この連載は、なかなか総合的に語られることが少ないIVR看護について、標準看護計画にあてはめてみることで、その価値と魅力を再考し、「やっぱりIVR看護って最高!」と読者といっしょにサイ発見するための試みです。




皆さん、こんにちは。

私はIVR看護(血管内治療看護、カテ看護などいろいろな呼ばれ方をしていますが、以下、IVR看護と統一します)が最高に好きで、IVRのフィールドでずっと看護をしてきました。どこが好きかというと、傷が数ミリという身体にとって低侵襲でありながら、患者さんにとって有益な治療ができるという特性もありますが、何と言っても、治療の場であることから不安を抱えている患者さんにアプローチすることで、安心して治療を受けてもらえることや、自分が異常を早期発見することで安全に治療を進めることができ、とてもやり甲斐を感じているからです。

ところが、IVR以外にいる看護師からは、IVR看護の役割などがわからないと言われることが多くあります。それは、IVR室という密室の中で行われていることや、IVRを看護学校で学ぶ機会が少なく、どのように進められているのかよくわからないこともありますが、IVRで働く看護師からの発信が少ないのも原因の一つではないかと考えます。

そこで、この場をお借りしてIVR看護が見える方法を再考し、発信し、皆に「IVR看護って最高!」って思ってもらえるようにしていきたいと考えています。

まずは、看護記録についてです。

IVRにおける看護記録は学会や研究会などで常にテーマとして挙がり、参加者の関心の的となっています。実際は、ほとんどの施設で経時記録が採用されていますが、一方で、私が運営に携わっているIVR看護研究会へ「IVRの場においても看護計画に基づいたケアの実施が必要なのでは?」「標準看護計画で記録を書きたいが、どうしたらいいか?」という質問が多く寄せられるようになりました。

そこで、独自のネットワークを活用し、全国のIVR看護師に「標準看護記録」について質問してみたところ、

☆診断カテ、予定入院で行うカテ、脳梗塞血栓回収術にはクリティカルパスを使用している
☆病棟で立案された看護問題に対し、該当するものがあれば記載している
☆クリティカルパスを使用しているが、皮膚の脆弱性や認知機能低下などの個別的な内容に関しては病棟で追加されている。それを使ってケアを行い記録すると連携につながる

といった回答が寄せられましたが、標準看護記録があると回答してくれた施設は残念ながらありませんでした。

回答を読ませていただき、クリティカルパスを運用している病院では、パスに沿って看護を展開していくことも一つの方法だし、病棟で立案された看護問題に対して該当するものがあれば、カテ室で記載していくのも継続看護の観点から重要であり、それぞれの施設で工夫して記録していることがわかりました。このように、何らかの形で看護問題を挙げ評価しているならばいいと思いますが、時間の経過とともに行ったことをただ記載していく看護記録を採用している施設は、もったいないと思います。なぜなら、IVR看護師は、治療中、絶え間なく患者さんを観察し、異常が起こっていないか評価し、また起こる可能性がある問題点をアセスメントし、行動していますが、残念なことにそれらは常に看護師の頭の中で行われており、その大変で、なおかつ患者さんを守るために大切な看護が、記録として残らないからです。記録に残らないことで、人目に触れることがなくなり、残念ながら、自分が行った観察やアセスメントは行っていなかったことと同じになります。

逆に考えると、IVR看護を提供するうえで自分の行った看護を記録として残すことは、IVR看護の可視化になるだけでなく、継続看護にも有効であると考えました。そこで、看護の可視化につながる記録の一つとして、IVR看護基準を考えていきたいと思います。




野口純子
厚生中央病院 INE .MBA.キャリアコンサルタント
「IVR看護研究会」をはじめとしたさまざまな学術集会、書籍などを通し、IVR看護の質の向上を目指しています。IVRを必要としている患者さんがどこの施設でも、どの看護師が担当しても安心して受けられるような世界になるのが私の夢です。

2024年7月25日(木)~27日(土)に札幌にて開催される「第32回日本心血管インターベンション治療学会学術集会;CVIT2024」にて、本連載を企画いただいた野口先生・村瀬先生のおふたりが座長・演者を務められる『メディカルスタッフ シンポジウム 12 シリーズ! 「カテ室の看護記録を再考する」』の講演がございます。奮ってご参加くださいませ!
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第24回IVR看護研究会
IVRナース 仕事の流儀
~目指せ!働きがい改革~

・日時:2025年3月1日(土)
・場所:東京虎ノ門グローバルスクエアコンファレンス
・IVR看護研究会HPはコチラから

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