▼バックナンバーを読む

看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「リアリティショック」です。

---------------------

今回は「リアリティショック」のお話です。
そもそもリアリティショックってなにかなと調べたら「新しい職場における理想と現実との間に生まれるギャップにより、衝撃を受けること」とあります。
まあ、職場は環境と言い換えてもいいかもしれません。

このテーマで真っ先に思い浮かんだのが、看護学校時代の病院実習。
そこで朝の申し送りのあとにモーニングケアと言って、患者さんの身体を拭いたりおむつ交換をするのですが、それを看護師が行うことにすごい衝撃を受けました。
さらには大人が紙おむつをしていることにも衝撃を受けました。
祖父、祖母はまだ健在でしたし、病院に行くことはよくありましたが、両親の入院ぐらい。
さらにはそこまで重い病で入院していなかったので、まったく動けない状態の患者さんを看護師が身体を拭いている光景は本当に驚きました。
看護師ってバイタル測定をして、カルテに記入するぐらいだと思ってたんです。
「え? なんで紙オムツの交換を看護師がやるの」って本当に思いました。
それまでも学内実習とか教科書では学んでいましたが、これがまた実際の現場で見ると衝撃的だったんです。

同時にまったく動かない患者さんを見たのも衝撃的でした。
学内実習では学生相手なので多少動きます(笑)。
でも患者さんはまったく動かない。
だから複数の看護師が1人の患者さんの清拭を行っていました。
実習中に僕も入らせてもらいましたが、まったく動かない人間の身体ってとても重い。
「え? これを仕事にするのか」って結構悩みました。
しかも病室って狭いですから、私みたいな身体の大きい、背も高い人間にとってはかなり苦労します。
「ボディメカニクスを~」なんて言いますが、悪いけど、そんないうほど簡単ではない(笑)。
このときばかりは小柄な人になりたいと思いましたね。

幸いにも自分の身内で介護が必要になった人がいなかったので、自分の考えていた看護師の仕事と実際の看護師の仕事のギャップがすごかったです。
「身体を拭く」という身内で介護しているなら誰でも行う行為から、採血、注射や病気、薬のことまで。
「こんなにも幅広いのか、看護の仕事は」と学生のときはすごく驚いていました。

実際に看護師になってからも、同じ病院でも部署が違うとまったくやり方が違うし、戸惑いますよね。
私は看護師になる前は事務系の仕事をしていましたが、事務だと部署の垣根を超えても少しばかりはお手伝いができるわけですが、看護の世界はまったく違う。
もうなんの手伝いもできずにただ立っているだけになってしまいます。
このあたりも、看護の特殊性かなと思っています。


リアリティショックが大きくて、私は何度となく看護師を辞めたいとも思いましたし、看護学校時代からそのショックの大きさもあり実習では点数も悪く、現場の看護師からもすぐに目をつけられる存在でした。
でもそんな私がリアリティショックをテーマに文章が書けるぐらい振り返りができているのは、たくさんのリアリティショックを乗り越えたからかなと、この文章を書きながら思いました。

編集部からのお知らせ

フラクタルのお二人に書いてもらいたいテーマを募集しています。
ご希望のテーマをこちら宛にメールをいただくか
#フラクタルのテーマ とハッシュタグをつけてTwitterでご投稿ください。

▼バックナンバーを読む

-----------------------------
fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ10年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

about fractale
https://fractale3.com/mizuki/