はじめに

本連載は、一般社団法人Nurse for Nurse(以下、NfN)の法人設立から現在の活動、社会課題解決への挑戦の第1歩として始めた事業の紹介を全3回でお伝えします。
今回は最終回、2023年3月まで実施している社会課題解決に向けた挑戦についてご紹介いたします。

医療的ケア児・重症心身障害児等のケアを担う看護職を増やす事業(赤い羽根共同募金事業)

このたび、赤い羽根共同募金「重症児等とその家族に対する支援活動応援助成」をNPO法人みかんぐみが採択されたのを受け、医療的ケア児・重症心身障害児等とその家族を支援するための看護職を増やす事業がNfNへ業務委託されました。

事業背景

近年、医療の高度化とともに日常生活や学校生活等で医療的ケア(以下、医ケア)を必要とする児童は全国で2万人にものぼると言われています。
しかし、これまでその児童や家族のための支援は十分とは言えず、2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行されました。
サービスの拡充に向けて教育や福祉などさまざまな分野で、ケアの担い手である看護職がますます必要とされています。

特にコロナ禍においては、訪問看護ステーションの数少ない看護スタッフが訪問できない状況になると、利用者はサービスを受けられない事態に陥ります。
共働きをする親が増え、子どもを長時間預かる場がさらに必要とされているなかで、看護師が確保できない状態は深刻です。
コロナによる失業や処遇減額の影響を受けているご家庭もあり、子どもに医ケアがあっても親が働ける仕組みを作ることは生活保障の面でも非常に重要です。
この現状を打開すべく、医ケア児・重症心身障害児等のケアを担う看護職を増やす事業を実施しています。

事業内容

本事業は、①ウェビナー「集まれ!看護職たち 医療的ケア児・重症心身障害児の暮らしを支える×看護職のキャリア」、②キャリア相談、③見学プログラムにて構成されています。

これらは医ケア児・重症心身障害児等のケアを担う看護について多くの人に知っていただき関心を高めること、関心を持った看護職が本領域での新たな挑戦を後押しする機会を提供することを目指しています。
以下ではウェビナーについて簡単にご紹介しますが、事業全体については事業ウェブサイトをご覧ください。

ウェビナー「集まれ!看護職たち~医療的ケア児・重症心身障害児の暮らしを支える×看護職のキャリア」

本ウェビナー(参加費無料、事前登録制)では、関心のある看護職が本領域でキャリアを歩む具体的なイメージがわくようになることを目的とします。

これまでのキャリア・経験にかかわらずすべての看護職および看護学生、一般の方も対象としています。

オープニングでは当事者団体のNPO法人みかんぐみより医療的ケア児・重症心身障害児の置かれている現状、当事者ご家族からは「看護職に対して感じていること、これから期待すること」と題してこれまでの看護職とのかかわり、看護職へ向けた生の声を聞かせていただきます。

その後に続くシンポジウムでは、保育所・学校・地域・在宅などで医ケア児・重症心身障害児等のケアを担ったり、その仕組みづくりに携わる看護職のこれまでの経験や想いをお話いただき、パネルディスカッション「医療的ケア児・重症心身障害児ケアにあたる看護職のキャリア」を行います。

このウェビナーを通して、1人でも多くの看護職がこの社会課題解決に立ち向かえるよう情報提供するとともに、看護職以外の方にも関心を持っていただき、現状への理解を深めていただければと思っています。

 ■お申込みはこちら

おわりに

看護職がそれぞれのキャリアのなかで経験することは唯一無二です。
そして、それは人々の生活に寄り添うだけでなく、時には生と死に直面しながら自分とも向き合う経験で大変尊いものであると思います。
看護職1人ひとりがすべて特別な経験を持ちながらキャリアを歩んでいます。
是非、皆様のご経験をNurse for Nurseでご共有ください。
全国・全世界のどこかで活躍しているほかの看護職の誰かに必ず役立つと思います。
私1人で解決できる社会課題は何もありません。
あらゆる課題解決のための答えを私自身が持っているわけでもなく、答えが1つでもなく、皆様と一緒に考え、学ばせていただき、挑戦していきたいと思っています。
看護職の活躍は社会を前進させると言われています。
看護職の皆様にはご自身のキャリア開発やほかの看護職を助けるだけでなく、社会課題解決につなげる、という想いも込めてNurse for Nurseへご参加いただけましたら幸いです。

プロフィール:門元記子
一般社団法人Nurse for Nurse代表理事
看護師・保健師、公衆衛生学修士。2005年3月、慶應義塾大学看護医療学部卒業。国家公務員共済組合連合会虎の門病院勤務を経て東京大学大学院公共健康医学専攻にて修士号取得。その後、国連人口基金(UNFPA)ジンバブエ事務所で勤務したのちに世界保健機関(WHO)ソロモン諸島事務所にて勤務。2021年にジョンズ・ホプキンス大学のコミュニケーション学修士号取得、一般社団法人Nurse for Nurseを設立。

---------------NfNからのお知らせ---------------

11月13日(日)15:00~17:00、「集まれ!看護職たち~医療的ケア児・重症心身障害児の暮らしを支える×看護職のキャリア」と題したウェビナーを開催いたします(ZOOMウェビナー配信)。
参加費:無料
お申込みはこちら(事前登録制)
(お申込み期限:2022年11月11日(金)正午)

近年、医療の高度化とともに日常生活や学校生活等で医療的ケアを必要とする児童は全国で2万人にものぼると言われています。しかし、これまでその児童や家族のための支援は十分とは言えず、2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行されました。サービスの拡充に向けて教育や福祉など様々な分野で、ケアの担い手である看護職が益々必要とされています。しかし、小児分野の経験を持つ看護職の不足等により、サービスが提供できないといった深刻な問題が生じています。また、地域間格差も大きな課題の1つとなっています。
本ウェビナーでは、当事者ご家族や保育所・学校・地域・在宅等で活躍する看護職の話を通して、関心のある看護職が本領域でキャリアを歩む具体的なイメージがわくようになることを目的とします。一人でも多くの方にこの社会課題についてご理解いただけるよう、これまでの経験にかかわらずすべての看護職・看護学生・一般の方もぜひご参加ください。

本事業全体の詳細についてはこちら→https://www.nursefornurse.org/akaihane