この連載は、なかなか総合的に語られることが少ないIVR看護について、標準看護計画にあてはめてみることで、その価値と魅力を再考(・・)し、「やっぱりIVR看護って最高(・・)!」と読者といっしょにサイ発見するための試みです。




さて、「安楽障害」をテーマにした本記事も後編に入りました。前編では「安楽障害がどういうものか」を学びました。「同じ姿勢・目が覚めている・痛み」という3つのキーワードが安楽障害には大まかに共通していました。
この後編では、前編で出てきた「IVRに関する安楽障害」の症例を紹介し、皆さんの参考となるキーワードを看護の視点から取り出していきます。

症例①

60歳、男性。胸痛を主訴に受診し、STEMIの診断にて緊急PCIをすることに。IVR歴は4回目だが、いつも緊張するとのこと。来院時も胸痛継続。救急より直接IVR室へ入室。橈骨穿刺にて7Frシース挿入。胸痛に対してはフェンタニル施行されている。造影後、#7の99%狭窄あり治療へ。治療中胃液様嘔吐あり。シバリングも出現。数分後ST著名な上昇とともに胸痛増強。直後循環動態不良にて急遽左大腿動脈よりIABP挿入。PCI中の再灌流障害に伴う合併症もあったが、何とか治療を終えた。治療時間は約3時間。治療後IABP挿入のままICUへ入室。

さぁ…… この症例を通してキーワードをピックアップし、予想される「安楽障害」を考えてみましょう。

【IVR中のイベントと起こりえる安楽障害】

1. 経験あるも緊張あり → カテ室のイメージ、痛かった経験 時間がかかった
2. 救急より直接入室 → 緊急にて覚悟する暇もなくあれよあれよと入室
3. 入室後も胸痛継続に加え、嘔吐・シバリングなどの合併症らしき症状も出現
   → 痛みだけではなく、それ以外の苦痛
4. 穿刺の追加(急遽IABPを挿入) → 不安が煽られた、デバイスが大きくて苦痛
5. 治療時間 → 3時間同一体位で苦痛

上記であげたワードは一部ですが、これだけでも「安楽障害」が見えてきましたね。
ここから、次のような看護が考えられます。

【安楽障害に対して必要な看護】

1. IVR前のオリエンテーションにてイメージ化をさせる
2. できる限り声をかけ続ける
3. 胸痛に対しては薬剤で対応している。嘔吐に対しても制吐剤を使用することが多々ある。シバリングの原因を探ることも大切だが、寒さに対してはウォーマーなどで対応
4. デバイス挿入時は恐らく一番苦痛。そのため、デバイス挿入直前に必ず「今から挿入します」と声かける。デバイスの大小があるので可能ならそこも追加でいうと尚よい
5. シース挿入部を気にしつつ除圧を行う。声かけにて終了時間の目安などを伝える

いかがでしょうか? 些細なことも多いと感じるかもしれませんが、このちょっとした何気ない「看護」がIVR室内の緊張した空気を救ってくれるはずです。なかでも大体の項目に出てきている「声かけ」は、患者さんが安楽障害を解消する、“看護師最大の武器”だと思います。少なからず、これらの看護を意識していくことがとても大切です。

今回は緊急IVRの症例をあげましたが、予定IVRの症例でも、みる視点・感じる視点・看護する視点は一緒です。これをもとにして、IVRを行う患者さんに関わっていくとより深く看護ができるかと思います。




仲尾次翔太
沖縄県立中部病院 手術室・放射線科所属
看護師歴20年目 IVR室歴12年目
2014年 INE(インターベンションエキスパートナース)取得
「カテ室にこそ深みのある看護が出来る」をモットーに日々活動しています
趣味は吹奏楽鑑賞・サッカー審判 さらにDMATとしても活動中

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