看護師免許取得後、大学病院で精神科、老年病科を経験、企業の健康管理室勤務等を経て 約400床の総合病院に入職。看護師長として透析センターの立ち上げ、腎内分泌内科病棟師長を経験し、同病院で副院長兼看護部長を務める。看護師の採用業務など院内の幅広い業務に従事。2019年より、当プロジェクトへアドバイザーとして参加し、現在はCNO (Chief Nursing officer)として活動中。
解決策が見つからないと動けない
病気、健康を問わず、日々、自分の考えを整理して、課題を抽出し、解決しながら生活している人はあまりいないかと思います。漠然とした思いを誰かに話したり、時には読書をしたり、映画を観たりしながら、自分の深いところにある思いに気がついたりして、私たちは日々を過ごしています。
課題が明確であれば、対応策も見えてきます。例えば、いつも健康な人が急にひどくお腹が痛くなったとき、原因がわかれば必要な薬を飲み、わからなければ病院に行くという行動をとるかもしれません。課題が明確であればあるほど行動しやすくなります。
それに対して、何となく気分が優れない、何となく食欲がない、ときどき眠れない、頭が痛い……など、明らかな不調ではないもののいつもの自分とは何かが違うとき、どうしますか?
「いやいや気のせいだ」と自分に言って聞かせ、様子を見たり、ネットで検索したり、頭痛薬を飲んでみたり……。なかなか『これだ』という解決策が見つからないときに、どうしたらいいかわからない状態が続いてしまう経験は誰にでもあるのではないでしょうか?
思いを打ち明けられないワケ
Tomopiiaは、多くのがん罹患者の方と話すなかで、このような経験をしている方が非常に多いということを知りました。
診断を受けたとき、病院で説明されているときは頭が真っ白になって気持ちがついていかず、何がわからないのかさえわからない。定期受診のとき、受診前はいろいろ不安なことを聴こうと思っていたのに、いざとなったら『変わりないです』と答えてしまった。
治療もすべて終えて、特に痛いところも困っていることもないのに、転移や再発のことを考えてしまうと不安でたまらない。でも、周りの人は治ってよかったと思っているので誰にも言えない。
このような思いを打ち明ける場の選択肢としてTomopiiaの対話看護師がいます。
Tomopiiaの対話は、何かを解決したり、判断したり、指示することが目的ではありません。前回お話ししたような、簡潔に患者さんの思いをくみ取り、必要なことを簡潔に伝えるという看護師のスキルも必要のない場です。そして、一番の特徴はコミュニケーションの手段がSNSであるということです。
次回はSNSでのコミュニケーションの特徴と意義についてお話しします。
▶#001を読む
セミナー(無料)開催のお知らせ
~文章による対話から、すべての看護師の「聴く」を考える~
【10:00~10:50】
講演1:患者さんの言葉の蛇口をひらこう
~SNS看護での患者さんとの対話を通じて見えたこと~
十枝内綾乃(株式会社Tomopiia 執行役員 看護師〔Chief Nursing officer〕)
・正しい看護師ほど患者さんの本当の悩みが見えなくなる
・文章コミュニケーションにおける言葉の役割
・SNS看護という新しい世界での「聴く」と支援
・場所・場面にこだわらない新しい看護(SNS看護の特徴、メリット、利用者様の声)
・SNS看護での気づきが日々の看護を変える
・SNS看護の未来
【10:50~11:50】
講演2:4000人のがん患者と対話した精神科医が教える死を意識した患者との向き合い方
清水 研(公益財団法人がん研究会 有明病院 腫瘍精神科部長 医学博士)
・がん患者さんの心理
・患者さんの話を「聴く」側の医療者の心理とケア:向き合う側の気持ち、医療者の心の葛藤
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患者さんが自分らしい暮らしを取り戻すために
「そばにいなくてもできる看護」からの学び