看護師「はなちゃん」と「きぶな」の素朴なケアの疑問に、上田先生がエビデンスをもって回答します。日頃の看護ケアにも、研究論文があり、根拠があります。
今回は「がん検診は受けるべきか」について調べてみます。
2024年6月に東京と大阪で上田先生を講師に迎え、会場セミナーが開催されます(詳しいプログラムはこちら)。ぜひご参加ください!
対策型がん検診(住民検診型)は死亡率の減少が見込めるため公的資金を投入しているものです。つまり対象となる胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌についてはがん検診を受けることをお勧めします。
肺癌の検診(胸部単純写真±喀痰細胞診)は例外的に死亡率低下を示せていませんが、肺結核のスクリーニングも兼ねているという側面があり許容されています。本当に死亡率を下げるには低線量CTが勧められますが、コストや被曝、偽陽性※1の問題があり国内のガイドラインではまだ採用されていません。
※1 偽陽性:本当は問題ないのに、検査で問題があると間違って示されること。
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Humphrey LL, et al. Preventive Services Task Force. Lung cancer screening with sputum cytologic examination, chest radiography, and computed tomography: an update for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2004 May 4;140(9):740-53. PMID: 15126259
Watanabe Y, et al. Descriptive study of chest x-ray examination in mandatory annual health examinations at the workplace in Japan. PLoS One. 2022 Jan 12;17(1):e0262404. PMID: 35020766
前立腺癌や甲状腺癌は早期に見つけても悪性度が低いため、予後に大きな影響を与えない可能性があります。例えば前立腺癌に対するPSA検診は死亡率を下げないと報告されています。
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Ilic D, et al. Prostate cancer screening with prostate-specific antigen (PSA) test: a systematic review and meta-analysis. BMJ. 2018 Sep 5;362:k3519. PMID: 30185521
「人に強く勧めてよいのは対策型がん検診の内容だけ」と考えても大きな間違いではありません。腫瘍マーカー、遺伝子検査、アミノ酸検査、PET/CT検査などをがん検診に用いることについては、エビデンスが確立していないため、偽陽性による不要な検査が必要となる可能性を十分に理解したうえで、検査を受けるべきです。
※本記事内容は上田先生が文献から考察しまとめたものです。適宜、関連するガイドラインなどもご確認ください。
※本記事の内容によって不測の事故等が生じた場合、著者および当社はその責を負いかねますのでご了承ください。
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 部長
メディカ出版のセミナー『バイタルサインのみかたとフィジカルアセスメント』『「悪化させない」「突然死を防ぐ」高齢者の急変予防』の講演をはじめ、『Dr.上田の もうダマされない身体診察』など執筆も多数。年間約3,000本の論文をチェックする。エビデンスと病歴と身体診察を大切にして救急・総合診療医として活躍している。
●急変する「前」の兆候を見抜く! どこを・なにを・いつ診るかが、わかる!
●もう迷うことはありません。適切な「ドクターコールのタイミング」も、わかる!
●上田先生自作のアプリを使って三択問題を解きながらのクイズ形式を導入!
▼プログラム
1.症例から学ぶ バイタルサイン の重要性
・血圧が下がる前にショックに気づくには
・ショック患者でバイタルサインより大事な身体所見とは?
・患者に触れずに肺炎を見抜くには?
・呼吸数が重要なのは、なぜ?
・夜中でもドクターコールすべき発熱とは?
2.肺 の診察
・上気道閉塞を見抜け!
・呼吸音の低下があれば…
・crackles はタイミングで分けよう
・どこで・どんな音がするのか。聴診・打診でこんなにわかる!
昼食(各自でご用意ください)
3.心臓 の診察
・エキスパート・ナースなら聞き分けたい3つの心雑音のちがい
・慣れればカンタン! 頚静脈圧を見られるようになろう
・頚静脈怒張! どんな疾患を考える?
4.お腹 の診察
・怖い病気は車に乗ればわかる?!
・波のない痛みで、冷や汗は緊急疾患
・肝硬変を一目で見抜くワザ
・聴性打診で導尿すべきかわかる
5.その他 の診察
・転倒患者でみるべきポイント
・“単なるせん妄”と“ヤバいせん妄”
・誰でもできる麻痺の簡単なみかた
6.質疑応答
・講義中の質問・日ごろの疑問、解決しましょう。
講師の著書のご紹介
Dr.上田の もうダマされない身体診察
AR動画で所見がわかる!
「これはおかしい!」を身体所見から見抜く
「明日から患者さんを看る目が変わるはず!」「基本的なバイタルサインで予測できることがこんなにたくさんあるんだ!」 受講者絶賛のメディカ出版人気セミナーが書籍に。何をなぜ、どのようにみて、どう解釈するのか、具体的な身体診察法が話し言葉ですっと理解できる。
発行:2019年10月
サイズ:A5判 240頁
価格:3,080円(税込)
ISBN:978-4-8404-6927-2