がんばらなくてもいいんだよ|いのちの現場で働くあなたへ 絵本からの40のメッセージ|気にかける|#002|岡山ミサ子

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存在を肯定する

絵本『ひとりぼっちのオルガン』
しおたになおや/文
イタクラヨウイチ/絵
渡部富栄/英訳
保育社 2015 年刊
定価 1,600 円+税

 主人公はある古びた教会のオルガンです。もう何年も音を出しておらず、なぜ自分がここにいるのかわからなくなっていました。ある男の子は、でたらめな音でめちゃくちゃにオルガンを弾くだけです。ある女の子は引き立て役にオルガンを使いました。口ひげを生やした男はまるで機械を扱うようにオルガンを弾きました。とうとうオルガンは自分自身を破壊しようと考えました。そのとき、年老いた旅人が現れ、オルガンを奏で始めると、美しい音色が村中に響きわたり、多くの人がオルガンのいる教会に集まり歌い始めました。

老人は遠い国の教会で活躍し、おおぜいの人々に生きる力を与えてきたオルガニストでした。オルガンは言いました。
「わたしなんて壊してしまおうと思っていたのに……」
老人はいつくしむように、オルガンをなでながら答えました。「いいかい。君はね、どこも悪くない。オルガンを壊しちゃいけない。まずはオルガニストを変えなさい」

 自分を全面的に肯定してくれるオルガニストに出会うことで、オルガンは自分の価値を再度見出すことができました。人間は一人では生きていけません。自分の存在を肯定してくれる他者の存在が必要なのです。

さりげなく“ 他者として” 存在する

 私が30 代の頃、気になる後輩看護師がいました。後輩は表情が暗く、ミスが続き、何度もため息をついていました。「眠れない」「疲れている」とつぶやいていると周りから聞いていたので、昼食の時間に食堂に誘い、横並びで座って声をかけました。「最近なんだか、ため息も多いから心配になってね」。後輩は「気づきました? 疲れていて眠れないんです」とポツリと言いました。「そっか、いつでも聞くから声かけて」と言って、その日はあまり深く聞きませんでした。翌日、後輩から声をかけてきてくれ、本音でいろいろな悩みを語ってくれました。
 自殺防止の電話相談では「気にかけてくれる人がいると思うと、生きていてもいいんだと、あったかい気持ちになる」という声を聞きます。さりげなく、その人の中に他者として存在する。そうすることで、相手はいつか思い出して相談しようと思えるのです。

考えてみましょう

【問1】あなたが気にかけて声をかけた人は誰ですか? またどのような関わりをしましたか?

【問2】あなたのことを気にかけたり、認めてくれる人は誰ですか? その人はどのように関わってくれましたか?

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岡山ミサ子
オフィスJOC(Japan Okan Consultant)代表
心といのちの専門家(オカン)

看護師40 年、看護部長を17 年務めた後、人材育成・相談業務を中心に活動。自殺防止の電話相談では10 年間で約1,800 人の悩みを聞いてきた。またワークショップデザイナーとして対話の場づくりを約3,000 人に実践。2019 年にはオフィスJOC を起業し、「ケアする人をケアする」「がんばリーダーを応援する」「対話の場をつくる」をコンセプトに、日本を元気にするための活動を行っている。現在は全国の医療・介護系の研修をオンラインとリアルの両方で開催。2020 年からはオカプロ(オカン力プロフェッショナル)養成塾のほか、塾生たちとの「オカン対話Café」「がんばリーダー育成講座」をスタート。主な著書に『リーダーのための育み合う人間力』(医学書院)、『ケアする人をケアする本 医療スタッフのための人間関係力』(gene)などがある。