看護師「はなちゃん」と「きぶな」の素朴なケアの疑問に、上田先生がエビデンスをもって回答します。日頃の看護ケアにも、研究論文があり、根拠があります。
今回は「暖かい湿布と冷たい湿布」について調べてみます。

2024年6月に東京と大阪で上田先生を講師に迎え、会場セミナーが開催されます(詳しいプログラムはこちら)。ぜひご参加ください!












根拠①

NSAIDsを含有しているのは同じですが、冷湿布ではメントール、温湿布ではトウガラシエキス(カプサイシン)が入っています。メントールは26℃以下で反応するTRPM8という受容体を刺激するために冷たいと感じさせます。一方、カプサイシンは43℃超で反応するTRPV1という受容体を刺激し温かいと感じさせます。


Pergolizzi JV Jr, et al. The role and mechanism of action of menthol in topical analgesic products. J Clin Pharm Ther. 2018 Jun;43(3):313-319. PMID: 29524352

Frias B, et al. Capsaicin, Nociception and Pain. Molecules. 2016 Jun 18;21(6):797. PMID: 27322240

根拠②

純粋なNSAIDsの効果だけであれば、冷湿布のほうがNSAIDs含有量は多く、より高い効果が期待されます。慢性期には温湿布の血流増加作用が期待されますが、カプサイシンの疼痛軽減効果は微々たるものです。ただし、神経性疼痛においてはカプサイシンの効果が期待されます。


Persson MSM, et al. The relative efficacy of topical non-steroidal anti-inflammatory drugs and capsaicin in osteoarthritis: a network meta-analysis of randomised controlled trials. Osteoarthritis Cartilage. 2018 Dec;26(12):1575-1582. PMID: 30172837

Yong YL, et al. The Effectiveness and Safety of Topical Capsaicin in Postherpetic Neuralgia: A Systematic Review and Meta-analysis. Front Pharmacol. 2017 Jan 10;7:538. PMID: 28119613








一般的には冷湿布の方が効果は高く、帯状疱疹後疼痛のように神経性疼痛を疑う場合に温湿布を試すのがよいかと思われますが、両者を比較した質の高い研究はないため、患者さんの要望に従って処方するのも現実的な対応です。


最終回メッセージ

皆さん、こんにちは! これまで12回にわたり「ケアの根拠」にまつわるミニレクチャーをお届けしてきました。今日で最終回ですが、一緒に歩んできてくださった皆さんに心からの感謝を伝えたいと思います。

看護師として日々直面する疑問や挑戦を乗り越え、スキルアップしていくこと。それがどれだけ患者さんへの質の高いケアに繋がるか、私たちはよく知っています。そのため、私の勤める洛和会丸太町病院では、皆さんの成長を応援するためのセミナーを毎年開催しています。そして、同じ内容のセミナーをメディカ出版でも行っていましたが、コロナの影響でしばらくの間、お休みしていました。ですが、皆さんの熱い要望に応えて、今年からは再びそのセミナーを開催することになりました!

このセミナーを通して、もっと多くのことを学び、成長し、一人ひとりの患者さんに寄り添う看護を実践できるようになれば、私たちも大変嬉しく思います。最後に、皆さんの看護師としての人生が、これからもますます充実していくことを願っています。


※本記事内容は上田先生が文献から考察しまとめたものです。適宜、関連するガイドラインなどもご確認ください。
※本記事の内容によって不測の事故等が生じた場合、著者および当社はその責を負いかねますのでご了承ください。




上田剛士
洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 部長
メディカ出版のセミナー『バイタルサインのみかたとフィジカルアセスメント』『「悪化させない」「突然死を防ぐ」高齢者の急変予防』の講演をはじめ、『Dr.上田の もうダマされない身体診察』など執筆も多数。年間約3,000本の論文をチェックする。エビデンスと病歴と身体診察を大切にして救急・総合診療医として活躍している。







明日の看護が変わる
バイタルサインのみかたとフィジカルアセスメント
~ Dr.上田が教える身体診察塾 ~


●急変する「前」の兆候を見抜く! どこを・なにを・いつ診るかが、わかる!
●もう迷うことはありません。適切な「ドクターコールのタイミング」も、わかる!
●上田先生自作のアプリを使って三択問題を解きながらのクイズ形式を導入!


▼プログラム
1.症例から学ぶ バイタルサイン の重要性
・血圧が下がる前にショックに気づくには
・ショック患者でバイタルサインより大事な身体所見とは?
・患者に触れずに肺炎を見抜くには?
・呼吸数が重要なのは、なぜ?
・夜中でもドクターコールすべき発熱とは?

2.肺 の診察
・上気道閉塞を見抜け!
・呼吸音の低下があれば…
・crackles はタイミングで分けよう
・どこで・どんな音がするのか。聴診・打診でこんなにわかる!

昼食(各自でご用意ください)

3.心臓 の診察
・エキスパート・ナースなら聞き分けたい3つの心雑音のちがい
・慣れればカンタン! 頚静脈圧を見られるようになろう
・頚静脈怒張! どんな疾患を考える?

4.お腹 の診察
・怖い病気は車に乗ればわかる?!
・波のない痛みで、冷や汗は緊急疾患
・肝硬変を一目で見抜くワザ
・聴性打診で導尿すべきかわかる

5.その他 の診察
・転倒患者でみるべきポイント
・“単なるせん妄”と“ヤバいせん妄”
・誰でもできる麻痺の簡単なみかた

6.質疑応答
・講義中の質問・日ごろの疑問、解決しましょう。





講師の著書のご紹介



バイタルサインのみかたとフィジカルアセスメント

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発行:2019年10月
サイズ:A5判 240頁
価格:3,080円(税込)
ISBN:978-4-8404-6927-2