この連載は、なかなか総合的に語られることが少ないIVR看護について、標準看護計画にあてはめてみることで、その価値と魅力を再考(・・)し、「やっぱりIVR看護って最高(・・)!」と読者といっしょにサイ発見するための試みです。




転倒転落には、「外因的要因」「内面的要因」があります。

1つ目、IVR室での「外因的要因」には、まず慣れない環境そのものが挙げられます。検査台は透視装置が近づけるよう幅が狭く、手すりや柵がありません。また、低位置でも高さがあり移乗に階段が必要です。階段昇降ができない場合はストレッチャーの使用が必要です。さらに、IVR検査や治療を受ける患者の多くが点滴や尿道カテーテルを留置していることなどが挙げられます。意識下での検査・治療のための安静や同一体位維持そのものも要因と考えられます。

2つ目の「内的要因」は、大まかに「加齢」「身体的疾患」「薬物」の3つが挙げられます。私たちは、IVRではじめて患者とお会いすることが多いため、患者さんの身体的疾患や薬剤についてはカルテからあらかじめ情報を得るとともに、入室確認時の意思疎通や反応、移動時の姿勢や速度など、行動を観察することが重要です。

例えば、患者が声を掛けると顔を傾ける場合には「聞き取りにくい側があるのかな?」と考えたり、ほぼ右手を使わない様子がみられるのであれば「軽度麻痺が出ているのか、力が入りにくいのか、末梢の痺れが強いのかな?」と考えてみたりします。また、歩いているときや階段で足を置く位置が端に寄っているのであれば「視野欠損があるのかな?」といったように患者の自然体の行動から、転倒転落の内因的要因を観察することができます。

さらに、IVRで使用頻度が多い鎮痛・鎮静薬には、せん妄を起こしやすい薬剤もあるため、そういった薬剤の使用を避けたり、鎮静・鎮痛薬は拮抗薬のある薬剤や、鎮静深度が調節しやすく覚醒の早い薬剤を検討したりして、内的要因を減らすことも可能です。

IVR室での入室後の移動場面では「こちらにどうぞ」だけではなく、「ここにまず手をついてください」「ここに1度座ってから横になってください」「点滴はこちらでみます」「検査台が狭いので急に動かないでください」と、特殊な環境での安全確保のために、指示的に患者を誘導することが多いように思います。

しかし、射塲らの研究では前述の要因以外に「入院患者の心理特徴に基づく転倒は6分類され、自分でできるという思い、遠慮、拒否、焦り、意欲の高さ、恥ずかしさの順で多かった」1)とあります。

このような患者の「自分でできるという思い」や「意欲の高さ」などの心理には「特別な検査台なので、移動するポイントや注意点をお伝えしますね」や「少しお手伝いしてもいいですか」などと、自尊心に配慮した声かけをしたり、「遠慮」「恥ずかしさ」の心理には「皆さんにお手伝いしていますので、よろしいですか」という言葉や小まめに声をかけたりして、患者が気持ちを言いやすい環境を準備しましょう。「拒否」や「焦り」の心理には、丁寧で落ち着いた雰囲気で説明しながら予想外の動きに備え傍に寄り添うなど、内外要因だけでなく、心理的特徴をアセスメントした対応をすることで、検査治療中の安全や安静維持につながると考えられます。

また、退室時は、患者の様子から得た内因要因や心理特徴を申し送ることで、継続した転倒転落防止へとつなげましょう。

リスク回避をするため看護問題を挙げ、看護計画立案をすることで誰でも同じように看護介入ができるようにしていきましょう。



次回は看護計画についてお送りします。

▶「#007|成人転倒転落リスク状態:前編」に続く

【参考文献】
1)射塲靖弘.急性期大学病院における入院患者の心理特徴に基づく転倒と関連因子について ~インシデントレポートに基づく横断研究~.日本転倒予防学会誌, 6(3),2020,25-33.




藤野絹代
聖マリアンナ医科大学病院
中央手術―IVRセンター

手術室と合併し26部屋を担う部署で勤務。多くの経験のできる組織へと成長したことで、忙しくとも考えることや感じること、やれることを増やし、今も成長し続けられる。看護を通し輝ける職場は最高の財産です。

2024年7月25日(木)~27日(土)に札幌にて開催される「第32回日本心血管インターベンション治療学会学術集会;CVIT2024」にて、本連載を企画いただいた野口先生・村瀬先生のおふたりが座長・演者を務められる『メディカルスタッフ シンポジウム 12 シリーズ! 「カテ室の看護記録を再考する」』の講演がございます。奮ってご参加くださいませ!
詳細はコチラから


第24回IVR看護研究会
IVRナース 仕事の流儀
~目指せ!働きがい改革~

・日時:2025年3月1日(土)
・場所:東京虎ノ門グローバルスクエアコンファレンス
・IVR看護研究会HPはコチラから

循環器ケアの専門誌

『ハートナーシング』
▶最新号の特集・目次はこちら
循環器ケアの必須テーマをどこよりもわかりやすく解説して大好評!『ハートナーシング』は4号よりリニューアル!さらにパワーアップして、新人指導から中堅学びなおし、最新知識へのアップデートまで幅広く役立つ情報をお届けします。
< 特集は、イラスト&コンパクトな解説で基本を理解し、リフレクションの場面などで後輩・新人指導にも活用できる「サッとわかる!」ページと、中堅ナースが知っておきたい専門知識をかみくだいて解説した「じっくり理解!」ページの2部構成です。最新・注目のトピックを解説するエクストラ特集も必見です。
新連載もスタート!専門性の高い内容や院内の研修・教育などにも役立つ内容で、より深い学びを求めるナースや、全体のレベルアップを考えたいご施設での購読もオススメです。