統計もあります。
短ければいいわけではありませんが、固定観念にとらわれる医療者や入院が短いことを“追い出される”ととられる患者さんの意識変革は、今後必要になってくるかもしれませんね。

• Your doctor is coming to remove your drains.
(先生がドレーン抜きにきます)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


前回に引き続き、エンターテイメントの巨匠、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)の言葉を紹介します。
「一匹のネズミ」とは、誰もが知るあの「ミッキーマウス」ですが、みなさんはミッキーマウスの誕生秘話をご存じでしょうか?
ミッキーマウスはもともと「オズワルド」というウサギを主役にしたアニメーションに、敵役として登場するねずみでした。
敵役が主役に抜擢された経緯は、まさにけっしてあきらめず逆境をチャンスに変えた彼の人生を物語っています。

「オズワルド」は大ヒットし彼の会社は急成長を遂げるのですが、その後トラブルに巻き込まれて社員は大量に引き抜かれ、ウザギのキャラクターの権利はほかの会社に奪われてしまいます。
意気消沈した彼は、再起をかけてたびたび敵役として登場させていたねずみのキャラクターを主役に起用し、「ミッキーマウス」が誕生したといわれています。
さらに、最初は「モーティマーマウス」 という名前を付ける予定でしたが、妻のリリアンから「ミッキーのほうが可愛い」と言われ変更しています。
愛妻家のウォルトらしいエピソードです。
今日の言葉は、ミッキーマウスの誕生秘話を知ると、ぐんと深みが増す言葉になります。
ミッキーマウスは、人生最大の逆境ともいえる状況下で、ウォルトが夢をあきらめずに挑戦し続けた賜物です。
「すべては○○○から始まった」というエピソードは、みなさんもお持ちなのではないでしょうか? 始まった状況が苦しいほど、のちの人生に影響を及ぼすことが少なくありません。
逆境に耐え苦しい思いをしている方がいらっしゃいましたら、ぜひこの言葉を思い出してください。
追い詰められた気持ちに夢をあきらめないミッキーが勇気の魔法をかけてくれるかもしれませんよ。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。