この連載は、なかなか総合的に語られることが少ないIVR看護について、標準看護計画にあてはめてみることで、その価値と魅力を再考(・・)し、「やっぱりIVR看護って最高(・・)!」と読者といっしょにサイ発見するための試みです。
造影剤を使用するにあたっての重要な有害反応として、造影剤腎症(contrast induced nephropathy : CIN)があります。これは代表的な薬剤性腎障害の1つです。「#ヨード造影剤有害反応リスク状態 後編」では、この造影剤腎症をメインに述べていきます。
さて、本題に入る前に、慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)についておさらいしましょう。造影剤腎症を含むCKDは、わが国の死因第8位となっており、加えてCKDによって心血管疾患の発症も起こるといわれています。CKDは自覚症状なく進行していくことからも、IVR治療においては「造影剤腎症を発症させないための事前確認」などが重要となってきます。
造影剤腎症の定義
「造影剤投与後72時間以内での血清クレアチニン値が、造影剤投与前に対し、25%以上の上昇もしくは0.5mg/dL以上の上昇するもの」とされます。
造影剤腎症の危険因子
●慢性腎臓病
●糖尿病
●脱水
●心不全
●腎不全
●高齢
●腎毒性物質(nonsteroidal anti-inflammatory drugs : NSIADs)の常用
●脂質代謝異常
●高血圧
●耐糖能異常
●肥満
●メタボリックシンドローム
●膠原病 など
造影剤腎症の診断は、血清クレアチニン値の変化で評価します。
造影前にできるだけ直近の血清クレアチニン値を用いて、腎機能はeGFRで評価します。直近とは、「急性疾患患者や入院患者、CINのハイリスク患者においては7日以内、それ以外の腎機能が安定している患者においては3カ月以内のeGFR値を基準」と定められています1)。
造影剤腎症の予防(輸液)
CINの発現を予防するためには、危険因子を評価し、総合的な生活習慣の改善を図ることが重要です。また、患者さんは自覚症状が乏しいことも推察されるため、血液検査データなどにより、患者指導が重要です。
CINリスクが高い患者の場合
また、CINのリスクが高いCKD患者さんでは、CIN予防のために「生理食塩水を造影検査の前後に静脈内投与すること」が推奨されています。これがCIN予防となる理由して、2つの機序を理解しましょう。1つ目の機序として、尿細管での造影剤濃度を低下させることにより直接の尿細管障害が抑制されます。2つ目の機序として、血管内血漿量が増加するためにレニン・アンジオテンシン系、バソプレシンなどが抑制され、血管拡張作用があるNOやプロスタグランジン産生が抑制されないため、造影剤によって起こる動脈収縮が抑制されます。以上の理由から、CKDハイリスク患者さんには、経口による水分摂取のみならず、造影前後に生理食塩水による静脈内投与が重要となります。
絶飲食中の患者の場合
前述した「危険因子」の項目中に、脱水とあります。絶飲食時間が長くなると悪心・嘔吐の副作用発現率が高くなり、即時型の副作用発現率が増加傾向を認めるという報告がされています。絶飲食中の患者さんの場合は、医師の指示によりますが、水分制限がない場合は、造影剤が注入される前に、水分摂取を促していきましょう。
【参考文献】
1)日本腎臓学会ほか.腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018.
https://cdn.jsn.or.jp/data/guideline-201911.pdf(2024/10/10)
青森県立中央病院 放射線部 INE(インターベンションエキスパートナース)
IVRに従事する以上、造影剤を使用するにあたり、腎機能障害に関する知識は、しっかりと学びを深めていきたいものです。一緒に安全なIVR看護に努めていきましょう!
第24回IVR看護研究会
IVRナース 仕事の流儀
~目指せ!働きがい改革~
・日時:2025年3月1日(土)
・場所:東京虎ノ門グローバルスクエアコンファレンス
・IVR看護研究会HPはコチラから
▶最新号の特集・目次はこちら
循環器ケアの必須テーマをどこよりもわかりやすく解説して大好評!『ハートナーシング』は4号よりリニューアル!さらにパワーアップして、新人指導から中堅学びなおし、最新知識へのアップデートまで幅広く役立つ情報をお届けします。
<
特集は、イラスト&コンパクトな解説で基本を理解し、リフレクションの場面などで後輩・新人指導にも活用できる「サッとわかる!」ページと、中堅ナースが知っておきたい専門知識をかみくだいて解説した「じっくり理解!」ページの2部構成です。最新・注目のトピックを解説するエクストラ特集も必見です。
新連載もスタート!専門性の高い内容や院内の研修・教育などにも役立つ内容で、より深い学びを求めるナースや、全体のレベルアップを考えたいご施設での購読もオススメです。