100文字以内で作られた問題文を読めば、答えになっている医療用語がサクッと覚えられる、学べる「クイズ100文字」。今回の問題文は……
Quiz 032
ガイドワイヤーによる合併症の一つに冠動脈穿孔があります。ガイドワイヤーはとても細くわずか0.3mm程度です。しかしPCIでは抗凝固薬を使用しているため、放置しておくと穿孔したところから出血し続けることになり、心臓の周りに血液が溜まってしまいます。では、この血液によって心臓が拡張しづらくなっている状態のことを何というでしょうか?
Answer 032
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心タンポナーデ
PCIはガイドワイヤーを必ず使用しますが、このガイドワイヤーの挿入中または留置中に冠動脈を貫いてしまい、穴(穿孔)を空けてしまうことがあります。これだけではバイタルサインに大きく影響することはなく症状等も現れません。
このことが逆に、後々に重篤化を引き起こす要因なのかもしれません。ガイドワイヤーは0.014インチ(約0.3mm)と細く、出血したとしても微量です。それでも抗凝固薬が効いているカテ中は出血が止まりにくいため、出血し続け、心臓を覆う心嚢の中にその出血が溜まっていきます。その溜まった血液によって心臓が圧排されて拡張しにくくなってしまいますが、これが心タンポナーデという状況です。
タンポナーデ状態になると奇脈と呼ばれる現象を認めることが多いです。カテ中は観血血圧が表示されていることが多いので、奇脈に気づけることが多いのではないでしょうか。
奇脈とは、吸気時の最大血圧が10mmHg以上低下して、呼気時に血圧が戻ります。呼吸によって観血血圧が波打っていれば奇脈を疑い、タンポナーデになっていることを疑います。
図:『心カテのはなしをしましょうか』P96より
野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。