100文字以内で作られた問題文を読めば、答えになっている医療用語がサクッと覚えられる、学べる「クイズ100文字」。今回の問題文は……
Quiz 044
心カテでは鼠蹊部から穿刺する場合もありますが、鼠蹊部の大腿動脈は比較的血管径が太く、シースのみならずECMOなどのカニューレも挿入することができます。鼠蹊部穿刺のとき、もっとも気をつけねばならないことは後腹膜内出血ですが、では、後腹膜内出血を起こさないために何を目印にして穿刺するでしょうか?
Answer 044
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大腿骨頭・鼠蹊部靭帯
鼠蹊部にある大腿動脈は、下行大動脈から腹部(後腹膜内)で分岐した後、背中側から次第に腹側に向かって体表面に近づいて走行します。鼠蹊部靭帯までは後腹膜内であり、血管もその中にあります。鼠蹊部靭帯以降は後腹膜からは脱して、血管も鼠蹊部体表面側に出てきます。鼠蹊部靭帯はX線透視には映りませんが、鼠蹊部靭帯に重なる大腿骨頭はX線透視に映ります。
大腿骨頭よりも頭側は後腹膜内であるため、この部分を穿刺すると、シース抜去し止血したときに体表面から圧迫しても血管を圧迫することができず、かつ後腹膜内に血液が漏れ出るため、とめどなしに出血し、なおかつ体表面から出血していることも気づけず、失血の症状が出てから出血に気づくことになってしまいます。鼠蹊部靭帯(大腿骨頭)以降で穿刺し、もし出血したとしても、漏れ出た血液は体表面側に溜まるため、血腫を認めることになり、出血にすぐ気づくことができます。
もちろん、出血しないように止血することが大切ですが、出血してもすぐ気づけるように、穿刺は大腿骨頭を目印にそれ以降で穿刺することになります。
図:『心カテのはなしをしましょうか』P116より
野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。
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