コロナ禍が看護師の仕事に与える影響を「社会的立場」「労働力」「デジタル化」「生き方・働き方」「キャリア」の5つの視点から全5回シリーズで考察します。

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リモートワークが看護界に与える影響

コロナ禍において、ビジネス界で一気に広まったのは「リモートワーク」です。通勤電車に乗ってオフィスに出社するだけでも感染のリスクは高まります。そこで自宅とオフィスをオンラインでつなぐことによって出社をしなくても仕事ができるようになってきました。当初は「それにも限界がある」と言われていましたが、コロナ禍が長期化するにつれ「リモートワークすることを前提としたビジネススタイル」が求められつつあります。

これを推進するのがAI化やRPA化(Robotic Process Automation:パソコン内の業務の自動化)です。これまで人間がやってきた作業で認知化、数値化されることはほぼAI、RPAに置き換えられていきます。近い将来的に事務、営業、製造でも多くの仕事がとって代わられると言われています。AIにできることはAIにやらせて、人間は「人間にしかできない仕事」をすることになるでしょう。

「看護の仕事にリモートワークはないでしょう」と思っておられる方はおられませんか? 介護ロボットがすでに登場しているように、医療・看護・介護の世界にも影響が出てきます。これまで「熟練の技」と言われて人間にしかできないと思われていたものも、「熟練とは何か」を数値化して、精巧な技術で安定的に実施できるようになります。技術の進化で、昔は開腹手術だったものが、今は内視鏡手術で可能になったような例を皆さんも目の前でご覧になっているでしょう。穿刺などトレーニングが必要だった手技もロボット化していくのではないでしょうか。健康診断などはすべてロボット化し無人化した健診センターが誕生するのも時間の問題と思われます。

看護師もデジタル化には備えることは必須

「デジタルって苦手。デジタルとかかわらないところで看護をしていきたい」と思う方もおられるかもしれせん。しかし、デジタル化と無縁で生きていくことは今後ほぼできません。この記事をご覧の方にはおられないはずですが、まずデジタル媒体を介さずにはますます情報が入って来なくなります。

スマホをお持ちでない看護師さんもまだおられますが、できるだけはやく入手されて使いこなせるようになることをお勧めします。情報伝達は「デジタル化ありき」で進められます。実際、今回のコロナ禍で院内の各種会議や院内研修、地域連携などはテレビ会議(ZOOMなどのWEB会議)に置き換わったケースも多かったことと思います。連絡や資料のやり取りもデジタル媒体を使うようになったかもしれません。手書きだった資料もデジタル化されて、院内のイントラネットでの管理が徹底されるのは当たり前になります。

また、デジタルに慣れていないと情報共有に支障をきたす可能性があります。個人のPCやスマホもスペックが低いものをそのまま使い続けているとWEB会議に参加できなかったり、データのやり取りができなかったり、ということが起きます。これまでは補完的に使われていたデジタルツールが、コロナ禍をきっかけに一気に主流になる可能性が高いです。この変化は一過性のものではありません。将来につながりますので、今は石にかじりついてでもデジタル化の流れについていく必要があります。

もっとも、この流れはコロナ禍の前から医療界にはありました。たとえば2018年度まで診療報酬の「情報通信機器を用いたカンファレンス等にかかる要件」は「やむを得ない場合には」との条件付きでしたが、2020年度の改定では「日常的に活用しやすいものになるように」とICT活用を推進するものに変わっています。

最近よく耳にするオンライン診療も今回のコロナ禍をきっかけに推進されるでしょう。そこでは電子問診票によるやり取りがされ、画像データがやり取りされることになります。今はまだ直接触る機会がなくても「こういうふうにデジタル化されているのだな」と把握できるだけも流れについていけます。ぜひ関心と興味をもってくらいついていってください。(参考文献:「コロナ禍の今こそWEBミーティング導入を」ナーシングビジネス2020年9月号特集、永井則子)。

アフターコロナ、ここから始めてみよう ③

▶デジタルツールを使ったこれまでやったことのないコミュニケーションに挑戦してみましょう。
ヒント:Zoom飲み会をやってみる、オンライン会議の主催者をやってみる、SNS(Facebook、Twitter、YouTubeなど)で定期的に情報発信をしてみる、など。

第4回は2020年9月24日(木)に配信します。

プロフィール:松井貴彦
株式会社メディカ出版 販売企画部門責任者。キャリアコンサルタント(国家資格)。編集者として「透析ケア」「眼科ケア」、「ナースビーンズ(Smart Nurse)」の創刊を担当。編集部門、管理部門の責任者を経て、系列会社保育社の代表取締役、介護運動支援ゲーム「起立くん」、自動おしぼり供給機「おしぼりふく蔵」、施設向け学習eラーニング「CandY Link」、オンライン学習システム「FitNs.」「BeNs.」の販売責任者、看護の見える化支援セミナー「陣田塾」の企画運営、全国約5000病院の看護管理職に向けて「メディカファン Eyes of the Mind」を執筆。
コロナ禍の状況のなか「わくわくする働き方・生き方、個人を大切にする職場づくりの支援に役立てば」と、この春からYouTubeチャンネル『松井貴彦 まっチャンネル』を開始。